学級における心理的安全性を教師のリーダーシップから考える。
①はじめに
今回も心理的な安全性に焦点を置いて、「具体的に心理的安全性を育むのに必要な教師のマインド」という視点で記事を書いていこうと思います。
まず初めに皆さんに伝えておきたいのは、心理的安全性という言葉が世に出てきて注目を集めていますが、その言葉を有名にしたのにGoogleのある発表です。世界中から聡明な人材を集めているのに、優れた成果を挙げるチームとそうでないチームが生じるのはなぜだろうか。」このような問題を解明するために、2012年、Googleはプロジェクトを立ち上げて「プロジェクトアリストテレス」という企業向けの調査を開始しました。プロジェクトアリストテレスでは、180ものチーム(エンジニア系115チーム、営業系65チーム)を追跡し、さまざまな角度から収集した大量のデータを解析して「効率的に成果を挙げるチーム」の条件を解明しました。その結果は実に興味深いものでした。本当に効率的で成果を挙げられるチームの条件は、「優秀なメンバーがいるか」ではなく、「メンバー同士がいかに協力しあうか」にあったのです。
②以前から存在していた心理的安全性
このような結果から、業界だけでなく様々なところで心理的安全性の必要性が問われ続けてきました。もちろん、それは教育界も同じことです。しかし、勘違いしてはいけないことがあります。それは、今まで教師がしてきた価値のある営みは、そもそも心理的安全性を結果として高めているものなのです。「心理的安全性を高める学級づくり!」と銘打っている様々な本がありますが、「そもそも何十年も前から学級経営に定評のある先生が子どもたちに向けて行ってきたもの」だと思うのです。その言葉の1人歩きに対して、今までの教師の「子どもが安心できる取組」が後付けとしてフォーカスされているだけなのです。そう、心理的安全性を高める学級経営はあなたもやってきているのです。そこをはき違えてはいけません。
③子どもに優しくすることが心理的安全性を高めるわけではない
ここで勘違いしてはいけないのが、決して子どもを温かく見守ることだけが心理的安全性を高めるわけではありません。子どもたちを時には正しい方向に導いていくようなリーダーシップを取ってこそ、結果として心理的安全性を高めることにつながることもあるのです。
例えば、このような図があったとします。心理的安全性が高いクラスでも教師の基準が低ければ、それは結果として「ぬるい教室」として認知され、子どもたちに満足感は生まれません。
このような指標をもとにすると、いかに「ただ安全性が高い環境を準備することだけがよいことではない」ということが分かります。心理的安全性を語る上で欠かせないのは教師のリーダーシップという観点です。ここに「目標に向けて引っ張る力」「集団を高次の次元にまで持ち上げる力」というような教師の基準がなければ、結果として学級の雰囲気はよくはなりません。もちろん、子どもの気持ちに寄り添うような温かい声掛けは必要です。それは間違いありません。しかし、同時に子どもたちを引っ張っていくような力強い想いも大切にしなければいけないということです。
④両方の機能を意識して学級経営をする
学級経営には2つの機能があるとされています。河村茂雄先生によると学級にはリレーションとルールの確立という2つの要素が含まれています。もちろん、心理的安全性と聞いて意識するのはリレーションの方ではないでしょうか。しかし、私は子どもたちの心理的安全性はルールの確立によって守られているというのが大前提として存在していると思うのです。どれだけ関係性がよくても安全が脅かされるような環境では安全性を感じることはできません。マズローの欲求5段階説でいうと、安全要求が満たされていないような状況なのです。そんな状況下では教室の居心地の良さを感じることができません。ということなれば、穿った見方をすれば教師と子どもとの縦関係を意識したリレーションも時には大切というわけです。先ほど述べたように、何でもかんでも温かさを重視すれば良いというわけではないのです。その真意を知らずして、言葉に踊らされるのは非常に危険です。子どもたちが安心・安全を感じられる物理的な面も含めた整いが大切なのだと思います。
⑤終わりに
さて、今回は心理的安全性の逆をいくような形になりましたが、この考え方は表裏一体で、全てはつながっているということです。本当の意味での心理的安全性の効果について自分なりに考えて、取組をしていくことで新しく見えてくることもあります。きっと私の解釈と皆さんの解釈は違っていますし、それが当たり前です。しかし、そんな違いさえ認めあえる集団こそが心理的安全性の高い組織であると言えます。今回の記事が少しでも皆さんの役に立てば幸いです。ありがとうございました。
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