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稲盛和夫の実学 稲盛和夫

去年の年末に稲盛氏の主催する盛和塾が終了するという話を聞いた。
稲盛氏自身87歳というご高齢ということで身を引くという話ならわかるのですが、盛和塾自体を終了させてしまうということが一番衝撃でした。
もともと一代で終わらせるとおっしゃっていたようだが、それを貫く姿勢は流石としか言えない。

そんな稲盛氏の経験則から導き出された会計原則が本書で語られている。細かいところは下記に備忘録として記すので省略するが、会計をここまで重要視して経営に取り組んだ経営者は私の知る限りではいない。
彼の言葉で、会計の数値は飛行機のコックピットにある計器盤の数値と同じで、パイロット(経営者)により早く、正確な数値を報告すれば必ず経営は成功する。といった趣旨の言葉が非常に印象に残っている。


本書では大きく分けて3つの章で構成されている。その中でも真ん中の章にあたる経営のための会計学について、好きなところを2点ピックアップしたいと思う。
まず、一つ目がキャッシュベース経営の原則。
「儲かったお金はどこにあるのかというのは、経営者が決算書を見るたびに常に胸に呼び起さなければならない大切な問いかけである。」
会社がいつ倒産するのか?売上が減った時か?赤字を出した時か?もちろん違う。会社が倒産する時は会社の資金が尽きたときとなる。こんな当たり前のことが意外と知られていない。少し話は脱線してしまうが、キャッシュベースで経営するために必要な知識を僭越ながらさせていただこうかと思う。
何期も赤字を継続的に出しているのになぜあの会社は潰れないのか?売上が増えているのになぜ倒産するのか?なぜ黒字なのに倒産するのか?どうやって把握すればいいのかは、包括的に見るには、キャッシュフロー計算書を読むことだ。一期が終わって会社のキャッシュがどう増えたのかどう減ったのか一目で確認できるはずだ。より具体的に見るのであればCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)という指標を見てみると、買→在庫→売のサイクルが見えてすっきりするだろう。

二つ目はガラス張り経営の原則だ。
社員が会社全体の状況やめざしている方向と目標、また遭遇している困難な状況や経営上の課題についてしらされていることは、社内のモラルを高めるためにも、また社員のベクトル(進むべき方向)を合わせていくためにも不可欠なことである。社員の力が集積されたものが会社の力なのであり、社員の力が結集できなければ、目標を達成することも、困難を乗り切っていくこともできない。そのためには、トップに対してだけでなく社員に対しても経営を限りなく透明にすることが最低限の条件となる。
とある通り、無駄に財務状況や、損益状況を隠そうとする経営者が多くいると感じる。だが、経営は一人ではできないし、自分の行ってきた業務の成果がどうなっているか教えてもくれなければ、モチベーションも続かない。なるべく開示できる情報は開示するかしないかだけでも、仲間の理解が変わってくることを理解してほしいと思う。

以下備忘録
経営者は、自社の経営の実態を正確に把握したうえで、的確な経営判断を下さなくてはならない。そのためには、会計原則、会計処理にも精通していることが前提となる。
また中小、零細企業の経営者の中には、税理士や会計士に毎日の伝票を渡せば、必要な財務諸表は作ってもらえるのだから会計は知らなくてもいい、と思っている者もいる。経営者にとって必要なのは、結果として「いくら利益が出たか」、「いくら税金を払わなければならないのか」ということであり、会計の処理方法は専門家がわかっていればいいと思っているのである。さらに、会計の数字は自分の都合のいいように操作できる、と考えている経営者さえいる。

売上を最大に、経費を最小に
売上を増やしながら経費を減らすというのは、生半可なことでは達成できることではない。そのためには、知恵と創意工夫と努力が必要となる。利益とはその結果生まれるものでしかないのである。
値決めは経営
私は「商売というのは、値段を安くすれば誰でも売れる。それでは経営はできない。お客様が納得し、喜んで買ってくれる最大限の値段。それよりも低かったらいくらでも注文は取れるが、それ以上高ければ注文が逃げるという、このギリギリの一点で注文を取るようにしなければならない」ということを社内の営業部門に対して繰り返し強調した。顧客が喜んで買ってくれる最高の値段を見抜いて、その値段で売る。その値決めは経営と直結する重要な仕事であり、それを決定するのは経営者の仕事なのである。つまり、売上を最大にするには、単価と販売量の席を最大とすれば良い。利幅を多めにして少なく売って商売をするのか、利幅を抑えて大量に売って商売をするのか、値決めで経営は大きく変わってくるのである。値決めで失敗すれば、あとで取り返しがつかないこともある。あまりにも安い値段を設定してしまい、どんなに経費を削減しても採算を出せない場合もある。また、高い値段をつけすぎて、山のような在庫を抱えて資金繰りに行き詰まるケースもある。このように、経営において値決めは最終的に経営者自らが行わなければならないほど重要な仕事なのである。
経営のための会計学
1. キャッシュベースで経営する【キャッシュベース経営の原則】
「儲かったお金はどこにあるのか」というのは、経営者が決算書を見るたびにつねに胸に呼び起さなければならない大切な問いかけなのである。
2. 一対一の対応を貫く【一対一対応の原則】
要諦は、原則に「徹する」ことである。事実を曖昧にしたり、隠すことができないガラス張りのシステムを構築し、トップ以下誰もが「一対一対応の原則」を守ることが、不正を防ぎ、社内のモラルを高め、社員一人一人の会社に対する信頼を強くする。
3. 筋肉質の経営に徹する【筋肉質経営の原則】
企業の使命は、自由で創意に富んだ活動によって新たな価値を生み出し、人類社会の進歩発展に貢献することである。このような活動の成果によって新たな価値を生み出し、人類社会の進歩発展に貢献することである。このような活動の成果として得られる利益を私は「額に汗して得る利益」と呼び、企業が追及すべき真の利益と考えている。
4. 完璧主義を貫く【完璧主義の原則】
曖昧さや妥協を許すことなく、あらゆる仕事を細部にわたって完璧に仕上げることをめざすものであり、経営においてとるべき基本的な態度である。
5. ダブルチェックによって会社と人を守る【ダブルチェックの原則】
間違いの発見やその防止のためのテクニックであると考える人もいるかもしれない。しかし、このような厳格なシステムが必要な本当の目的は、人を大切にする職場をつくるためなのである。複数の人間や部署がチェックし合い確認し合って仕事を進めていく。このような厳しいシステムが存在することによって、社員が罪をつくることを未然に防ぎながら、緊張感のあるきびきびとした職場の雰囲気が醸し出されるのである。
6. 採算の向上を支える【採算向上の原則】
「アメーバ」が独立した一つの経営責任単位であると同時に、決して単独で経営できるものでなく、他のアメーバと結びつき合って初めて経営できるということ、つまり、会社の不可分の一部をなしているということを示しているのである。誰もがより大きな全体の中で支えあい共存共栄しているという考え方がアメーバ経営の根底には存在する。アメーバ経営の目的は、アメーバ同士を激しく競争させ合うことにあると理解されやすいが、これは誤解である。アメーバ経営とは、限られたパイの奪い合いではなく、アメーバ同士がともに助け合い、また切磋琢磨し合う結果としてともに発展していくこと、そして、アメーバ間の取引が市場ルールでなされることにより、社内の取引に対しても「生きた市場」の緊張感やダイナミズムを持ち込むということを目的としているのである。
アメーバ経営においては、主役は最小の経費で最大の売上をもたらすよう知恵を絞る「人」の集団であり、焦点があてられるのはそのアメーバが全体として生み出す付加価値なのである。一方、標準原価計算による原価管理システムにおいては、主役は製品「モノ」であり、焦点があてられるのは個々の製品の工程別の原価である。
7. 透明な経営を行う【ガラス張り経営の原則】
社員が会社全体の状況やめざしている方向と目標、また遭遇している困難な状況や経営上の課題についてしらされていることは、社内のモラルを高めるためにも、また社員のベクトル(進むべき方向)を合わせていくためにも不可欠なことである。社員の力が集積されたものが会社の力なのであり、社員の力が結集できなければ、目標を達成することも、困難を乗り切っていくこともできない。そのためには、トップに対してだけでなく社員に対しても経営を限りなく透明にすることが最低限の条件となる。


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