麻雀AIナーガ君、天鳳高段者との打牌一致率からわかること

 AIとして世界で2番目に麻雀が強いナーガ君ですが、そのツイッターに面白い分析結果が出ていました。

https://twitter.com/NAGA025/status/1298191956955152384

 天鳳高段者になるほど、ナーガ君との打牌一致率が高くなっているとのことです。その結果を見て、「ナーガまじ強!」みたいなリツイートをする人がいたので、それは違うという説明をします。ナーガ君は世界で2番目に強いAIとはいえ、まだ人間界での実力は安定段7以下、鳳凰民からみたら
(相対的に)「ヘタ」な打ち手なのです。

 でも錯覚する気持ちはよくわかります。高段者になればなるほどナーガ君との一致率が高くなるんだったら、自身との一致率が100%であるナーガ君がその頂点にいるって事になるんじゃないの?と思ってしまいそうですよね。

 これから、なぜそのような事象が起こるかという説明と、分析結果から「集合知ってやっぱりすげー」という事が言えます、という説明をしようと思います。ついでに集合知についての説明もします。

 ただ自分で言うのも何ですが、その説明に絶対的な自信はありませんw私の推論に間違いがあればぜひ指摘してください。異論反論は大歓迎です。

 余談になりますが、時々ネット上でその人と違う意見を述べたり間違いを指摘したりするとまるで自分が攻撃されたかのような反応をする人がいます。もちろん悪意のある嫌がらせみたいな書き込みには対決したり無視したりとかの対策が必要だと思いますけど。でも仮に自分の意見が間違っていた事がわかったら、それは自分が進歩したということですから、歓迎すべき事ですよね!

 では説明に入ります。

 ここに、常に正着を打つ麻雀の神様と、神様との一致率60%の中級者A君、同90%の上級者B君がいるとします。ではA君とB君の一致率はどうなるか考えてみましょう。

 これは(A君とB君が共に正解を選ぶ率)+(A君とB君が共に同じ不正解を選ぶ率)となりますね。この時、A君が正解する問題はB君も正解するだろうと考えてしまうと、A君とB君の一致率は60+αとなって、A君と神様との一致率を超えてしまいます。これが「ナーガ君つよ!」の錯覚が起きる原因だと思います。実力が近い方が一致率も高いだろうとつい思ってしまうんですよね。

しかし実際には、中級者A君だけが正解するケースもあります。今度は正解がランダムに発生するとして考えると、共に正解を選ぶ率は0.6*0.9=54%、共に不正解を選ぶ率は0.4*0.1=4%、同じ不正解を選ぶ率はさらに低くなるため、A君B君の一致率はA君と神様の一致率を下回ります。

 実際はこの両極端のケースの中間の事が起きていると考えられますね。ここではB君と神様の例で考えましたが、一致率80%のC君を作って、A君からみたB君とC君の差で考えてみても同じことです。

 今までの説明で示せたのは、「中級者A君との一致率は、比較相手の段位が高くなるに従って高くなったとしても不思議ではない(矛盾しない)」という事であって、必ずそうなる事を示せたわけではありません。でもそれで十分ですよね。実際はどうなるかの実験自体はナーガ君がやってくれていて、もう答えは出ています。なので矛盾が無い事を示す事ができれば十分ですよね。

 次に「集合知やっぱりすごい」について。

 まず重要な事は、考えてみれば当然のことですが、ナーガ君にあてはまるこの現象は、爆打にも、もちろんsuphxにもあてはまるという事です。別にナーガ君だけ特殊な打ち方をしている訳ではないですからね。もっと言えば、この相関関係が生じる現象は私にも貴方にもあてはまります。という事は、強い人ほどよりおおぜいとの選択が一致するということで、麻雀の打牌においても「集合知すごい」という事が確認できた、ということになります。

 集合知というのは、正解のある問題で多数が出した結論、とでもいいましょうか。
 

 たとえばクイズ問題で、ほとんど素人ばかりの集団から得た多数決の結果が専門家の正解率を上回る事象とか、バケツの中に入ったビー玉の数を当てる時に多数の平均を取ってみたらものすごく正解に近い数字になるとか、
そういう事例がよく知られています。

 逆にもし麻雀で同じレベルの人どうしの一致率の方が高いとなると、人数の多い中間レベルの強さの人の誤った意見が集合知の結果として採用されてしまうことになり、これは今まで得られた集合知についての知見と矛盾することになります。

 今回このような考察が得られたのも、弱いAIであるナーガ君(失礼w)でデータを出してくれたからこそであって、suphxで同じ事をやってたら
「ふーん、やっぱりsuphxて強いんだね」と軽く流されて終わっていたことでしょうw

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