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「グリル一平」のスパゲティ・イタリアン@神戸

 情報誌の編集者をやっていた2000年ころ、「洋食」はグルメページの定番テーマのひとつだった。銀座「煉瓦亭」のポークカツレツ、浅草「ヨシカミ」のビーフシチュー、日本橋「たいめいけん」のオムライスなど、人気店の名物メニューも多い。だいたいにおいてヘビーでカロリー高めだが、いまもときどき食べたくなる。
 神戸のことは前にも書いていて、チャイニーズやビストロなどリピートするお店もあるが、一般的にはステーキやビフカツなどが人気で洋食の激戦地ともいえるだろう。そんな一軒、新開地の「グリル一平」に行ってみたことがある。新開地エリアは、三宮や元町とは趣を異にするエリアで、湊川公園から海側に新開地商店街が伸びている。戦前には芝居小屋や映画館が並び、「東の浅草、西の新開地」とよばれる有数の繁華街だったそうだ。東の浅草と同様に、戦後演劇や映画の衰退とともに、新開地も往時の賑わいを失っていく。1995年の阪神淡路大震災では、アーケードの倒壊などもあったそうだ。震災からの復興とともに新しい街づくりにかかわる取り組みが続いている。2014年には上方落語の定席「喜楽館」もオープンし、神戸に寄席が復活した。
 新開地の界隈をぶらぶらすると、湊川の戦いで足利勢に敗れこの地で亡くなったと伝えられる楠木正成を祀る湊川神社がある。楠公さんに思いをはせながら広い境内を散策したあと、新開地方向に歩くと、平清盛ゆかりの地名、福原地区がある。ふたつのビッグネームに長い歴史を感じる。福原には現在は風俗店が多く、このエリアの重層的な成り立ちも感じたりする。
 新開地商店街に戻って、神戸高速鉄道新開地駅に近い、雑居ビル2Fの「グリル一平」にはいる。ヘレビーフカツレツ、オムライス、カツハイシライスなどの強力ラインナップに目移りしつつ、心を決めて人気メニューの「鉄皿料理」スパゲティ・イタリアンをオーダーする。もともと東京でも「ジャポネ」や「リトル小岩井」のような茹でたあとさらに炒めたスパゲティが好きなので、鉄皿で焼きながら食べる感じがうれしい。ソースはデミグラス、テーブルの粉チーズもかけて、生卵とまぜまぜにして食べる。カロリーのことは忘れて、ハフハフと完食! おいしいなあ。
 まちづくりNPOのサイトなどをみると、新開地はみずから「神戸B面」と称しておられるようだ。その感覚、私は好きです。

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