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二足歩行という、ヒト流のロコモーション。 #Hutr Ⅲ 進化心理マガジン「HUMATRIX」


" 四本足はよい、二本足は悪い。"
───ジョージ・オーウェル『動物農場』


歩くことの不思議


サピエンスたちよ、
自分がどう歩いているのかを観察してみよう。

一本の脚は、身体を支える柱になる。もう一本の脚が、振り子のように背後から振り出される。チンパンジーのように木を掴めなくなったヒトの踵はそれでもしっかり大地を掴み、それからつま先へと体重を移動させていく。親指が地面を後ろへ蹴り上げると、不安定ながらバランスを保った腰は二本の脚を交代させ、もう一度同じことが起こる。

サピエンスは、ふだん自分がどう歩いているのかを意識することはないし、それは鳥がどう飛んでいるのかを意識することがないのとおんなじだろう。

二足歩行は、当のサピエンスたちにとっては「自然なこと」で、不思議でも奇妙でもなんでもないらしい。本能的盲目というやつだ───本能に突き動かされている生物自身は、自分がとっている本能由来の行動を奇妙には感じない。進化心理学は〝ナチュラル=シーム=ストレンジ〟の感覚を用いてこれに対抗する。

奇妙なことに(そしておそらく自然なことに)サピエンスがデザインする動物キャラクターは、ミッキーマウスもハローキティもスヌーピーもくまのプーさんもバックスバニーもマイメロディもトトロもちいかわも、当たり前のようにみな二足歩行をしている。また、サピエンスたちが空想する宇宙人も、たいていの場合、E.T.のように二足歩行をしている。はたして鳥が人類のような知能を持ってキャラクターをデザインしはじめたら、どのキャラにも翼をつけるのだろうか?それくらい奇妙なことをしていることに人類自身は気づかない。

二足歩行は不思議だ。



#07
ヒト流のロコモーション



ロコモーション/移動運動は、動物の基本だ。


────その名前からして "動く物" である動物は、A地点からB地点へと、何らかの方法を使って移動する手段を持たなくちゃならない。だからどんな動物もロコモーションのための運動器官を発達させている。

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