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【考察】鬼滅の刃から考えるアニメから生まれるデータベース消費拡大

2016年に少年ジャンプにて連載された鬼滅の刃であるが、2020年の現時点で総発行部数が1億部を突破する大人気を記録しています。下のグラフの推移からみてその勢いが伺えます。

しかし、この手のジャンル(ジャンプ、マガジン等)をよく読んでいる読者層にとっては、確かに面白い漫画ではあるが、社会現象になるほどなのかと疑問に持つ者も多いのではないでしょうか。

もう一度上のグラフを見て欲しい。2016年からスタートして、2019年までは緩やかな推移となっている。転機は2019年3月過ぎ頃であります。短期間で急激な上昇が見られるのです。この時期、2019年4月から鬼滅の刃がTOKYO MXほかにて、アニメ版がテレビ放送された時期です。

このことからアニメが火種となっていることが分かります。これを一つの前提とした上で話を進めていきます。つまり、漫画では成しえなかった層の拡大をアニメが可能にした、ということです。

さて、ここからが記事の本題です。

アニメ化と一概に言っても、ただ放送すれば人気が出るわけではありません。

漫画ではそこそこでも、アニメ化した途端に人気が出る作品から、漫画が好調だからアニメ化した結果、あまり反響がなかった作品まであるわけです。

当然、鬼滅の刃は前者に近いポジションになりますが、では、鬼滅の刃アニメの何によって人気になったのか。この原因を「アニメを通したデータベース消費の拡大」であると考えます。
今回は、「そもそもデータベース消費とはなにか」を軽く説明したあと、上記のような拡張的推論の真偽についてユーザーの情勢をもとに紹介していきます。

データベース消費とは

データベース消費とは社会学者の東浩紀が著書「動物化するポストモダン」の作中で唱えた理論です。実は作家の大塚英志による「物語消費論」を発展させた理論でもあります。
この「物語消費論」とは、コンテンツ(商品やデータ等)として私たちの前に現れる「小さな物語」の後ろに、一貫した体系とストーリーを持つ「大きな物語」が想定され、コンテンツが消費されるのではなく、その「大きな物語」が消費されているのだという概念であります。

wikiを参照にしますが、簡単な例だと、ビックリマンシールがその際たる例ではないでしょうか。ビックリマンチョコに付属しているシールは正義から悪までの様々な立ち位置のキャラクターが出てきます。これらを集めていくことにより、彼らがどういう関係なのか、何を目的としているのか、舞台はどこなのか、などの世界観を広げていくことができます。
東浩紀は「小さな物語」の背景にあるのはこの「大きな物語」ではなく、雑然とした情報が集まった「データベース」になると分析します。
データベースとはIT 用語ですが、ここではなんでも引っ張ってこれる、という意味で捉えて下さい。一つのアニメから派生した2次創作やグッズ、コスプレや、アニメキャラを構成する目、耳、髪型、声、服などの様々な断片の中から、「萌え」を触発するアイテムだけを選択・愛好したり、そこから同人誌やフィギュアなどの二次創作物を紡ぎ出すことなどを例とします。
そしてこれをデータベース消費と呼びます。コンテンツ消費社会をより大きなスケールで捉えているのです。

データベース消費の拡大と人気

データベース消費を説明したところで、具体的にアニメ鬼滅の刃によってどのようにデータベース消費が拡大されて、どうやって人気なったのでしょうか。ネットを通してユーザーの情勢から見ていきます。

この作画の映像美はアニメ鬼滅の刃を観る上での最大の魅力と言えます。色使いやキャラクターの表情などの細かなタッチが全面に出ていると言えます。これが一人一人のキャラクターを際立たせています。そしてTwitterのコスプレ界隈では鬼滅の刃は定番となりました。

Twitterのタイムラインでたまに流れてくるかと思います。竈門 禰豆子が竹を口に加えている部分に萌え要素を加えたり、我妻 善逸の髪型の真似て等身大としての一要素を感じたり、と。まさにデータベース消費と言えます。これが拡散され、また更に真似をしたり、派生商品を買ってみたりする人が増え、鬼滅の刃の認知を上げた一つの要因となったのです。

アニメ作画のタッチの細かさ→コスプレの定番→鬼滅の刃の認知の上昇

次に曲でしょう。歌手Lisaによってリリースされた「紅蓮華」はそのロックな音程と大正末期の舞台とにギャップを生み、新鮮さを与えたはずです。そして紅蓮華が独り歩きにYouTubeで認知を拡大させていった背景もあります(現時点8000万回再生で、アニメ鬼滅の刃関連の動画を大きく上回る)。

アニメのOP→YouTube上でOPの認知拡大→鬼滅の刃の認知上昇

この時点で既に大人気と見て取れますが、社会現象という意味では、この人気がメディアで取り沙汰され、多くの企業案件にエスカレートしていき、またそれを機にメディアが取り上げる、と言った好循環モデルが要因となのです。

何より、鬼滅の刃はアニメを通して、その2次創作を含めたデータベース消費、拡散によって人気に至ったということが、上記を通して分かったと思います。
また、これが「大きな物語」と「データベース化」の決定的違いであることも分かります。物語を読者と共有するのではなく、断片的なコンテンツを、SNSなどを媒介として、界隈外と共有することで、有名になっていったのです。

最後に、サブカルチャーとはよく言われますが、オタクの世界だけであったこの用語がデータベース消費を通して一般的に浸透しつつあることも見て取れます。

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