現金一銭も待ってなくて、脇汗かいた話
諸用が終わったのは、平日の午後16時30分だった。保育園お迎えまで、まだちょっと時間がある。30〜40分ほどポカリと空き時間ができた。
久々に一人でコーヒーでほっこりタイムしようと思った。今すぐ行けば、20分は、何も考えずにゆっくりできる。
しかも、ここの近所に素晴らしい喫茶店がある。大学の頃、よく行った喫茶店だ。こりゃ、行くしかねーな、とロックオンして、喫茶店を目指す。
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自転車を走らせ、5分ほどで到着。カフェというより喫茶店なお店で、夏はクーラーが効いてないことが多く、窓から入ってくる風でしか涼むことができない。ある意味、この時期の夕方以降がベストなお店だ。
早速、自転車を止めて、入店しようとする。しかし、ここで一つの危惧に襲われた。
さて、この瞬間の私ときたら、現金を一銭も持ってない。恥ずかしながら、すっかり現代人かぶれである。最後に現金を使った日はいつだっただろうか。昔から財布を持つのが嫌なタイプだったので、世のキャッシュレス化の流れには、すんなりライドオンした36歳である。
うむ。お店の看板にPayPayのシールも貼ってないし、カード使える雰囲気も出てない。キャッシュレス決済してませんオーラがぷんぷん出てる。
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オダギリジョーがヘンテコな外国人に「じゃいいです〜」とかいわれたり、宮川大輔がPayPay言いながらぴょんぴょん跳ねたりしてから、それなりに経つ。
加えて、こちらのお店は、それなりに有名店でもある。雰囲気満々の喫茶店でも時代の流れには乗ってるでしょう。そうでしょう。
看板にシール貼ってない店も店内のレジに貼ってるパターンもあるし、入って聞いてみたら、余裕でキャッシュレス決済可能なパターンなんて全然ある。
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コツコツと階段を登り、2階の扉をギィと開く。
カウンターに常連っぽいのオサレお姉さん(24)と短髪オサレノッポ店長さん(56)とお喋りを楽しんでいた。そこに、よそよそしく入店してきたのは、くたびれネクタイおじさん(36)である。
私は、恐縮した小さい声で言葉を投げた。
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何これ。
逆オダギリジョーかよ。
エアペイCMの逆パターンじゃん。
店長さんの「あ、現金だけなんです〜」のセリフときたら、小慣れすぎてて切り返しの速度たるやマッハよ。優しい人柄溢れる柔らかく線の細い声ではあるが、テンプレの返しゆえに針金みたいに冷たく鋭い。シュッとした言葉をシャッとくらった。
この瞬間、めっちゃ脇汗かいた。
脇汗を感じながら「あ、じゃいいです〜」って言うた。すぐに立ち去りたいから、こちらもすぐに返した。3つあったセリフは、すぐ終わった。タタタ🎶のリズムで終わった。3連符の会話だった。
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ああ、わかってたはずなのに。ここの喫茶店は、キャッシュレスの波になんて乗りそうにないなんてことは、なんとなくわかっていたはずなのにオレのアホポンタン。
2階に上がる前にお店の看板から察することはできたはずなのに、そこを無視して、自分本位に行動してしまった。
その結果、ハリガネカウンターからの3連符ラリー、そして、私の脇は、汗びっしゃあ。
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はぁ。。
ま、ま、ま、仕方なし。
近所のなんてことないチェーン店でコーヒー飲もう。幸いまだ時間は少しある。なんてことないお店で、なんてことないコーヒーをそそくさと飲もう。
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ああ。。。
脇汗がちょっと冷たい。。。。
ひんやりしてちょっと気持ちいい。。。
平日の夕方、17時前。
脇汗で涼を感じるキモい36歳おじさんがチャリンコで通りますよ〜っとな。
・こぼれ話
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