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2023年12月の記事一覧
恋に生きた君は知る【28話】
けして交わることのない異空間であればこそ入口と出口とを別々に繋げば最短の移動経路となる。
もっとも、リブラントの人間くらいにしか使えない経路ではあるが——。
クレアクリスが用意した“道”を抜けたエルメリアは、侯爵家の敷地内ではなく教会の裏手に降ろされたことに気付いて振り返る。
ただの転移魔法ならともかく精霊界を経由しているところを見られでもしたら厄介なことになるだなんて言わなくても伝わっ
恋に生きた君は知る【27話】
——翌日。
礼拝と奉仕活動を終えたエルメリアはユスツィートと共に通りの家々を訪ねて回った。
婚約の儀の前後で姿を見せる時間を作るにあたり事前の告知と挨拶を済ませておくためだ。
言わば人となりを知ってもらうための口実である。
多少警戒されるのは致し方ないこととして1件1件丁寧に伺えば、好奇心を抑えられずに集まった人々の視線は次第に柔らかいものへと変わる。
魔女への不信感が拭いさられたと
恋に生きた君は知る【26話】
ユスツィートの愛をエルメリアは否定できなかった。
愛されている自覚が彼女にはあったし、彼の“愛する者”がエルメリアなら求められる相手もまたエルメリアとなる。
その指摘に間違いはない。
当然のように自身を対象から外していた彼女は「そうだけどそうじゃない!」と叫び出したい気持ちでいたが、後に続く言葉を思えば口に出す訳にもいかず、結局両の手で顔を覆って俯くに留まる。
そうだけどそうじゃないん
恋に生きた君は知る【25話】
奉仕活動を終えたエルメリアが迎えの馬車を待たせている場所に向かうと、何やら話し込んでいる様子のユスツィートとイルゼの姿があった。
見付からないようにと周囲を警戒しながら来たのだが、どうやら相手の方が上手だったらしい。
エルメリアに気付いたユスツィートが振り返って笑みを深める。
「エリー! 今日もお疲れ様」
「ありがとうございます。何かお話しされていたようですが、お聞きしても?」
「ああ。彼
恋に生きた君は知る【24話】
鐘の音が響き渡る。
万物に等しく降り注ぐ神の音色が礼拝堂に満ち、祈りを捧げる者——エルメリアの身を浄める。
「天と地とに宿し神々が今日という日をあなたに与えたことを喜びなさい」
「仰せのままに」
祈りの終わりを告げる神父に定型句を返した彼女はそれから、修道女たちも利用している更衣室へと移動した。
——害意がないことを示すため領地で暮らしている間は教会に通い、祈りを捧げてから奉仕活動にあ