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解決できない問題を、解決できる問題に変える思考法

ウェデル=ウェデルスボルグ
講演家、企業幹部向けのアドバイザー。IESEビジネススクールでMBA、コペンハーゲン大学で修士号を取得。


1.問題を解決できない?その捉え方を変えてみる

問題にぶつかったとき、私たちはどうしてもその「問題」に囚われがちです。しかし、その問題自体を違う視点で見直すことで、解決の糸口が見えてくるかもしれません。本書「解決できない問題を、解決できる問題に変える思考法」では、その鍵となる思考法、「リフレーミング」を紹介しています。

「リフレーミング」とは、問題の捉え方を変えることで新たな視点を得て、ポジティブに問題を解釈する手法です。例として挙げられるのが、「エレベーターの待ち時間」の話です。あるビルでは、エレベーターが古く遅いため、長い待ち時間に対する苦情が相次ぎました。普通なら、エレベーターを速くする方法を考えがちですが、ビルの管理会社が取った対策は意外なものでした。エレベーターの横に鏡を取り付けたのです。すると、苦情は激減しました。人々は鏡に映る自分を見て時間を忘れてしまうのです。

この対策は、エレベーターの速度を変えたわけではありません。「エレベーターが遅い問題」を「待ち時間がうっとうしい問題」にリフレーミングしたことで解決に至ったのです。このように、問題に直面した際、多くの人は問題の分析に陥りがちですが、リフレーミングを用いることで全く異なる視点から問題を捉え直すことができます。

「リフレーミング」には主に2つの種類があります。1つ目は「フレームの探求」です。これは、問題の説明を深く掘り下げ、見落とされている側面に目を光らせることです。もう1つは「フレームからの脱出」で、元々の問題の枠組みを完全に抜け出すことを意味します。この考え方がなければ、問題の枠組みに縛られ続けることになります。

2.思考の転換で未来が変わる リフレーミングの力

私たちは日々、大小さまざまな問題に直面します。解決に奔走するあまり、的外れな方向にエネルギーを費やしてしまうこともしばしば。そんなときこそ、視点を変える「リフレーミング」の思考法が重要です。リフレーミングは、問題の捉え方を変えることで、解決の糸口を見つける手助けをしてくれます。そのメリットは計り知れません。今回は、リフレーミングのもたらす三つの大きな利点についてご紹介します。

無駄な努力を避け、的確な問題解決へ

問題に直面したとき、多くの人は即座に行動を起こそうとします。しかし、急ぎすぎることで、本質的な問題を見誤り、無駄な努力に終始してしまうことも。リフレーミングは、この悪循環を断ち切ります。最初に問題を再定義することで、「本当に解決すべき問題」を明確にし、効率的にゴールへ向かうことができるのです。

画期的な解決策を見つける

リフレーミングを行うと、新たな視点から問題を捉えることができ、よりクリエイティブでスマートな解決策が浮かび上がります。エレベーターの例を考えてみましょう。エレベーターの遅さが問題だとすると、多くの人は新しいエレベーターを購入することが解決策だと考えるでしょう。しかし、リフレーミングによって視点を変えれば、「待ち時間に何をするか」という発想に至り、エレベーター内にミラーを設置するなど、低コストで実現可能な画期的な対策が見えてくるのです。

判断力の向上

リフレーミングは、多様な選択肢を見つけ出し、判断力を飛躍的に向上させます。オハイオ州立大学のポール・C・ナット教授の研究によると、「複数の選択肢を検討すること」が問題解決において最も有効な手段の一つであることが示されています。例えば、「MBAを取得するか?」と考えるだけでなく、「起業するか、転職するか、現職に留まるか?」といった多角的な選択肢を検討することで、より良い判断が下せるのです。重要なのは、リフレーミングによって新たな選択肢を発見することです。

3.「フレームからの脱出」で見える新たな景色 リフレーミングの極意

問題解決に行き詰まったとき、私たちはしばしば同じパターンにはまり込んでしまうものです。そこで重要なのが、「フレームからの脱出」、すなわち「リフレーミング」です。しかし、どうすればフレームから脱出できるのでしょうか?その答えは「フレームの外側に目を向ける」ことにあります。

リフレーミングの第一歩は、最初の問題の捉え方を疑うことです。目の前の問題を細分化して考えるのではなく、心を「ズームアウト」させて全体像を見渡すことが求められます。このとき、自分に次のような問いかけをしてみましょう。

  • 現在の問題説明に欠けている要素は何か?

  • 考え忘れている要因はないか?

  • フレームの外側に注目すべきものはないか?

これらの問いに向き合うことで、視野が広がり、フレームの外側にある新たな視点が見えてくるのです。しかしここで注意が必要なのは、問題のフレーミングを「狭めすぎないようにすること」です。つまり、「ハンマーを手放す」ことです。

「ハンマーを手放す」とは、哲学者エイブラハム・カプランの「道具の法則」に由来します。例えば、「ハンマーを持った男の子は、目に入るものすべてを叩こうとする」と言われるように、私たちも「ハンマー」にあたる自分のお決まりの解決策に頼りがちです。しかし、その「ハンマー」が適切でなければ、解決には程遠いでしょう。

特に専門知識が豊富な人ほど、自分の得意な解決策に頼りがちです。これでは、目の前の問題に対して常に「ハンマー」で解決を試みてしまい、新たな視点を見落としてしまいます。本当に求められるのは、ハンマーを振り回すのではなく、「手放す」勇気です。

フレームから脱出することで、問題解決の可能性は無限に広がります。常に「ズームアウト」し、新たな視点を取り入れることで、今まで見えなかった解決策が見つかるでしょう。

まとめ

人は成功体験があると、自分の「ハンマー」が最高だと思ってしまいます。しかし状況は常に変わるものであり、自分のハンマーが通用するとは限らないのです。成功体験は参考程度にとどめ、見方や捉え方を変えていくことが求められるのです。

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