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ビートルズなんて聴いてる場合じゃなかった


私は2023年4月から韓国に滞在している。
4月から8月までは観光ビザで滞在し、2023年9月からワーホリビザに切り替えた。

観光ビザで滞在している時は、韓国で仕事はできないので、家に閉じこもって日本から持ってきたリモートワークの仕事をしていた。

家で日本語で仕事をして、学校にも通わず、習い事もしておらず、外でバイトもできず、、日本人の女の子とルームシェアをしているので、ほぼ日本にいるのと同じ生活をしていた。

それでもやっぱり居酒屋さんでJpopを聴くこととか、マニアックな日本酒を飲むこととか、古本屋さんで気になる日本語の小説を買ってみるとか、そんな日本での日常はほとんどなくなってしまった。

それがストレスだった。

まあ、海外に住みながら日本でいるのと同じように住みたいなんて我儘の一言でも片付けられない支離滅裂な我儘であることは自分でも理解してるんだけどね。



私は日本文化が好きだ。
特に、クセの強いキャラクターが登場するコントや深夜のしょうもない話にクスッとするラジオ、それからなんとない失恋を大失恋のようにエモく歌う邦ロック。

韓国に来て、3-4ヶ月に1回の頻度で日本シックが来る。

実家の母に会いたい、地元の友達と話がしたい、そんなホームシックではない。勿論、そんな気持ちも全くないことはないが、「シック」と呼ぶほどまでに深刻に実家や地元が恋しくなったりしたことはない。わたしは、割とどこにいても新しい人間関係に満足できるタイプだ。
私にとってのホームシックは、日本語シックというか、日本のあの界隈じみた地味な文化に囲まれたい!そんな欲求だ。

特に、私は曲を聴くのが好きだ。暇な時にはいつまでもYouTubeで関連で上がってくる新しい音楽を聴いて自分のタイプのアーティストを探す。邦ロックが主ではあるが、洋楽も聞くし韓国のヒップホップも聴く。1回始めると4-5時間はそんなことを繰り返してるし、時間のことを考えなくていいなら本当に文字通り永遠に新しい音楽を探して、たまには好きな懐かしい音楽を挟まながら、ずっと音楽を聴いているだろう。


この前の日曜日は、なんとなくベッドから出れなくてずっと横になりながら昼寝をしたり音楽を聴いたりしていた。

その日もいつものようにYouTubeで新しい音楽を漁りながら、ふと、「もう今年25歳になるのに、大学生が聴くような“エモい”歌を聴いていてもいいのか?」という考えが頭をよぎった。

流石に、キスマークがどうとか、朝帰りがどうとか、そんな歌詞に「わかる!」「ほんとそう!!」なんて深く共感はしないが、私が好きな音楽のメロディと声がどうしても大学生が好きな層からまだ抜け出せないみたいだ。そのせいで、歌詞は沼にハマってる女の子、もしくは元彼が忘れられない女の子視点であることが多い。


好きな曲調とは言いつつ、歌詞を聞いて小っ恥ずかしくなる自分がいて、好きな歌を探しながら、曲にも年齢制限があるんだと感じた。

いつまでも元彼がどう、セフレがどうなんて歌を聴いてるわけにはいけないし、ラインの返信がどう、タバコの匂いがどう、そんなことばかり気にしては生きていけない。

大人になった。というか、まだなってはいない。今まさに、大人になってしまいかけている。あぶない。


私も19歳の頃、沼にハマり失恋ソングを死ぬほど聞いていた。今のようになんとなく曲調がすき!なんて軽い感じではなく、歌詞に全力で共感しながら聞いていた。失恋ソングに飢えていた。その時は、世界で私だけがしんどい恋をしているのかと思っていたが、歌詞を聞いて「あ、意外とこの感情はみんな経験するものなのか」と安心したりもした。

クリープハイプ はバイブルだったし、ミオヤマザキ、大森靖子、yonigeが刺さる自分が好きだった。
(このラインナップを見て分かる通り、私はなかなかのメンヘラ気質だった。ただ、相手にこのメンヘラ感情を全てぶつける勇気もなかったので、特に相手には迷惑をかけない質のいいメンヘラだった。)


ちなみに、その時に特に私にドンズバに刺さった曲は、日向文の「秘密」だ。好きな人に別の人の影がある、そんな恋愛をしている人にはぜひ聴いてほしい。


今度また私の失恋の話もしたい。私の記憶が薄くなる前に残しておきたい。もう歳を取ったら同じ熱量で人を好きになったり、好きになった人に同じように時間を割いたりできないかもしれない。だから10年後の私のためにもいつか書きたい。


大失恋を経て(たった6ヶ月にも満たない片思いだったが、私にとっては人生で初めてしんどいくらい人を好きになった大恋愛だった)、22歳、大学4年生になると私は大人びたくなった。

ちょうどその時に仲良くしていた2つ年上の男の友達がビートルズと銀杏BOYZを教えてくれた。


彼の聴く音楽は私の聴く大学生邦ロックとは全然違って、魅力的だったし、渋くてかっこいいと思った。


その時から、私の朝の準備のお供はビートルズになったし、散歩のお供はボブディラン、お酒のお供は銀杏BOYZになった。

勿論音楽自体も好きだったが、大人の真似っこをしてる自分が好きだった。

私は顔が幼いこともあって、渋い趣味があることでギャップが生まれて同年代の子たちより大人に近づいてる気がした。
可愛いよね、その考え自体が子供で。

でも勿論自分の雰囲気作りのためだけに音楽を聴いていたのではなくて、ビートルズの「ストロベリーフィーズフォーエバー」がジョンレノンが幼少期に遊んでいた孤児院の名前から来ていることも調べたし、ビートルズをこよなく愛する銀杏BOYZのボーカル峯田くんが描いた小説「いちごの唄」の本も読んだし映画もみた。あと、京都のここのバーでストロベリーフィールズフォーエバーのカクテルも飲んだ。(これはこのバーを紹介したいだけ。)



にわかの割には、本当に音楽もアーティストも好きだった。



でも、今思えば、変に背伸びせずにせっかくの20代前半、大学生の時期にしか聴けないような、今思えば痛くて寒いような青春ソングや恋愛ソングをもっともっと聴いとけばよかった。

その時にしか持てない感情、没入できない日常に、もっとスカさずのめり込めばよかった。

もう私は今年25歳になるが、晴れてアラサーの仲間入りを果たしてしまい、大学生の聴くような曲を聴いてる自分も恥ずかしいし、一歩引いて聴いてしまってるのも悲しい。


音楽を聴くことだけじゃなくても、その時は流行りに乗るのがダサく感じて嫌だからって避けてても、その歳でしか楽しめないことが沢山あったことに、後になってから気づく。本当に迷惑なことに。いつも後から。


私が好きな爪切男さんが、過去に「ビートルズを知らない女の方がいい女」みたいなコラムを書いたらしい。


コラムの内容は見てないのでこれは私の勝手な解釈だが、確かに大人ぶって下手にビートルズなんて聴いてる女の子より、無理に背伸びせずにその時その時に流行ってる歌、没入できる歌を聴いているこの方がいい女なのかもしれない。その年代にしか経験できないことを経験して、いづれ自力でビートルズまで辿りつく女がいい女なのかもしれない。

私もいづれは自力でオールドポップに辿り着きたい。もしくは、全然違うところに辿り着くかもしれない。それもそれで渋くていい。



人生、今が1番若い。
まだ25歳になるまで約半年残っている。

その間に大学生の頃に出会えなかった素敵な大学生ソングを沢山聴いてもう後悔のないようにアラサーになりたい。

最後の20代前半、ギリギリの若者に入れると思う。
最後の半年で全力で青春したい。


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