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No.113 『NEC』 New Normalをどう捉えているか

稚拙なことを申し上げるようですが、ウイルスというのは実に賢いですね。特に新型コロナは最強の部類に属するのでしょう。なにせ感染したことをヒトに気づかせないのですから。ステルス戦闘機も形なしです。人類が誕生するはるか昔からウイルスは活動しているならば、天気と同じく、科学の力で統御できると考えるのはおこがましいのかもしれません。

終息ではなく収束。新型コロナとの共棲を前提とした『New Normal』(新常態)を日本企業の経営者はどのように捉えているのでしょうか。社名に「日本」を冠する日本電気(NEC)の新野社長からお言葉をいただくことにしましょう。直近の決算説明会から引用してみます。

「コロナ危機が収束した後に訪れる『New Normal』の時代は、デジタル化、リモート化、オンライン化、省人化、タッチレス化が急速に浸透していくだろう。こうした変化は、まさに当社がこれまで培ってきたDX(デジタルトランスフォーメーション)や生体認証、AI(人工知能)、5G(第5世代移動体通信)などのテクノロジーをフルに生かせる領域だ」。

新野社長が掲げる5つのキーワード、すなわち「デジタル化」「リモート化」「オンライン化」「省人化」「タッチレス化」は、NECのようなITサービスに身を置く企業だけではなく、あらゆる業種の日本企業がこれから対応すべき変化を象徴的に捉えているように思います。社名に「日本」を冠するだけに、さすが素晴らしいことをおっしゃいますね。

ちなみに、「New Normal」に向けた取り組み事例をNECは3つ挙げています。①テレワークソリューション、②マスク対応顔認証システム、③新型コロナウイルスワクチン設計。5つのキーワードのうち、テレワークソリューションは「デジタル化」「リモート化」「オンライン化」に相当するように思います。また、マスク対応顔認証システムは「デジタル化」「タッチレス化」「省人化」につながる製品でしょう。それでは、新型コロナウイルスワクチン設計はどれに当てはまるのでしょうか。勉強不足でよく分かりませんでした。

勉強不足という意味では、新野社長の言葉にも出てきた「DX」にモヤモヤしたものを感じています。そもそもDXとは何でしょうか。「デジタル化の最終進化形」というのが私の理解です。

デジタル化には3つのレベルがあると思います。レベル1が「デジタイゼーション」、レベル2が「デジタライゼーション」、そしてレベル3が「DX(デジタルトランスフォーメーション)」。「デジタイゼーション」というのは「技術の変化」を意味します。画像のデジタル化に例えるなら、「アナログカメラからデジタルカメラに置き換わる」といった感じでしょうか。「デジタライゼーション」が意味するのは「ビジネスモデルの変化」です。「写真の現像工程がなくなり、ネット上で写真データをやりとりできる仕組みが生まれる」、これがデジタライゼーション。そして「DX」とは「社会や経済の仕組みの変化」を表す概念といえます。「写真データを使って新しいサービスやビジネスの仕組みが開発され、Instagramのようにネット上で写真データを世界中の人々が共有できるようになる」。かなり壮大な変化を意味するのがDXであり、実際に成功している企業としてよく例に上げられるのは、メルカリやAmazon、Netflixなどでしょう。確かにこれらの企業は私たちの生活様式を大きく変えていますよね。

ところが最近では猫も杓子もDX。いわゆるバズワード化しており、「とりあえずデジタル化で社内の業務フローを変革する」というように、意味合いがかなり矮小化されて使われているような気がします。「DXだろ、いいじゃないか、我が社もぜひ取り入れよう、デラックスってことだからな」。こんな笑えないエピソードが聞かれたりもします。

そういえば昨日、新橋の居酒屋でランチを食べました。会計は対面ではなく全て自動精算機。まさに「省人化」「タッチレス化」が進んでいることを実感しました。

無名の文章を読んでいただきありがとうございます。面白いと感じてサポートいただけたらとても幸いです。書き続ける糧にもなりますので、どうぞよろしくお願いいたします。