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「群来軒」のちゃんぽん@長崎

 長崎は若いころ仕事でご縁があり、取材や撮影で何度か訪れている。この5月、その長崎にかつて所属していたコミック編集部の親しい仲間が集合して同窓会という楽しいプランが実現した。集まった5人のなかに長崎出身で、実家と東京の2拠点生活を始めた人がおり、彼の案内で天ぷらや夜景などを楽しもうという趣向だ。私はさらに前乗りをして、好きなちゃんぽんも楽しんだ。
 選んだお店はかつて取材したことのある中華街の有名店ではなく、江戸町の「群来軒」。落ち着いた雰囲気でどちらかといえば隠れ家系だろうか。ちゃんぽんの前に頼んだイカと野菜の炒め物(小サイズ)も具合よし、鹿児島の焼酎を2杯飲んでちゃんぽん。動物性の具が少なく上品な味わいで大満足だった。名物の路面電車で交通系ICカードを使えるようになっていて、とても便利。乗りこなして平和記念公園やグラバー園など鉄板スポットを楽しく回った。新しく整備されたと思われる出島近くの水辺の森公園がとても気持ちよく、5月の海風と日差しを楽しんでいたらあっという間に1時間経っていた。
 長崎を満喫する2泊の旅から戻ってしばらくしたら、毎日新聞出版から吉田修一さんの『永遠と横道世之介』がでた。楽しんで読んできた世之介シリーズの第3弾にして完結編だ。吉田さんは1968年生まれの長崎出身。世之介も同年齢で長崎出身という設定だ。最初の単行本『横道世之介』が出たのは、2009年。お調子者で裏表がなく、行動はいつも場当たり的だけど憎めなくて、なぜか周囲を笑顔にしてしまう。そんな主人公世之介が法政大学に入学、長崎から上京して1年間の物語。吉田さんの達者な語り口に夢中になった。
 2013年には世之介を高良健吾が演じて(ぴったり!)映画化もされた。共演の綾野剛、池松壮亮、吉高由里子、余貴美子たちもいい感じの味を出していて、あの頃の東京と長崎の風景も懐かしい。とてもよくできた青春映画だと思っている。
 今回の完結編は、39歳になった世之介と、例によって愉快な周辺の人々を描いている。またも世之介に魅了される。上下巻で長いのだが、あっという間に読み進んでしまう。最後のほうは読み終わってしまうのがかなしいように感じられて、行きつ戻りつしながらゆっくり読んでいた。読み終わってまた長崎に行きたくなった。

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