新護憲神奈川 主体的平和戦略 ⑥

〈日米安保条約10条を踏まえて、米軍の日本からの段階的撤退と中国・朝鮮民主主義人民共和国・ロシアそしてアジア諸国との外交関係改善を目指して!〉


 
日米安保条約の本質とその今日的状況
米軍基地が日本にあるのは、日本を守るためだ、と臆面もなく言う人がいる。
そういう建て前を多くの日本人に納得させるのも重要なプロパガンダであろう。それに加担してきた政治家・評論家・マスコミ関係者が如何に多かったことか!
端的に言って、アメリカは、その世界戦略のために、戦勝国として日本を十二分に活用してきたのである。
 朝鮮戦争時には、基地を十分活用しつつ、日本国内の治安維持のために自衛隊をつくらせた。冷戦時代に向けて北海道・東北に米軍基地・自衛隊基地を重点的に配備しソ連に対した。ベトナム戦争時も日本の米軍基地をフル稼働させた。日本の著しい経済成長で不利が生じれば貿易・通貨制度を使って抑え込む。冷戦が終われば、安保条約の「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する」という「極東」の解釈を拡大解釈し、世界規模に拡げた。
60年安保改定時の大規模な日本国民の反対運動を考え、その後は安全保障協議委員会(2プラス2)方式で乗り越えてきた。
今や、自民党政府が曲がりなりにも維持してきた「軍隊を持たない、専守防衛の国」という姿勢をかなぐり捨てて、日米軍事同盟の強化を前面に出して、合同軍事演習、戦争時の指揮系統の整備まで進められている。
 
 アメリカは、自身に都合のいい地位協定を一切変更せず、対中戦争を想定し、南西諸島・自衛隊をより効果的に活用しようとしている。それを承知で日本政府は安保関連3文書を改定(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)し(2022年12月閣議決定)、今国会を強引に乗り切ろうとしている。
 
 私たちは当然、それらを阻止すべき闘いを展開しているのだが、我が「日本国民」の多くは真相に目を向けず、日米政府のプロパガンダに吞み込まれ、「拒否」を明言できない。政権党も野党も、安保強化阻止、軍事態勢増強拒否を明確に表明できる状況にない。共産党は日米安保解消を基本的に打ち出しているが、それが政治活動として展開されているとは思えない。多くの場所でその態度を表明しているとは思うが、党員を含め、国民的な運動を創り出す努力をしているとは思えない。基地での多くの闘いに有効打は撃ててない。
 
日米安保は今や日本の憲法9条を根底から侵食している。
自民党・政権はアメリカの意向に応えて「9条改憲」を打ち出したあと、3分の2の議席を取りながら、思うように事態は進行できていない。そこで集団的自衛権を容認する、憲法違反かつ今までの政府見解を覆した「安保法制」を強行に成立させ、今日の状況を創り出している。
 
日米安保に拘束されない日中関係の構築を!
 日米政府は歩調を合わせ、中国の政治的動向が覇権主義の表現であり、世界的脅威になりつつあると、多くの場面で批判している。
近い将来、中国は経済的にアメリカより上位に立ち、軍事的にも拮抗しつつある中でアメリカの世界での相対的な影響力が衰退しつつある。一強アメリカの世界支配は終焉を迎えつつある。その危機感が日米安保体制を同盟軍として、今までより濃厚に活用させようという圧力を生み出している。
 単純に言って、経済的関係から言えば、日本にとってアメリカも中国も大切な経済的交易国である。この二大国の対立を拡大させるのではなく、縮小させることこそ日本の役割ではないのか。
 日本と中国の間で確認されていることは、
①    日中両国は、「一衣帯水」の間にある隣国であり、長い伝統的な友好   の歴史を有する。
②    日本側は過去において、日本側が戦争を通じて、中国国民に重大な損害を与えたことにつ いての責任を痛感し、深く反省する。
③   台湾は中華人民共和国の不可分の一部である。
④   日中両国は互いに覇権(武力で問題を解決しようとする)国家とはならない(1972年日中共同声明)。
尖閣諸島問題を両国政府は取り上げないのが比較的賢明だと考えています。このような問題は一時棚上げにしても問題はないし、10年間ほうっておいてもかまいません。将来必ず双方ともに受け入れることの出来る問題解決の方式を探し当てるでしょう(1978年日中平和友好条約批准時の鄧小平発言)。

このような前提に立って、日本は中国と対等な外交を推進すべきである。 
 
危機を煽り、南西諸島での臨戦態勢づくりを急ぐのは、これらの趣旨に反する。アメリカは、日中間の取り決めに対して口をはさむ立場にはない。ただ、安保条約を利用して力づくで日本の軍部増強を強いて、自国の利益を追及しているだけである。
日中間の友好関係は民間団体だけでなく、今までの政府の取り組みの中にも、政党(例えば労働党)にも現存する。政府がアメリカの意向だけに流されず、今後の日中友好関係構築のための構想を立てて、真摯な外交を展開することが大切である。それをアメリカが妨害するのであれば、安保条約10条を前面に出して条約解消の姿勢を示して闘うべきである。
 
 
朝鮮民主主義人民共和国との国交回復
昨年、朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)から発射されたミサイルが頻繁で大騒ぎをした。大気圏を飛んだものを日本上空を飛んだとか、Jアラートを鳴らして危機感を煽るとか、「北朝鮮脅威」のキャンペーンが意図的に張られた。
共和国が日本の敵であるというプロパガンダである。米韓、米日韓が共和国を攻撃してきた時の、在日米軍への反撃を目指さざるを得ない、という共和国の主張や日本国民を敵とは規定していないという姿勢ぐらいは同時に報道してもいいと思うが。
ミサイル開発やミサイル攻撃を肯定はしないが、そのような行動を起こさせている原因のひとつに日本の安保体制、自衛隊強化、合同軍事演習があることは事実である。
双方の主張を正面からぶつけ合い、軍事力でない解決方法を探る努力が双方に問われていると思う。ミサイルの開発、発射訓練をする必要のない条件をどう創っていくか、が課題である。
2002年の日朝平壌宣言では、1992年以来中断していた国交正常化交渉を再開し、早期に国交正常化を実現すると明記した。日本は過去の植民地支配を謝罪し、今後経済協力を実施すると態度表明した。
しかし、拉致問題の処理が双方納得いく形で決着できなかった。また、共和国が2003年に核不拡散条約(NPT)脱退宣言を表明した。核問題の平和的解決を目指して、日本・共和国・韓国・中国・アメリカ・ロシアによる六カ国協議の進展が合意されたそが、その後関係改善されない。
この平壌宣言は実践の過程に進んでいない。日本が、「国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらない」という文言に忠実に対応していたらどうなったか、いやこれから「互いに脅かす行動をとらない」とは、どう対応することかを、考えるべきである。
 
共和国が休戦状態にあるアメリカとの関係に終止符を打ち、アメリカの軍事的脅威を取り除きたいことは明白である。そのための交渉はいつも実を結ばず、毎年、共和国の眼前で軍事演習を強化させつつある現実を停止させるために日本は何をしてきたのか。日米安保強化でその脅威をより拡大してきたのではないか。
 
共和国は日本がかつてのように植民地支配をするために武力攻撃をしてくるとは考えていないだろう。だが、日本の米軍基地からの攻撃は十分意識している。
共同軍事演習に、横須賀から、原子力空母が出動する状況、自衛隊が共同行動をしている実態は、共和国の防衛体制の強化につながることは至極当然だと思う。
双方が相手の挑発と批判をしあっても事態の打開にはならない。
 
日本が朝鮮半島問題に介入しない態度を明確にして、米軍の出動を拒否する姿勢を示すことによって、始めて平壌宣言の主旨を活かせる。米軍の共和国に対する敵視が変わらず、軍事的脅威を与え続けるのみであれば、それを拒否する日本の姿勢が真に問われることになる。
この東北アジアに非核地帯をつくることは大切であって、共和国の核開発は食い止めると同時に、日本の立ち位置を明確にすべきである。すなわち、アメリカの姿勢が変わらなければ、日米安保10条を突きつける位の姿勢を示さなければこの地域の緊張関係は打開できないと思う。
 
日本の態度変更による国家的信頼がアジアの多くの国に、平和的関係を深める契機になると思う。アメリカと敵対関係を深めるのではなく、アメリカの世界戦略へ対する主体的な国家的反論として主張すべきである。これが今日の世界情勢にどう反映するか、国連の改革にどう反映するか、考察していきたいと考えている。   
 

➡次回は 主体的平和戦略⑦
<自衛隊の縮小と日米安保解消
自衛隊削減の具体的施策と防災省創設の構想>



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?