カッピングは後退局面(1)実情編

スペシャルティコーヒーの定義が、あいまいになってきています。本家Specialty Coffee Associationsは、その定義設定を(農家、バイヤー、ロースター、バリスタ、消費者)というSeed to Cupの定義に沿ってそれぞれが目指すべき努力を記していますが、当初にあった「80点以上のグレード」という文言が、表舞台の表記から消えてしまっているような気がします。たしか、これが書いてあったからスペシャルティコーヒーってそういうものか、と理解したと思ったんですけれど。。。現状の説明。これはわかりにくい。旧来型のコーヒーオタクたちの言ったもん勝ちの世界が戻ってきつつあります。

スペシャルティコーヒーは持続性と透明性を兼ね備えた理念にもとづくニューコマーシャリズム。手塩にかけて育てたコーヒーノキからとれる実の雑味のなさ、多彩な香味は既存のコーヒーと一線を画す差別化戦略の典型的なもので、ビジネスとして成果を出し生産者を少しリッチにしたかに思われましたが、消費レベルでそのカテゴリーの進化が見られません。

評点公開をしているものはわずか

スペシャルティコーヒーのグレードをわける評点。しかしその評点公開をしているものは、わずかとなっています。店頭レベルでは皆無にひとしく、商社のショッピングページもなし。オークション主催のカップオブエクセレンス、ベストオブパナマ、ハワイコナ協会コンペあたりで結果公表の中で示されているだけで、消費者の目にそのポイントがわかるのは至難です。

https://auction.bestofpanama.org/ja/

https://allianceforcoffeeexcellence.org/

本来は店頭で評点を公開してないといけないはず

消費者として、「このスペシャルティコーヒーがどのくらいのレベルなのか」を知る手段として、評定時の評点を参考にすることほどわかりやすいものはありません。評価の透明性を標榜した差別化戦略なので、ポイントの公開はなされてないといけないはず。しかし、店頭で公開されているのはいつ評価されたか不明の、数点のフレーバーリストのみです。

お店の人をつかまえて、「このコーヒーは何点取りましたか?」と聞いてみると、資料を引っ張り出してきて「83点です」と答えてくれたところもありますが、聞かないと出てこない状況で、しかもそういう問い合わせをするといやな顔をされることの方が多かったです。世界レベルでそれが起こっています。それっておかしくないですか?

しょぼい豆が売れなくなるから???

カフェやロースターの経営的視点からすると、点数公表はポイントの低い銘柄が売れにくくなるのでは、という心配が常につきまといます。また、お客さんに対して価値基準をあいまいにすると、評点の低い豆を高く売りつけることもできます。実際に遭った事例として、カップオブエクセレンスで81点をつけた豆をスペシャルティコーヒーとして販売していたロースターがいました(プロトコルでは予選の段階で85点以上獲得しなければ本選に進めません。84点以下はカップオブエクセレンスにエントリーしたけれども敗退した銘柄であり、入賞ではないのです)。

カップオブエクセレンスのほうが、スペシャルティコーヒー協会的

次回のnoteに記します。

カッピングの評点時の香味表記、なのか?

スペシャルティコーヒーロースターのほとんどが、販売するコーヒーの銘柄のラベルに、それぞれの香味表記が3つくらい記されています。評点をするときにリストされたフレーバーを記すものですが、カッピング評が非公開なことが多いため、このフレーバーリストは「いつのもの」かが不明です。カッピング評がなされ、スペシャルティコーヒーと認定されたあと、ロースターたちは思い思いの煎り具合でローストができます。真っ黒に焦がしても、生焼けすぎてもスペシャルティコーヒーとして販売されます。真っ黒なときの評価なのか、生焼けのときの評価なのかが不明です。

カッピングはあきらかに後退局面

評点が公開されない以上、消費者レベルで「このくらいの豆は85点なのか」ということができなくなります。つまり、潜在的なテースティングレベルがアップせず、消費者は愚民政策のもと、ロースターとの情報格差が広がったまま、ということになります。別の言い方をすれば、確かな評価基準をもとにしたおいしいコーヒーの議論ができないのです。これは、コーヒーのテースティングレベルの低下を招いていて、その影響は世界で流通するスペシャルティコーヒー豆と日本で流通するそれとの価格差に如実に出てきていると感じています。

さて、コーヒー好きたちは、どうしたもんか。

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