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没入し、音と一体化する:辻井伸行さん

2年前に、初めてピアニストの辻井伸行さんの演奏を観ました。

スウェーデン外交関係樹立150周年記念イベントの一貫で、ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団と辻井さんの競演でした。辻井さん出演の曲目はベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番《皇帝》

会場はとても和やかで暖かい雰囲気でしたが、演奏が始まると雰囲気は一変して、一気に辻井さんの世界が広がったのを今も覚えています。


辻井さんのピアノを弾く技術は圧巻で、指10本で演奏しているとは思えないくらいの技巧。瞬きすることを忘れるくらい見入ってしまいました。私は何かを生み出す人の手元をずっと見ることが好きなのですが、ピアニストはやっぱり素晴しい!特に、テンポが早くて技術がより必要な曲は本当に見ていて飽きません。

まずは辻井さんの技術に見入ってしまったのですが、次は辻井さんの演奏中の姿。身体を大きく動かしながら演奏するスタイルなのですが、笑みを浮かべながら身体を揺らしてピアノを弾く、その様子はとっても楽しそう!音楽が好きで、ピアノを弾くことが好きで、心底楽しんでいる様が伺えます。音楽と一体化している様子は神々しくもあります。まさに没入する人。

オーケストラの演奏(上品で透明感のある音の印象)と辻井さんの演奏が、指揮者により素晴らしいハーモニーを奏でる時間は極上でした。没入する人を目の当たりにすると、聴いているこちらもその世界に連れて行ってもらているような、不思議な感覚になりうっとりしながら聴いていたのですが、そんな中ふと思ったことが「響き合い」。


同じ空間にいる人たち全てが響き合って、その音が生まれていると言うんでしょうか。指揮者、辻井さん、オーケストラのみなさん、そして私たち観客。更に言うなら、作曲家(ベートーヴェン)、それぞれの楽器職人、ピアノ調律師、ホールの建築家や建設してくれた人たち、この日のコンサートを企画して実行に携わってくれた全ての人…と目の前に広がる景色から、その奥にあるストーリーまでを想像すると、まるで奇跡のことのように思え一瞬一瞬を味わおうと思いました。

演奏する人、演奏を受け取る人、その空間をつくる人、それぞれがそれぞれの役割で響き合って、その体験ができていること、そして、その世界に参加できていることがとても嬉しく思いました。


コロナ禍により、コンサートなども開催が難しくなってしまい残念です。やはり芸術はその場でのバイブスを感じる体験をしたいなぁ、と思います。

それから、音楽を聴くという体験は分かりやすいですが、実はいつだってその一瞬が奇跡で響き合っているもの。そう思うと丁寧に毎日を過ごしたいなと思います。


※今日のメイン画像はこちらより
ちょっとグレン・クールドと似ている?

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