PCの遅さにじっと待てない僕ら

あーまただ。隣に座っている友だちが、ぶつくさ言いながらイライラしている。最近、というか、結構前からPCの挙動が重たいのだそうだ。ひとつのアプリを開くと、"虹色のくるくる"が回り出す。そして、じーっと待っているとアプリはクラッシュするらしい。

その様子を見ていると、「何こいつ小さいことでイライラしてんだろ」と思うけど、振り返ってみると、自分も結構それでイライラしているなと思った。

同時にあれこれアプリを起動させたらPCがパンクしてしまうから、できるだけひとつのアプリに集中させてあげればいい。もし途中で動きが止まってしまったとしても、その間にコーヒーを飲んだり、読みかけの本を読んだりすればいい。

頭では分かっていても、タイミングが悪いとかんしゃくに障ることがある。"今それをやりたいのだ"という瞬間に急に歯止めをかけられるあの感じが、無性にイライラするのだ。「昔はもっと遅かったんだぞ」と言われるかもしれないけど、そんなことしったこっちゃない。肝心なのは今だからだ。

「なんなんだよ！何回同じことを繰り返せば済むわけ？なんなんこいつ。ほんまに意味分からん」

友だちは、吐き捨てるようにPCに向かって言い放つ。強くマウスを握りしめてぶんぶんと左右に振ってみるものの、虹色のくるくるがついてくるだけだ。「あーあー、まじでやってらんねー」とうなだれるようにしながら中庭に向かって歩いていった。

僕らは、PCに期待しすぎているのかもしれない。

PCは、使えば使うほどに劣化は進むし、何回も充電すれば電池持ちも悪くなる。見た目は変わらないけど、どんどんおじいちゃんになっていくのだ。だけど、僕らはおじいちゃんに、つい「早くしろ早くしろ」と言ってしまう。

じゃあ、定期的に新しいPCに替えるか？というと、ホイホイ買えるわけでもない。もう、向き合うしかないのだ。定期的にゴミ箱を空にして、使わないアプリを削除して、ダウンロードしっぱなしの要らない画像をゴミ箱に入れるしかない。

あと、イライラしているということは、仕事の進め方が悪いのもあるかもしれないと思った。自分が今何をやろうとしているのかハッキリしていないから、同時並行でアプリを立ち上げてしまうだなと。

・定期的に整理すること
・仕事内容を見直すこと

この2つができれば、おじいちゃんPCとでも何とか仲良くやっていけそうだと思う。

そんなことをぼーっと考えていたら、PCがぶぅんと音を立てて動き出した。「おーい！PCやっと動き出したぞー」と、中庭でタバコを吸っている友だちに言った。わかったー、と遠くで声が聞こえた。

（Photo by Andrew Neel on Unsplash）

#フィクション #短編小説