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20代最後の日

熟睡から目が覚めた
涼しい
空は高く晴れていて深夜に降った雨の水たまりが青い空と白い雲を映している
それほど高くない過ごしやすい朝、秋の匂い

ふと考えてしまう
いつもの誕生日はそんなことないけど
10年前は2011年だ
あれからなにも変わらないかも、というのは嘘だ。10年間でいろんな経験をした。いろんな場所で働いて、いろんな人と出会って、別れたりした。根本のところは変わってないとはいえ、10年前は世間に対して素人だった。そして素人であることも知らなかった。いまの僕は自分が素人であることを知ってる。自慢できることはひとつもない。

激しかった夏の温度が抜け落ち、埋められた骨から汚れが分離していき本来の白さを獲得していくように、魂が透き通り、風の匂いに寂寥感や静けさを嗅ぐことができる、秋の空気。死んでしまう予兆のような秋の空気に、敬虔な気持ちが差していく。
感情のパレードは散り散りになって帰路につく。鮮やかだった花束は一様に白くなり、雨の気配に青みがかる。青はとても深く、秋の空は高い場所から風を送る。

これからの10年はどうなるだろう?
熱意みたいなものはもっと消えていくだろうし、からだの不調もどんどん悪く……、そうやって生きていくなかで価値のあるものに触れられればいいけど……なにか素晴らしい瞬間が……

思えばずっとそうだった。漠然とした中身のない期待を電池にしてきた。それは決して具体的じゃなくて、具体的にしようとしてもできない。形にすると消えてしまう。そんな実体のない期待は決して叶うことがないだろうけど、でもあやふやな気持ちを抱えることが生きていく理由なのかも。

秋の空は透明で青い
風が僕の疲れたシャツを払い、ゆるやかに過ぎていく。

なににでもなれる、なんて思ったことある?
一度もない気がする。
でもなんとなくそういう感じはあったかも。なにかが起こりそうな雰囲気は。
いまは?
いまは別に。
別に?
ほとんどない。
すこしはある?
あるかなあ……。


人生はギャグ漫画みたいなものだし、この世はギャグ漫画みたいなものだって聞いた。


本は?
別に。好きでも嫌いでもない。
読むのも書くのも。
何かを始めたりするのが苦手だから同じことをしてるだけ。だからこれからも続けると思う。

タイムカードを押して自転車に乗る。スーパーに寄って、カップ焼きそばとシュークリームと炭酸を買う。睡眠薬とお酒を飲んで30分経ったあたりが人生の頂点で、あとは下降するだけ、どんどん酷くなり取り返しがつかなくなって気絶するように落ちる。秋の夜は深い青に満ちていて、やがて空の一端が白み始め、鳥の囀りが膜の向こうから聞こえている。眠ってる僕の意識と無闇に暴れ回る無意識を、秋の朝が静かに照らし出し、また一日が始まる。十年を辿る最初の一日が、当たり前のように回り始める。

それだけ。


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