古い日記2
ハバナ旧市街へ向かうtaxiの車中
さっそくカメラを構える
対向車に目をやると
やたらと丸みを帯びたカラフルな車ばかり走っている
かつてキューバはアメリカの傀儡国家だった
カリブ海に浮かぶキューバは
フロリダからわずか130kmしか離れておらず
物資の行き来もさかんだったと聞く
しかしキューバ革命以降
社会主義を是としないアメリカはキューバに対し経済封鎖を行い
それは現在も続いている
そのため最近まで新車や新しいパーツを輸入することがままならず
1960年代以前のアメ車が未だに現役で走り続けているのである
物珍しさと
愛くるしさから
ついつい車ばかりに目がいってしまう
俺「古い車ばっかりだ。けどとてもかわいいね。」
と、おじさんもうなずく
最近輸入されたと思われるプジョーのtaxiの後部座席
おじさん、俺、そしてもうひとり日本人女性
おじさんの名前はジョージ 年齢はたしか55歳くらいだったと思う
日本人女性はマユミさん
入国審査を待つ列で見かけて声をかけた
日本人ほかにいなかったからね
彼女は酒と葉巻を愉しむためだけにキューバを訪れたと言っていた
職業は某有名ホテルのバーの店員さん
本当に好きなことを職業にして
本物のダイキリやコヒーバを嗜好するために
キューバまで足を運んでしまう
そんな女性
これから何人かの日本人と出会うが
わざわざキューバくんだりまで行ってみようと思う日本人は
どこかぶっとんでで 皆とても魅力的だ
3人を乗せてtaxiはマユミさんの滞在するホテルがある
ハバナ旧市街へ
夕食の約束をしてからマユミさんを降ろし
ジョージとメリアハバナホテルへ向かう
チェックインを済ませ 部屋へ案内される
扉が開けられると5ツ星だけあって(キューバでは)すごく豪奢な作り
なにより窓の外には青く輝く空とカリブ海 すごいぜジョージ!!
興奮して振り返れば
猿みたいにはしゃぐ俺を見て微笑むジョージと巨大なベッドが、、、
一台
、、、、、やべっ
でもこんないい部屋にタダで泊まらせてもらうんだから
同じベッドで寝るくらい我慢しようか、、、
もはやジョージがゲイであることを疑わなかった
しかし
ジョージはちょっと待ってろと言い残し部屋を出ると
帰ってくるなり「部屋うつるぞ」
と言ってツインの部屋へ移った
どうやら俺の身体が目的ではなかったらしい
ごめんジョージ
正直にゲイかと思ったと言うと
「お前となんか寝たくないよ」
と、またクシャクシャの顔で言われる
この瞬間からジョージのことを
友でありカナダ人の父と思うようになる
少し休んだ後
ジョージのいとこであるレォラに会うため外出する
10年ぶりの再会 突然の訪問
ジョージとレォラは
歓声と 抱擁と キスと 涙で
再会を喜びあった
俺も少し涙ぐむ レォラの義母のおばあちゃんも涙ぐむ
言葉分からないけど おばあちゃんと二人
よかった、本当によかったと手をとりあう
部屋のテレビでは ハイジが放送されていた
ひととおり興奮が収まった後
ジョージがお土産のスパムやらなにやらを渡すと
久しぶりにお肉食べれるってまた泣いて
神に感謝をしていた
キューバ人は感情表現豊かだ
いや、、、
日本人の感情表現が乏しいのだろう
お土産でいちばん喜んでいたのがフォークだった
レォラの家は4人家族だが
フォークは歯が欠けたのが3本あるだけだった
キューバって国は圧倒的に物が少ないんだ
あったとしても とても買う余裕なんてない
キューバ人の月収の平均は10~20ドル
社会主義体制を維持するために二重経済が敷かれている
この辺は後にまた説明しよう
レォラの友人の車(アメ車!!)で
マユミさんのいるホテル アンボス・ムンドスへ向かう
このホテルはアーネスト・ヘミングウェイが
執筆活動をしていたホテルとして有名だ
ホテルのロビーで待ち合わせしたのだが
40分ほど遅れたので、BARでお酒飲んでたマユミさんは
ナンパされてました
日本女性は外国人男性にモテる キューバも例外ではないようだ
レォラに案内されてお勧めのレストランへ
店の前でレォラと別れる 彼女は家でおばあちゃんとスパム食べるって
店内に入るとアイスクリーム屋のように食材が並ぶ冷蔵庫があり
食べたい食材をチョイスしてから席につく
壁中に有名人のサインが キューバ式は壁に直に書く
料理が運ばれてくる
俺はチキンを選んだのだが 味付けがシンプルでとてもうまい
それとキューバ料理ポターヘ
おしるこみたいな見た目なんだけど、しょっぱい
脳みそが視覚的に甘いと判断してるから
違和感がある(キューバ生活の最後まで直らなかった)
まぁまぁおいしいけどね
キューバではレストランの中にミュージシャンがいて
演奏を聴きながら食事をたのしむことができる
僕らのテーブルの前にも来た
リクエストはあるか?と聞かれたので
ブエナビスタソシアルクラブしか知らないと言う
すると「チャンチャン」という一番有名な曲を演奏してくれた
とても感動した
キューバで生活することは音楽とともにあることなんだと
俺はキューバにいるんだと
急に実感が湧いてきた
良いものには賞賛と チップを(10CUC)
お酒も入りほろ酔いで
マユミさんをホテルへ送っていく
アンボス・ムンドスの前までくるとマユミさんが言った
「屋上に気持ち良いカフェがあるからもう少し飲みませんか?」
この人は本当にお酒が好きなんだなぁと思う
たしかに興奮と緊張の入り混じった素晴らしい夜を
すぐに終わらせるのももったいないのでBARへ行って飲みなおし
1時間ほどで引き上げる
帰りのtaxiの車中
自分がまだキューバに丸1日もいないことに驚く
それほどに新鮮なことの連続だった
この国では退屈しそうにない
そう思うとまたニヤリと笑いがこみあげてきたのだった
そういえばジョージは
イビキうるさいからって言って俺がシャワー浴びてる間に
ベッドを部屋の端と端に移動させてた
出会ったばかりの30も年上の友人は
とってもオチャメでいい人みたいだった
続く
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