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白庭ヨウと

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今の私を作った素敵な人々事々について書きました。かなり私的な記事なので気になった方のみご覧ください。
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#あなたに出会えてよかった

恩送り

恩送り

 父のいない私にはそれを補うように大人の人々との関わりが多かった。私はだから自分の人生を語るとき、家族だけを取り上げるのでは到底足りず、もっと先へ手を広げ網を手繰らなければならない。今日は私の恩師の一人を紹介したい。ここでは彼の名を“高山”と呼ぶことにする。

高山さん 高山さんは私が小学校、中学校に通っていたときのランニングクラブのコーチである。当時中学校には陸上部がなかったので部活終了後に近く

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“アダチさん”はいつも

“アダチさん”はいつも

まえがき 直近の二回を私の両親の紹介に費やしたので、今回は少し私と距離を置いて書いていこうと思う。これは私の職場で名物となっているお客さんのある一日の記録である。

“アダチさん” 通称“アダチさん”(本名は当然知らない)は70に入ったかどうかという年齢の男性である。薄緑色をした作業服にフード付きの上着をいつも着ている。上着は羽毛入りをうたったふんわりしたタイプではなく、薄いポリ生地の間に綿を詰め

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バケモノの“母”

バケモノの“母”

 私の町で私の母のことを知らない人間は少ない(と思う)。母は誰かと尋ねられ私が答えると大抵「ああ、〇〇ちゃんの」と笑いかけてくれることが多いからだ。(もちろんこれはオウム返しが可能で、そうでも言わないと気まずくなるからかもしれない。田舎で気まずい雰囲気を作るのはご法度だ。狭いコミュニティで暮らしていくには角を立てないことが肝要なのだ)

 特段偉業を成し遂げたわけでもない母が少しばかり有名なのは恐

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元父が遺したもの

元父が遺したもの

前置き アーティストと呼ばれる人々は一般的にミステリアスであった方が良いと言われる。私もそれには賛成で、彼らには私たちと違う世界で生きていてほしい。炊事洗濯は魔法的に、行きつけのバーとかがあったりして「ぐるなび」で検索なんてもってのほか、病院に行って医者の指示をぺこぺこ頭下げながら聞いているなんて考えたくもない。
 (かなり個人的な要望が多かったが)ともかくアーティストは謎めいていることでその非現

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