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No.124 『ZOOM』 同名別会社にご注意を

抜きん出た才能や特技は持ち合わせていないのですが、絵を描いたり楽器を演奏したりする時間が昔からわりと多かったように思います。小学生の頃には塾へ通う代わりに絵画教室でデッサンや油絵を学び、個人レッスンでフルートを習っていました。身につけた能力をどう活用するかにその人の人間性が表れる。成人してからのわたしにとって、絵を描くこととフルートを演奏することは、もっぱら女性を口説くためのツールでありました。習得の機会を与えてくれた両親が聞いたらきっと呆れることでしょう。

楽器演奏を趣味とする方は意外にいらっしゃるものですね。わたしが勤める銀行のアナリストチームにはベーシストがおりましたし、野村証券のアナリストにはギタリストがおりました。そういえば、某運用会社のファンドマネージャーにはジャズピアニストもいましたね。そんなサラリーマンミュージシャンたちが西麻布にあるライブハウスに集まって、それこそオフコースやチャゲ&飛鳥、イーグルスやエリック・クラプトンなど和洋なんでもありのセッションに興じていたことがあります。わたしは僭越ながらボーカルを担当し、前奏と間奏にフルートを即興で挟み込む。晴れの舞台ですが、そこにいるのは全員オジサン。女性など一人もおりません。それでも実に楽しい時間でした。

話は変わりますが、「ズーム」といえば100人中99人までがアメリカの「Zoom Video Communications」を思い浮べるのではないかと思います。今年の初めにはほとんど聞かれなかった「ZOOM」ですが、テレビ会議システムの代名詞として今ではすっかり定着しましたよね。しかし、日本においても「ズーム」を社名に冠する企業があることをご存知でしょうか。

日本の「ズーム」は東証ジャスダックに上場する音響機器・電子楽器メーカーです。同社の決算説明会資料を見ると、「ハンディオーディオレコーダー」や「マルチエフェクター」などが主要な製品らしい。「ハンディーオーディオレコーダー」というのは音楽用ICレコーダーといえば良いのでしょうか。「8チャンネル入力、最大12トラック同時録音」ができるそうで、通常のICレコーダーに比べて見た目もかなりゴツイ。いかにも玄人好みの機械といった感じです。「マルチエフェクター」というのは、エレキギターに残響音(リバーブ)やエコーをかけるための機械でして、ギターに触れたことのある人なら「ZOOM」ブランドを一度は目にしたことがあるかもしれません。ギタリストが演奏中に足元の機械を踏んでいる光景を目にしたことはないでしょうか。あれがエフェクターですね。西麻布のライブハウスで野村証券のギタリストも巧みに操っていた気がします。

まあ、「ハンディオーディオレコーダー」にしても「マルチエフェクター」にしてもかなりニッチな製品といっていい。2019年12月期におけるズームの業績は売上高86億円、営業利益3億円。シブい領域に特化しているわりに収益性がイマイチな印象ですね。日本のものづくり企業にありがちな、「良いものをつくるためにコストはいとわない」考えなのかもしれません。実際、研究開発費の負担で上期の営業損益は赤字に転じていました。

ややこしいのが、アメリカの「ズーム」と似たような分野を強化していることです。「WEBミーティングやビデオ学習」などで使う「ハンディビデオレコーダー」に注力しているらしい。アメリカの「ズーム」でWEBミーティングしている様子を日本の「ズーム」のレコーダーで記録する、といった風景がひょっとしたら見られるのかもしれません。

アメリカの「ズーム」と日本の「ズーム」。みなさんはどうぞお間違いなきように。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。


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