言の葉がさね〜恋文 二の歌〜

一年前の今日詠んだ短歌
どんな出来事があったかなぁと遡りながら
まったく違った物語を書いてみる。

完全オリジナルストーリー
【言の葉がさね】
〜恋文 ニの歌〜

戻りしは
その日の想い
その心
いづこにいれど
愛しき想い
2019.9.17

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彼女の手元に戻ってきたのは、
とある遊園地のキャラクターのぬいぐるみのキーホルダー。
《ステラ・ルー》
いつもルーと呼んで大切にしていた。


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朝寝坊して遅刻しそうになって、ママの車で学校まで送ってもらった。
そんな日に限って、カバンから落ちちゃうなんて…
そんな日に限って、ママの車が定期点検で預けちゃられちゃうなんて…

学校についたとき
「あれ、愛しのルーは?」
クラスメイトに言われて初めて気づいた。
きっと車だ!車に落としてて欲しい…
半ばすがる気持ちを込めて、すぐにママに連絡したのに仕事で気づかないみたい。

やばい。
かなり凹む。
なくすなんてありえない。

かなりガックリとしながら、午前中の授業はほぼうわの空で終了…。
願うように「車にある!車にある!」と気付けばノートのあちこちに書いていた。

食欲ないなぁ〜
と思ってたら、ママから電話がきた!
「どうかしたの?ぬいぐるみってなんのこと?」
慌てて訳を説明する。
「あぁ、しょうちゃんにもらったあのぬいぐるみ?ふふ、落とすなんておバカね〜。いいわ、車屋さんに聞いてみる。またね」
含み笑いしながら電話を切られてしまった。

ママにバレた…。
そこで改めて恥ずかしくなる。

ママがしょうちゃんと呼ぶのは腐れ縁の同級生の男の子。しょうた。
ママ同士も仲良くて、小学生のころはたまに遊んでたけど、歳が上がってからはそれなりの距離で接してる。
中学でしょうたがバレー部に入ってからは特に顔を合わせる事もなくなったし、高校も同じだけどクラス違うからそんなに話さない。

でも、中学の卒業記念にしょうたが友達と一緒に遊園地に行くと言い出した。
ずるいー!とダダこねてみたけど、笑ってはぐらかされた。
だから、まさかお土産にステラ・ルーを買ってきてくれるなんて思わなくて。
思わずときめいてしまった…。

その頃からしょうたをただの同級生じゃない気持ちで意識し始めた。
友達には言ってたけど、ママには恥ずかしくて言ってなかった。
だって、あの人ってば絶対茶化すもん!しょうたママと一緒になってさ〜。ふたりでお酒飲みながらケラケラ笑い話にされちゃうのが分かるもん!

とはいえ…今は背に腹は変えられない!

しょうたがくれた私の宝物見つかりますように☆


家に帰るとママが
「車の中にあったって。そのままにしててちょうだい。と頼んでおいたから。」
と言ってきた。
「あれさ、しょうちゃんのお土産でしょう?おねだりしたの?」
「してないよ。一緒行きたいって言ったらダメって言うから拗ねたけど。別に頼んでない。」
「そう。しょうちゃん、男の子のお友達と行ったんでしょう?みんなといる時に買ったのかしらね。それともこっそりひとりで買ったのかしらね〜。」
「もう!知らないよ、そんなこと!」
「ふふふ。怒らないでよ〜。あははっ」

やっぱりママに茶化された。
分かってるよ。。。
しょうたが渡してくれるとき
『これ見た時さ、スネた顔思い出して、思わず買ったけど、けっこう恥ずかしかった…』
ってボソって言ってたもん。

分かってるよ。。。
中学生男子がこんな可愛いぬいぐるみを女姉妹とかもいないのに、友達と一緒にいる時に買ってくるのが、どれだけ勇気がいるかくらい。
中学生男子の多感さ甘く見すぎよ、ママ…。

分かってるよ…
だから、思わずときめいたんだもん。
私と一緒に行ったわけじゃないのに、友達と楽しんでる時なのに、私のこと思い出したって事でしょ…。
思わず買っちゃうって、そゆことじゃん。。。

とりあえず、ルーが帰ってくるのは数日後。
見つかってよかった。

次の朝、行きのバスでしょうたと会った。
「あ、おはよ」
「ん〜」
相変わらずな無愛想具合だな〜と思ったけどほっとこ〜。
「あれ、あの人形は?」
突然、私のカバンを引っ張っていうから、聞かれた私の方がびっくりしちゃった。
「え?あれね。ちょっとママの車に落としちゃって…」
昨日の出来事をかいつまんで話す。

「相変わらずドジだな!ま、あるならいいよ」
「なんで偉そうなのー?その前に付けてること知らないと思ってた」
「オレが買ってきたんだから、気づいてないワケないじゃん?!」
「ふーん。そんなに私のこと気にしてたんだ〜?」
いつもの感じでけしかけるような言ってみた。

「ん〜あたりまえじゃん?」
そう言って、ニカっと笑って、しょうたは友達のところに行ってしまった。

何よ!あれ、反則じゃん!!
思わず口もとを手で隠す。
ニヤけそうで、泣きそうで、口から心臓出ちゃいそうな感じ。
もう!どうしたっていうのよ、わたし。

あとから乗ってきた友達に
「泣きそうな顔してどうしたの?」
と聞かれても、言葉が出てこなくて首を振るのが精一杯だった。


それから3日後
無事にママの車に乗せられて私のルーも帰ってきた。
たった数日見なかっただけのに、
毎日眺めたり、触ったりしてたわけでもないのに、
なんだか戻ってきたその子はとっても可愛くて愛しく思えた。

その気持ちがルーに向けるものなのか、違うものなのか私はもうわかってる。

失くしたからこそ、
改めて大事なものだって思ったし、
どうして大事に思うのかにも気付いた。
うん……気付いた。
大事な理由と、ほんとに大事なもの。
ほんとに大事にしたかったもの。
会いに行こ!!


私はルーを握りしめて、しょうたの家まで走って行った。
途中でしょうたがバスから降りるのが見えて、バス停の近くで待ってた。

「ルーが戻ってきたよ。」
「おぉ、良かったじゃん、もうなくすなよ?」
ふたりで歩きながら話す。

「わざわざその報告するのに走ってきたの?」
しょうたに聞かれて、一気に心拍数が上がる。

「えっと…うん。そんなところ。」
「そんなのLINEでいいじゃん。」

笑われたのがなんだかちょっぴり悔しくて
「なんとなくー。戻ってきた証拠に直接見せたかったんだもん。」
強がって見せる。

もうすぐ、しょうたの家に着く。
「待ってて、チャリとってくる。家まで送る。」
足早に行ったしょうたを見ながら、なんか衝動で会いに来ちゃったけど、何やってるんだろう。という気持ちになった。

「お待たせ。行こう。」
しょうたママが玄関で見送ってくれる。
あの顔は絶対うちのママとふたりで裏で話して盛り上がってるパターンに違いない!
しょうたママが持たせてくれたアイスさえも憎たらしく思えちゃう。


ふたりでアイスをかじりながら、しょうたも自転車を押しながらゆっくり歩いてく。
「ねえ、しょうた!これ買った時、私のこと思い出したの?」
「は?いまさら?渡す時そう言ったじゃん!」
「うん。聞いた。なんで思い出したの?」
「なんで?なんでだろうな、考えてたからじゃない?スネた顔とか、ふくれた顔とか」
「別にふくれてないもん!行きたかったからずるいな〜と思っただけだもん!」
「そうだっけ?ハムスターみたいな顔思い出しんじゃないかな〜」
そう言って頬を膨らませてる真似をしてケラケラと笑い出す。

なんだよ、もう!
出鼻挫かれたっていうか、このままじゃいつもと変わんないじゃん!
わたし、どうすんの?
なんとかしろ、自分!!

「まぁいいじゃん?そのうち行けるだろ。大会終われば、部活少し落ち着くし。」
「そのうち?え、一緒に?」
「行きたくないならいいけど、行きたいんだろ?」
「あ、はい。行きたい!行く!」
「じゃあ、決まり。それまでそのぬいぐるみはなくなさいようにしなさい。」
「はい。、、、え?なんで」
「なくすとまたゾンビみたいな顔になるじゃん?」
「ゾンビって!言い過ぎ!!」
たわいもない、いつも通りの会話はやっぱり楽しい。嬉しい。

わたしの家が見えてきた。
どうするの、わたし!
なんとかしろ、わたし!

「ここまでくればいいな、気をつけて帰れよ〜」
そう言ってしょうたは自転車にまたがった。

思い切って口開く。
「送ってくれてありがとう!あと、ルー買ってくれてありがとう!失くしてみてすごい大事だったんだって思った。宝物だったって思った。しょうたがくれた物だったから。ありがとう!」
「なんだよ突然。まぁ気に入ってるなら、オレも買ってきたかいがあるよ。」

「ね、遊園地。ほんとに行ける?一緒にいける?あのね、わたし、ふたりで行きたい!」
顔から火が出そう!
胸から心臓飛びだすかも!
今はこれが精一杯。
これ以上はやっぱり怖くて言えないよ。。。


「あたりまえじゃん!ふたりで行こう」

そう言ってまたニカっと笑うしょうた。
私の頭をぽんとして帰って行った。

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ふたりの続きがちょっと気になる作者です!笑

2020.9.17
❤︎you❤︎

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