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百見は一聞にしかず…?



タイトル。何かおかしいぞ、と思ったあなた。
その通り。

百聞は一見にしかず。
しかし、こと資格の勉強に関してはその逆だと感じるのは私だけではないと思う。
テキスト百回見ても(読んでも)頭に入って来ないけど、先生の解説聴いたら疑問氷解、という経験は誰しもあるのではないだろうか。

「習うより慣れよ」というのも、職人の世界とかならその考え方が最適なのかもしれないが、資格を取得しようという段階ではやはり「慣れるより習え」の方が正解だろうと思う。

話は前回の続きから。

簿記2級の勉強を本格的に再開したのはいいがなかなかやる気が出ず、YouTubeの無料解説チャンネルを見つけてから格段に理解が進むようになった、という話だった。

YouTube学習の利点と限界


簿記の勉強再開以前から、司法書士試験対策としてもYouTubeで学ぶ機会はこれまでにも多くあった。
姫野先生のようにYouTube上でかなり本格的なライブ講義を行う講師もいらっしゃるし、もはや学習のためのツールとしては当たり前になっている感がある。

教室での講義を配信するだけでなく、編集次第でいろいろと効果的な見せ方ができるのは利点だろう。
簿記のF先生は、猫のキャラや効果音などの控えめな使い方や、あえてMSフォントで素人感を出した板書を用いているのが一周回って新鮮に映るなど、くどい感じにはせずかつ飽きさせない仕上がりで最後まで視聴しやすくしている。

デメリットと言えばやはり広告がウザいのと通常は動画をダウンロード等できないことだろう。金を払ってプレミアム会員とかになればそのあたりは解消されるらしいが、今のところそこまでどっぷりの予定はなく、当面は無料のメリットを享受していくつもりだ。

まぁ何を学ぶにしてもちゃんとした内容のコンテンツがそこそこあることが大前提なので、専門性が高い実務的な勉強までもがようつべ上でできるなどとは当然考えてはないけれど。

以前にも書いたことだが、司法書士の先生の中には、YouTubeで登記のやり方について解説されている方もいらっしゃる。
しかし、それはあくまで導入に過ぎず、まともな人間であればややこしい登記なら金を払って司法書士に任せた方がマシだと考えさせる仕組みになっている。
やはりタダで手に入れられるモノには限度があるということだ。

簿記の勉強も、YouTubeだけで進められているわけではなく手持ちのテキストと併せて学ぶ形を取っている。あえて違う先生の教材を使うと、裏が取れるのと別角度から知識の確認ができるのでこれはこれで良い。


視覚系と聴覚系、どっち?


簿記について、冒頭の話に戻る。
減価償却の章を進めていたとき、簿記用語としての「資産を費用に少しずつ変換すること」という定義が、ようつべ先生の口から聴くことで突然腑に落ちた。
急いで手元のテキストをめくると、同じことをちゃんと書いてあった(当たり前だ)。
一度ならず読んでいるはずなのに、全く記憶、というか印象に残っていない。

こういうことは減価償却に限らず他の項目でもちょくちょくあり、先生の解説がわかりやすいからなのか、それとも、実は自分にはそもそも「読む」より「聴く」方が向いてたりするのだろうか…?との疑問が湧いた。

ネットで少し調べていると、こんな本に出会った。


著者の加藤博士はかねてより「脳の成人式は30歳」説を提唱されているらしい。

中高年は若い頃に比べて物覚えが悪くなっているという悲しい現実をいったん裏返して、様々な角度から前向きに捉えて40、50代以上の学びたい人々に元気をくれる本、という位置づけなのだろうという印象を持ちながら(出版社の傾向から)最初は読んだ。

視覚系と聴覚系との話については、ざっくり分けると「男性は視覚系、女性は聴覚系」という傾向があるらしい。

関心のある方は本を手に取る前にこちらのリンク先記事を読まれてみてはいかがだろうか。ある程度本の内容が紹介されている。

私の場合は、自分ではこれまで何となくどちらかといえば視覚系人間だと思ってきたが、記事中(もちろん本の中でも紹介されている)のチェック項目は半々くらいだし今回の簿記勉の経験を考えてみると聴覚からのインプットが案外向いていたのかもしれないと考えるようになった。今さらではあるけれど。

加藤博士によると、そもそも聴覚の方が視覚よりも記憶に直結しやすいのだそうだ。
私が司法書士試験の勉強に関してこれまで「独学」によるテキストからのインプットではなくずっと予備校の講座を取って講義を聴く耳からのインプットをメインに続けてきたのは、意図せずではあったけれど学習スタイルとしては良かったのかもしれない。


「大人」の勉強法と強み


司法書士試験の合格者の平均年齢は年々高くなり、昨年(令和4年度)は40.65歳ということだった。
それでも、今の自分よりは若い人たちが多数を占めている。
首尾よく今年の筆記に合格できていたとしても、そこから先も勉強しないといけないことはむしろ増えていくわけで、年齢的にもいよいよ単純暗記や根性論で乗り切るのは困難となっていく。

『すごい脳…』本によると、脳の最盛期は50代とのことなのだが、若い頃に比べると単純記憶することにかけてはやはり苦手になっているのは間違いなさそうなので尚更だ。

脳を8つの「番地」に分け、それぞれの連携を強化させることによって脳の働きを良くしていこう、というのがこの本の眼目ということらしい。そして、学生時代とは脳の仕組みが変わっている「大人」にとってふさわしい勉強法を紹介していくという内容だった。

私が30代の最後にどうにか短期合格できた宅建は、参考書を読んでノートにまとめるという学生時代さながらのやり方で、今思えば年齢的には既にアウトなやり方だった。かなりギリギリで使ったのは運が良かったのと、強いて言えば市販テキストのうち一冊はマンガだったので、それなりに面白く勉強できたからではないかとも思う。

司法書士試験の勉強は量が膨大なので工夫して楽しみながらやるといっても限界がある。相当な範囲を暗記に頼らざるを得ないのは確かだ。
しかしそれでも、より効果的なやり方が試せるのなら取り入れない手はないだろう。

受験生の中には講師を推し先生と位置付けたり好きなキャラクターのシールをテキストに貼ったりしている人、自分へのご褒美とばかりにアイスを食べる人(受験アカウントのアイス摂取率はかなり高い)などを見かけるのだが、そうやって気分をアゲていくのは脳科学?的にも理にかなったやり方なのかもしれない。
と言うか、そうやってモチベ上げなきゃ到底やってられない過酷な試験、である裏返しなのかもしれない。

この『すごい脳…』本自体も、そうした効果を狙っているようで全編マンガ入りだし文章が短く区切られていて(私も見習わなければならない)読みやすいし、何より活字が大きい。まさに中高年のための本!

その中高年、もとい「大人」は、脳力では若者に劣っているわけではないということは本書の中でも言及されているが、決して慰めなどとということではなく、私自身感じているところは確かにある。

若い頃はいわば机上の知識、ただ「知っているだけ」だった事柄が、ある程度の年齢になると自らの経験や実感をもって「わかる」「理解できる」ということが間々あるのだ。

亀の甲より年の功、長く生きてくればそれなりに人生の機微に触れる機会もある。
法律の意義も、人生経験あればこそ、真に理解できることもあろう。家土地や相続についての相談者の悩みは、聞き手があまりに若いと心から寄り添うことはなかなか難しいのではないかと思う。

司法書士界は試験の合格者の平均以上に「高齢化」が進んでいるようだが、実社会に比例していると考えれば別に驚くことでもないし、元気で脳が若くさえいればそもそも定年のない業界だから年齢は関係ないといえる。
年を重ねることは決して悲観的なことじゃないぞ、同世代諸君。


アウトプットの機会が増え…る?


「大人」にとって効果的な学習法の一つにアウトプット、問題演習にとどまらず、声に出す、発信する、人に教える、といった能動的な行為が挙げられる。

筆記に受かれば口述という最初のアウトプット関門が待っているし、研修などを通じて同期の面々と議論や情報を交わす場面もあるだろう。知らんけど。


かなり気は早いが、ネットで地元の司法書士会の事業報告をチラ見していると、近くで開業されている先生方が各種研修会やセミナー等で講師を務められている実績に触れることができる。

以前、市民向けのセミナーに実際に参加したことがあるので、内容もさることながら講師の先生の講座の組み立て方や伝え方、わかりやすくするための工夫のされ方などはとても勉強になった。
会場で聴く側に居ながら、もし自分がいつか話す側になったら、こういう点には気をつけた方がいいな…といった視点でも見ることができるので、登記や後見に関しての市民向けの講座やセミナーがあればまた参加したいと思ってはいるが、形式としては個別相談会の実施の方が多いようである※。

専業主婦になる前には仕事の関係でちょっとした講師の立場や講演会の進行等を務めた経験はそれなりにあり、いずれも経験や準備の不足で反省点だらけだったので、もしそういう機会があれば随分昔のことだし少ない経験ではあるけれど活かしていけたらいいなと思ったりしている。

もちろんまだ妄想の域を出ない受験生の身ではあるが、合格後、実務に就けばそうした場面も現実に訪れるだろうし、実際に人前に立って話をするという機会を得られればまさに究極のアウトプットといえるだろう。


気になるのは、今に始まったことではないがSNSでは業界に関するあまり良くない事情…思うほど稼げないとか、労基法を遵守できてない事務所があるとか、資格上の限界はあるのにリスクだけは負わされるとかいったマイナスの情報が入って来たりすることである。

業務の性質上、重い責任を課せられ弛まぬ自己研鑽を必要とする資格だとは重々承知しているし、別に薔薇色お花畑な未来を描いてるわけでもない(田舎だしそもそも自分はもういい年だし)。

けれども、司法書士はまだまだ足りてないという話も耳にするので、せっかくそんな世界に苦労の末に飛び込もうとする新人たち、特に若い世代のために、バブリーじゃなくて良いからせめてまともに働ける環境をつくってあげてほしいものだと思いながらあと十日余り、簿記の勉強を続けながら心穏やかに待ちたいと思う…難しいけれど。


※公表されている資料によると、出張相談会への講師派遣は前年より増加したとのことだった。相続登記義務化への関心の高まりによるものと思われる。講演会よりはやはり個別相談の方がニーズがあるのだろうか。


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