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令和5年のフットボール

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#鶴見俊輔

ジェイムズとプラグマティズム

ジェイムズのプラグマティズムは、リアリティをその起源に探るよりもそれを当てにして行動するポイントのようなものとして捉えているという理解は、鶴見俊輔の折衷主義としてのプラグマティズムへと流れるものであるだろう。

鶴見のハーバードの卒論がジェイムズだから当然と言えばそうで、それは日常的な実践としてのひとびとの行為にもつながるものだ。ひとびとの日常的知識。何とかやっていくという思想はずっと考えているこ

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鶴見俊輔についてのメモ

鶴見俊輔についてのメモ

鶴見俊輔というと、大衆を持ち上げて大衆の行いは全て良いというような評価があるようにも思われるが(早くは粕谷一希なんかもよく似た議論を行なっている)、しかし、鶴見の著作を少し注意深く読んでいけばそうではないことは明らかだ。

60年代の吉本隆明の大衆をめぐる論争を取り上げてみると、吉本は大衆の原像と言いながら実感として大衆を捉えている。鶴見はむしろそれをカテゴリーとして考えているところがある。穿った

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メモ:唐木順三「ドストエフスキーの生涯とその思想」

「今までのロシアに對する普通の見方は、ロシアにはルネサンスもなく、また宗教的改革もなかつた、自我の愛といふものがなく、従つてまた合理的な精神といふものをもたなかつた、西歐から見ればいはば後進國である、といふやうな類のものだつたと思ふのです。」『唐木順三全集』第8巻

日本ももちろん西欧とは異なる経験を経ている訳だけど、地政学的には日本の近代化は避けられなかったとは思いますが(丸山眞男「開国」も読ん

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『限界芸術論と現代文化研究』 草稿

『限界芸術論と現代文化研究』 草稿

メモ
『限界芸術論と現代文化研究』(ハーベスト社)第2章 大衆文化論と文化研究の問題圏 の草稿

 まず言及するのが、鶴見俊輔もインタビューで語り、60年代に編さんした『大衆の時代』にも論考が収録されているアドルノと現代の文化研究の問題圏についてである。
 鶴見は2009年に行われたインタビューにおいて、「思想の科学」の活動がフランクフルト学派と相同性があると述べているが、それでは大衆文化の考え方

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限界芸術論と鶴見俊輔

...鶴見の議論において「民衆」や「大衆」は、初期の研究における「ひとびと」という概念から連続している。「ひとびとの哲学叢書」と銘打っている『夢とおもかげ』は「思想の科学研究会」における大衆文化研究の最初の成果であると考えられるが、この「ひとびとの哲学」とは、鶴見和子によれば「思想の科学」に「はじめて雑誌にあらわれるのが、1946年12月号」であり、それは「日本の民衆思想にどうやって近付くか」とい

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