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終わったドラクエのレベルを上げると自分のレベルが下がる

これは、かつて私が映画館で働いていたときの話。

先輩社員のN氏が、レジ締め作業をしながらふと呟いた。

「俺、昨日は休みだったんだけど、1日中終わったドラクエのレベル上げてて気がついたことがある。」

N氏の言う、「終わったドラクエ」とはボスを倒してエンディングを見た状態のことを指す。ようするにドラクエ3であればゾーマを倒したあとのドラクエのことである。

私は訪ねた。

「へー。何に気がついたんですか?」

N氏は答える。

「ドラクエのレベルが上がるたびに俺のレベルが下がってることに。」

と、1万円札を数えながら、少しドヤ感のある顔で、俺は真理にたどり着いたみたいな雰囲気を出していたことを覚えている。

私としては、N氏の休日の過ごし方や、終わったドラクエのレベル上げのことよりも、1秒でも早くレジを締めて帰りたい。その気持ちが上回っていたので話半分でしか聞くことができなかった。

しかし、帰りの車(当時は車通勤)の中でもう一度だけ考えてみたところ、N氏の話は意外と面白いのではないかと思った。

ドラクエのレベル上げ。これはドラクエにおいては楽しみの1つであり、次の町へ移動する前の通過儀礼とも言える。ゴールドを貯める目的も達成され、新しい装備を手に入れるためには必須の作業なのだ。

しかし、ボスを倒した瞬間に、このレベル上げの作業が無意味なことになってしまう。あれほど重要な作業であったレベル上げが無意味、無価値になり、むしろそれをしている自分のレベルが下がってしまう。

もっと言えば、自分の時間をそこに浪費しているということ。その時間で本の1冊、いや1ページでも読んでインプットすれば良いものを、なんの目的もなく、ただ流れでドラクエのレベル上げをしてしまうこと。それこそが無駄であり、レベルを下げることになるって話なのだ。

これはドラクエに限らず、人生においても言えること。仕事、プライベートを問わず、大事なことだったはずが、ある一定の時期を過ぎると無価値になることがある。やらなくていいこと、やらないほうがいいこと。

またはお笑いでも同じ。一世を風靡したギャグでも一生ウケるわけではない。どんなに流行ったことでもブームを過ぎれば逆にダサいものの象徴となることもある。

それを、N氏は知ったのだ。貴重な休日を1日潰し、「終わったドラクエ」のレベルを上げることで。

そして、これ以上のレベル低下を防ぐために、自分への戒めとともに、ドヤ顔で私に彼が得た真理を伝えてくれたのである。

信号待ちをしながら、私は思った。明日、N氏に感謝の気持ちを伝えようと。

終わったドラクエのレベル上げ。それに近いことをしていないだろうか?

日々これに気をつけて生きていきたい。そう思った瞬間のことをここに記す。

それではまた。ご存じ、ゆうせいでした。

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