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「多様性」って言葉に身構えなくていい~『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』~

こんばんは。師走になりましたね、、

最近、大学の講義室では暖房が導入されたのですが、空気が悪いところが苦手な僕は本当に死にそうです。マジで。

そもそも朝寒すぎて外出たくないし


そんなわけで読書の冬。

今月1冊目はブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』。

最近はビジネス本を読むことが多かったので、小説を息抜きに読もうと思っていたところで本屋さんで見つけ、ビビッときて購入。

お察しの通り、CDはジャケット見て買っちゃうタイプです。笑


著者のブレイディみかこさんは、福岡の高校を卒業後にイギリスへ渡り、保育士の資格を取得なさったという、なかなか聞きなれない経歴をお持ちの方。

もともと子どもが嫌いだったのに、保育士の資格を取るまでの大転換が起こったというのだからまた面白い。

この本は、そんな著者の視点から、息子さんやその友人、家族との出来事を描いたノンフィクション小説として今注目を集めています。


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多様性と聞いて、何を思いますか?


ところで、「多様性」という言葉を聞いて、あなたは何を思いますか?


日本は比較的、民族的な性質が似ている人が多く、僕自身「多様性」と聞いても全くピンと来ません。普段の生活で意識することもそう多くありません。

この小説ではイギリスでのリアルな人種、宗教の多様性が随所に反映されています。


「なんだ、イギリスか…」


と思ったあなた。

本当に「多様性」は外国だけの問題で、日本には関係ないことだと言い切れるでしょうか?

多様性を端的に表せる例として政治が一番わかりやすいと思ったので取り上げてみます。


「保守と革新」、「右翼と左翼」といったように、政治の対立は二項対立で考えられることがあります。

では、現実に日本で起こっている問題はどうでしょうか?

1997年ごろにイデオロギーの対立がなくなって、共産主義や社会主義といった対立の枠組みが意味をなさなくなり、政党が分裂してくると、実は同時に無党派層が急激に増え、ほぼ現在と変わらない水準にまでになります。意見に多様性が出てきた一方で、それを見極める私たちの目が追い付かなくなっていると言えます。


多様性がないと「無知」になる?


こんな話をすると、「なんだ多様性って面倒くさいな」って思いますよね。

僕も思いました。

そんな現状を見透かすかのような小説の次の会話が、胸に刺さります。


「どうして多様性があるとややこしくなるの?」

「多様性ってやつは物事をややこしくするし、喧嘩や衝突が絶えないし、そりゃないほうが楽よ」

「楽じゃないものが、どうしていいの?」

「楽ばっかりしてると、無知になるから」


そう。無知になってしまう。

政治に限らず、いろいろなバックグラウンドを持つ人がいて、いろいろな考えを持つ人がいて、これから多様な考え方がどんどん認められる時代を迎えると思います。

でも、ただ意見が多様になればそれでいいわけじゃない。


私たちは、その意見の広がりを受け止める責任があると思うのです。

いろんな意見がないと選択肢は減ってすこぶる楽になるのでしょうが、それを知ろうとしないと思考停止して、無知になってしまう。



では、無知にならないためにはどうしたらいいのでしょうか。。。

その答えは、エンパシーだと小説からは読み取れます。

小説では、ほかの立場を理解する能力(エンパシー)のことを

「誰かの靴を履いてみること」

と表現しています。美しい表現ですね、、、


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無知にならないために大切なこと


多様性がないと無知になるのは分かった。

他者の立場を理解することが大切なのも分かった。


でも僕がこの本を読んで最も大切だと感じたのは、「自分の意見を持つことの大切さ」。

他人の意見や自分の経験から自分の意見を作っていくことは、他人の靴を履く前の段階と位置付けられるのかな、という気がしています。

そしていろいろな意見があることを知れば知るほど、「いろいろあって当たり前」という社会や価値観が実現できるんじゃないかな。


もっと抽象化して言うと、他人を知るためには自分を知ろうとも言えるかも。


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まとめ


例に政治を使ったことで、少しややこしい話になってしまったけど、多様性のタネはきっと日常の小さなところにも転がっていると思います。うどんが好きかそばが好きか、みたいに笑

そして、多様性を理解する第一歩は、自分を理解すること。自分の意見を形成するために、これからもインプットやアウトプットの機会を大切にしたいものです。


今回読んだ小説『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、そういった深いところまで考えさせてくれる内容でありながら、親子の会話を中心としていてスラスラと読めてしまう傑作だと思います。

書評というほどでもありませんが、このnoteで興味を持ってくださった方は、ぜひ読んでみてください!



『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)

ブレイディみかこ





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