2020年5月6日

朝7時起床。

前日、1人で深酒をしてしまってリビングで爆睡。

明け方4時に寝室に移動したがカミさんから「緊急速報で起きなかったの?」と呆れられる。


「パーソナリティーが覚醒する瞬間」

何年もラジオ番組をやっていると「初めてラジオやります」「ラジオ苦手なんです」という人がパーソナリティーの番組を担当する事もある。

僕が声優さんやアニメに紐付いた番組、通称「アニラジ」を担当する事が多いだからだろう。

アニラジはキャラを演じている声優本人じゃないと担当する事は出来ないから自分にラジオへの意欲が高くなくても担当する事になる。

そもそも「ラジオをやりたい」という人はお喋りな人が多い。

「ラジオをやりたい!」という人は「自分から伝えたい事がある」という人。

ただ「お喋りな人」はイコール「話が上手」というわけじゃない。

自分の中で伝えたい事はまとまっているけど、それを人にどう伝えるかが鍵となる。

ラジオをやりたいと言っているけど、実は話下手な人も多い。

なので「初めてラジオやります」「ラジオ苦手」という人を担当するとそもそもの意識がゼロからなので、番組の成長と共にどんなトークをするんだろうと逆にウキウキしてしまう。

パーソナリティーを育てるのは作家だけではなくディレクター、リスナー、みんなで育てるもの。

少なくても一番近くてサインを送りやすい立場の作家はその人の魅力にいかにして気付けるかが重要となってくる。


「株式会社小澤亜李」

声優 小澤亜李さんという方がいる。

アニメ「月刊少女野崎くん」でヒロインを演じて以降、様々なアニメのキャラを演じる声優さん。

彼女がパーソナリティーを努めていた「株式会社小澤亜李」という番組で初めてご一緒させて頂いた。

この「株式会社小澤亜李」、配信しているインターネットラジオステーション<音泉>というアニラジを多く作っているネットラジオ放送局で僕が一番最初に仕事をした案件。

今でこそ音泉さんには色々お仕事をさせて頂いているが、これが一番最初の仕事だった。

番組のプロデューサーから連絡を頂いた時、「難しい条件かもなんだけど、どうかな?」と言われたのを覚えている。

当時、アニメ「ローリングガールズ」という作品で主要キャラを演じていた小澤さんは、その宣伝ラジオやニコ生であまり喋る事がなく、どっちかというと「喋り下手」な印象だったそうだ。

そんな彼女をパーソナリティーにしてラジオを行う。

しかもアシスタントはなし。30分、彼女で持たせないといけない。

尚且クライアントさんから「面白い番組にして欲しい」との強い要望が。

なるほど、難しい条件ってこれですね。


「強いルール」

僕も音泉で仕事をするのは初めてだったので、手探り状態でしたが番組スタッフが集まっての会議で番組をどうするかを話し合った。

僕は会ったこともない人を想定で「これしか出来ない」と決めつけて番組内容を固めるのは嫌だったので「強いルールを1つだけ決めて、あとは自由!」みたいな番組はどうか?と提案した。

そんな話し合いの中、ビジネスを扱ったアニメ作品のラジオなのでビジネス要素もいれつつ、ゲストに他の声優さんを呼ぼうとなり、1つだけ強いルールを決めた。

「ゲストは先輩だろうが小澤社長に敬語を使う」

聴いた話、小澤さんはアフレコ現場でも非常に周りに気を使うおとなしい方だそうだ。

そんな人が先輩から敬語を使われたら萎縮するかもしれないが、「株式会社小澤亜李」という番組上、小澤さんは社長。

ゲストは社員のような扱いなのでルール的にはOK。

一度、それで番組をやってみようと話がまとまった。


「小澤亜李の一言」

そんな中、初めてアフレコで会った時、小澤さんに言われたのが

「私バカなんで気の利いたこと言えないんです。」

だった。

「いや、大丈夫ですよ。」

「本当にラジオで何話していいかわからなくて…」

「何話していいか分からないなら何話しても大丈夫ですよ。1人パーソナリティーなんで誰にも迷惑掛けません。」

そんなこんなで初回は1人でプレ放送という形でラジオ収録がスタート。

収録を進めていく中、1つ気付いた事がある。

小澤さんは根っからの役者で「この人を演じて下さい」は非常に型にハマって演じることが出来る。

しかし自分の素の部分をラジオで出すのが不得意。

そこで「ゲストは先輩だろうが小澤社長に敬語を使う」から派生した「小澤社長はゲストにはタメ口」というルールを追加。

これが覚醒の瞬間だった。

収録前は「大変失礼な事を言うかもしれませんが…」と言いつつ、収録では「やーやー森久保くん!」とまるで豹変したかのようなトークっぷり。

小澤亜李というラジオモンスター誕生である。

ゲストが「いやいや小澤社長、さすがです!」と太鼓叩けば「君もなかなか言うようになったねぇ」なんて言葉を返す。アナタ本当に社長やった事あるんじゃないのか?ってぐらいの豹変っぷり。

番組は全16回行ったが、後半は先輩をイジってイジって弄り倒す。

すげー、ラジオで覚醒した人、初めて見た。

彼女のラジオのトークは素に近い部分もある。

結果的に彼女は「素の自分を演じる」という矛盾するルールの元に覚醒をしたように思える。

「苦手だから」「喋れないから」の決めつけは駄目。よくない。

実は少し手法を変えればそれが魅力かもしれない。


「project758 小澤亜李のげんでる!!」

彼女とはその後、project758 小澤亜李のげんでる!!という番組でも一緒だった。

こちらはリスナーと電話を繋いだり、1人トーク30分をしたりと自由な内容で作っていったが、「私バカなんで気の利いたこと言えないんです。」と言った人とは思えないぐらいの内容。

なんでも来い!の超攻めのファイティングスタイル。

小澤亜李は30分どころか60分でも1人喋りで番組を回せる人になっていった。


「総括」

今はレギュラー番組も終わり、連絡を取る事も会う事も少なくなったが、僕のラジオ歴の中でも異彩を放つパーソナリティーの1人。

当初の彼女のようなラジオ苦手意識のある人は一度、殻を破る何かをしてみると覚醒するかもしれません。どうぞいつでもご相談下さい。

ちなみに「カバネリツアーズ」という番組でご一緒した畠中祐、千本木彩花もそう。

まぁのちに2人は覚醒どころか結婚しましたが。

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