見出し画像

起業家と会計

(1)はじめに
登記申請・履歴事項全部証明書の発行・シェアオフィス契約(Lagoon)・法人口座開設(沖縄銀行)・会計ソフト導入(MFクラウド)・クレジットカード作成(三井住友銀行)などなど、起業後の手続きは順番にステップを踏んでいく地味なクエストだったこともあり、CEOの私が立て替えていた数多くの支払いに係る経理処理の仕訳に着手したのはつい最近でした・・・。
イャンクックより早くリオレウスを狩りに行きたい系の起業家はこの辺の手続きは億劫に感じそうです(私はそうでした)。

(2)共通言語としての会計
ところで皆さん、「経理処理の仕訳」や「会計」と聞いて何かパッとイメージできますか?
※この投稿では会計=財務会計で、管理会計は含めていません。
日々の記帳や試算表作成を税理士さんに丸投げしていると何も浮かんでこないかもせれません。でも、大丈夫です。私が法人の融資相談で担当した経営者で、会計を理解して使えていた方は片手に収まる数でした(少なかったので今でも名前を覚えている程です)。
しかし、会社経営をするうえで日商簿記3級程度の基本的な知識は必須だと思っています。仕訳・借方・貸方・BS・PL・SS・減価償却とかで分からないワードがあればググってみた方がいいでしょう。
私が貸付担当だった時、「経営者が日商簿記3級以上を持っていれば利率の優遇をしてもいい」とかなり極端な主張をしていたこともありますが、そもそも英語圏で英語を話せる人を何かで優遇するのはおかしな話でして、経営者が会計を理解していれば特典を与えるのは無理があるなと今では考えを改めています。何せ、会計はビジネスの共通言語ですからね。

(3)起業家と会計
事業で生じた取引を、正しい勘定科目を使って借方・貸方に仕訳を行い、BS・PL・SSに反映させることは経営者ができることが望ましいです。
もう一度言います。基本的な仕訳と試算表の作成は経理担当者や税理士にお願いするだけでなく、経営者自身でもできるべきです。自分でできる上で、他の人に代行を依頼するのが望ましいと考えています。税務申告を丸投げし、仕上がってきた財務諸表を全く理解せずに従業員や金融機関、取引先といったステークホルダー(利害関係者)に接しているのは経営の怠慢とさえ言えるかもしれません。
ユアトリー株式会社でも、CEOの私が日々の記帳・試算表作成をマネーフォーワード・クラウド(めっちゃ便利!)で行い、税務申告のみ念のため税理士さんに依頼する予定です。「なんで仕訳をこうしたんですか?」「去年と比べて〜〜ですね」なんて会話を税理士さんやチーム内で闊達に議論できる企業文化とスキルを醸成していきます。

(4)知ってる・できる・やっている
私が尊敬している経営者の一人であるOWNDAYS・田中修治氏は、「知ってる・できる・やっているは違う」と言っていました。完全同意です。
魚に詳しいことと、寿司を握れることは違います。
サッカーに詳しいことと、優れたFWであることは異なり、
会計を勉強することと、会計の知識を経営判断に活かすことも全く異なります。
これは自戒も込めて言いますが、(元)金融マンや(元)コンサルタントは「たくさんの経営を見てきた」ことで「自分は経営ができる」と勘違いしている傾向があります。例えば、中小企業診断士には優秀な方が多い印象ですが、あの資格を持ってて経営ができるなら某老舗家具メーカーのような事態は起こらなかったでしょう。後を継いですぐに会社を傾かせた方の経歴を見てください。有名大卒のMBAホルダーですよ。
実は私も、「自分はできる」と誤認していたことがつい最近ありました。

(5)知っててもできない。それが会計、それが経営
駐車場代を仕訳する時、月極なら地代家賃、コインパーキングなら旅費交通費が一般的です。これは私も知っていました。
しかし、スターバックスでお客様と打ち合わせをした時のパーキング代なら会議費でも良くて、社外の人も参加する懇親会でコインパーキングを利用したものは接待交際費でもいいことはググって初めて知りました。
コインパーキング代が旅費交通費でも会議費でも接待交際費でも、BS・PLには影響しません。しかし、販売費及び一般管理費の内訳は変わってきます。(あまり気にする必要はないはずですが)中小企業の接待交際費の損金算入上限額(今は800万円)を踏まえると仕訳のルールを初期から意識していた方がいいかもしれません。なぜなら、仕訳のルールは前期踏襲が原則で、利益(税務上は課税所得)の操作ができないように容易なルール変更は税務署が基本認めないからです。
上記の様な勘定科目の使い分けを意識することは、単に「日商簿記⚪︎級を持った人」では難しいものです。金融マンやコンサルは、顧客が持ってきた決算書を見て何か言うのが仕事であり、「自分で決算書を作る」経験なんて皆無なんですから。
私は日商簿記2級を持っていて、公認会計士試験の財務会計論も一通り勉強してきたにも関わらず、自分で起業して経理処理をするまで「知っているけど、できない」ことに幾度か遭遇しました。「この仕訳で、良いんだよな・・・?」と不安になり、ググり、ChatGPTに聞き、念のため税理士事務所に勤務する友人に確認までした取引もありました。「私の勉強不足?」それもありますね。でも、法人登記時に支払う登録免許税を「日付も」意識して仕訳してみて下さい。やったことないと手が止まるはずです(仕訳1つで完結しないからです)。
思えばここ2年ほど続けているユーザーヒアリングや営業も、本で読んでいたことと実際にやってみるのでは全然違いました。これからも「インプットしたのにアウトプットできない」ことの連続だと思いますが、そこからの成長を楽しめるよう意識していきます。

(6)終わりに
起業家は会計に無関心でいれますが、無関係ではいれません。仕方ないのでポジティブに考えましょう。サイバーエージェント・藤田晋氏が起業家が成功するために必要な条件として「壮大に語り、愚直にやる」を挙げていました。私は、この藤田氏の教えを日頃から実践できるものが「会計」だと考えています。「沖縄から世界へ」、「サンエーとセルラーを超える」と豪語している裏では、日々領収書をまとめ、記帳して、毎週試算表を作成しながら途中経過を税理士や投資家、チームと共有して経営に活かしていく。面倒ですが、泥臭く淡々とやる作業は経営者としての良い筋トレになりそうです。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
最後に宣伝です。あざとくて何が悪いの?
もし事業に関するお悩みがありましたら気兼ねなくご連絡下さい。

Facebook : Hiroyuki Uehara
Mail : uehara_h@yourtory.com

元金融マン・現役スタートアッパーとして良き相談相手になります(2,000円 / 時です)。成果報酬型の資金調達サポート(融資・出資・補助金)も承っております。
厳しいことをあまり言えない性格ですが、BSに役員貸付金が積まれている場合は相応に突っ込みますのでどうぞよろしくお願いします。

令和5年8月31日(木)
ユアトリー株式会社
上原 宇行

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?