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ベンゾジアゼピン減断薬 -「一手損」漸置換 [Free full text]

エチゾラム 0.25mgを1日3錠毎食後服用していた方が効果の「切れ目」を感じるようになり、その時間帯に離脱症状を呈する。これは服用間離脱と呼ばれる状態です。
離脱症状が現れるのは血中濃度が下がった時間帯のみなのでデパス1/2錠を6回服用することで対応……すべきではありませんよ、というのがこちらのnoteの主旨でした。

服用間離脱を呈している場合は定常状態に至ったエチゾラムの血中濃度の谷間(トラフ値の前後)に離脱症状が起きているわけなので、その谷間を埋める必要はあります。「離脱症状が無い状態で減薬を開始する」という基本原則に従えば服用間離脱がある間は減薬を開始することはできません。
谷間を埋める方法として分服回数を増やすことは望ましくない。ではどう埋めるか。
エチゾラムをジアゼパム(に代表される長時間作用型のベンゾジアゼピン)に置換します。

ベンゾジアゼピンの減断薬において漸減の前に置換法を経る必要がある患者さんの好例ということになります。
当然ながら置換と言っても漸置換。

ジアゼパムを漸増せざるをえないが故にエチゾラムの血中濃度の谷間がジアゼパムで埋まるまでには時間がかかる。その間の忍容が難しい場合、先行してジアゼパムを追加投与することがあります。
通常はジアゼパムの漸増とエチゾラムの漸減を同時に行うところを、ジアゼパムを先手で指す。世に言うエチゾラムの後手「一手損漸置換」です。

離脱症状の軽減という見地からはジアゼパムの追加投与は有用であることが多い。
しかしエチゾラムを減らさずにジアゼパムを追加するわけなので、一時的にベンゾジアゼピンの総服用量は増えます。眠気などの副作用が増強するリスクがある。慎重にジアゼパムを2-4週間に0.5-1.0mg/日程度追加・増量していきます。

服用間離脱が自覚されなくなるところまでジアゼパムを増量できたら、そこで一休み。
脳を離脱症状が無い状態に慣れさせます。
副作用を強く感じていたら早めにエチゾラムの漸減を開始。理屈としては追加したジアゼパムと等価用量のエチゾラムを減らせるはずです。これにより副作用の軽減も期待できる。

ベンゾジアゼピンの総用量が元のエチゾラム1日0.75mg相当まで減ったら今度は残るエチゾラムをジアゼパムと置換していきます。等価換算表に従ってエチゾラム0.1mg減に対してジアゼパムを0.3~0.4mg増。離脱症状や副作用を目安にジアゼパム側の用量を調整しながら漸置換。全量をジアゼパムに置き換えます。

ジアゼパムの単剤処方に至ったらそこでまた一休み。
定常状態に達する4週間は様子を見たい。
そこで離脱症状が無ければ後は型どおりに(進むとは限らないけど)漸減して着地を目指す。
ジアゼパムの先入れで総服用量が増えるフェイズがこの減薬法でもっとも注意を要する時期です。


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