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「夢」に殺される未来を回避せよ──鬱が伝えるメッセージ|Depth #07 (連載『鬱の進化』第七回)


#08 夢を諦めるな!


あなたには人生の時限爆弾の音が聞こえるか?

前回の記事でも紹介した、2022年アカデミー賞にノミネートされたNetflix映画『チック、チック・・・ブーン!/Tick, Tick…BOOM!』は夢に足掻く青年の姿を描いた実話に基づくヒューマンドラマだ。


主人公ジョナサン=ラーソンは、ミュージカル劇作家を目指して下積み中のアマチュア作曲家だ。大きな夢を描き、サクセスストーリーを信じ、自分には才能がある、かならず夢を叶えられると期待に胸を膨らませてやってきたニューヨーク。

だが現実は、30歳の誕生日を目前に控えているというのに、いまだにアルバイトのウェイターだ。夢の奴隷となった者たちの生活は苦しい。家賃を払うのもぎりぎりで、電力会社からは電気代不払いによる送電停止の警告通知が届いている。



映画のタイトル 「チック、チック………ブーン!」とは、時限爆弾が1秒1秒チクタクと音を立て、ついには爆発するまでの音を表している。爆発?───夢を追って努力し続けてきた者がついに売れて爆発的ヒットを飛ばすのか? いいや・・・・そんな未来もあるかもしれないが、現実的には、つまり大多数の者にとっては、それは<時間切れ> を意味する死の音だ。

ジョナサンの友人たちはみな、<時間切れ> が迫ることに気づいて人生の方針転換をしていった。正社員としてまともな企業に就職するということだ。かつて同じブロードウェイの舞台を目指して夢を語り合った仲間たちは、一人ひとりと離れていき、ジョナサンだけが孤独に夢を追う。

この極貧生活はいつまで続くのか?
挫折の恐怖に襲われる日々。
才能の有無を己に問い続けるジョナサン。
夢が牙を向く。
夢に殺される────。


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