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学級経営×ポリヴェーガル理論で、心理的安全性を育む教室の実現。

 今回のテーマは心理的安全性の構築を脳神経レベルの話から考えていきたいと思います。脳神経・・・と聞いてかなり難しく感じる方もおられるかと思いますが、そこまで難しく考える必要はありませんし、私も最初は全く知らない概念でした、しかし、ポリヴェーガル理論から教室の心理的安全性について考えることは、子どもたちの安心感につながると考えます。特にわかりやすい理論となっているので、是非参考にしてもらいながら、教室での心理的安全性の育成につなげていって頂ければと思います。

①ポリヴェーガル理論とは?

「こころ」と「からだ」は密接に関わり合っています。例えばたくさんの人の前で発表をすると緊張して汗が出てくる。大きな声で怒られると、身動きができなくなる。家でゆっくり過ごしていると、気持ちがリラックスする。このように、意識的か無意識かは別として、人間の心と体は「つながっている」のです。
 ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)はステファン・W・ポージェス教授が提唱した新しい概念です。この理論は神経系における自律神経に関する考え方になります。自律神経系は例えば脈拍数や血圧、体重、発汗など多くのプロセスを制御したりまたは入力したりするものです。
 自律神経は交感神経と副交感神経からできており、副交感神経には迷走神経という神経系があります。そして新たに、ポージェス教授は副交感神経内における迷走神経には2つのモードがあると提唱し、それが背側迷走神経複合体と腹側迷走神経複合体の2つです。「何それ?」と思われた方も多いかとは思いますが、とりあえず、交感神経と名前の難しい2つの神経が存在していると覚えておいてください。
 ここで問題になるのは、その3つの神経系が働く機能です。
①交感神経
②背側迷走神経複合体
③腹側迷走神経複合体
                  の働きを説明していきます。

②交換神経の働き

 交換神経の働きは「闘争・逃走」モードです。要するに自分の身に危険を感じた時、「闘うか逃げるか」という選択をして実行するモードになります。これは、人間が今まで生きてきた中で、生き延びるために必要不可欠な働きでもあります。しかし、問題なのは、その強さです。例えば危険に対して「闘争」が優位に働き、攻撃的になったり怒りのコントロールがとれない場合は非常に危険です。逆に弱い働きであれば生き生きしていて、エネルギッシュに感じることもあります。

③背側迷走神経複合体の働き

 背側迷走神経複合体は脳幹よりも背側から主に横隔膜よりも下の内臓などにつながっています。この働きは「シャットダウン」と呼ばれ、固まり、凍り付くモードと呼ばれています。捕食動物に今まさに食べられようとしている動物は「生きるか死ぬか」の前で固まり凍り付くことがあります。脅威に迫られた時の死んだふりに似ているかもしれません。例えば、教室で反応が少なかったり、自傷行為を行っている上で「痛みを感じない」などと言う子はこの働きがかなり優位に働いている可能性があります。もちろん、弱い働きであれば「リラックス」などの効果もありますが、強すぎる場合に起きる先ほどのリストカットの事例などは、大きい問題となります。

④腹側迷走神経複合体の働き

 今回紹介する中で1番注目してほしいのが「腹側迷走神経複合体」です。この働きは「社会的つながり」「安心・安全」のモードと呼ばれます。脳幹よりも腹側にあり、主に顔面や呼吸器などにつながっています。これは「人との社会的つながりや安心・安全」を感じ、幸せになれるモードをいいます。このモードは主に「顔や頭の筋肉・呼吸をする・吸う・声を出す」などです。人間が生活を営む上で社会集団を形成してきたように、その関わりの中で生まれるような幸福を感じられる働きをもっています。私が言う「心理的安全性」の安全性は腹側迷走神経複合体の働きが非常に大きく、これが優位に働いている状態を言います。穏やかだ、安心、安全、平和を感じられるといっても過言ではありません。要はクラスの中にこのような背側迷走神経の働きを充満させていくことが必要であると考えるのです。

⑤安心感のある学級

 もちろん、今回説明しているポリヴェーガル理論における3つの神経のどれが良くてどれが悪いという話をしているわけではありません。どれもがバランスよく機能していることが1番の理想なのです。しかし、心理的安全性という視点から考えると「腹側迷走神経複合体」の機能が優位に働くことで、子どもたちが心温まる集団になるというわけです。逆に何かトラブルがあったりして激怒している子や、固まって動けないでいる子は「交換神経や背側迷走神経が優位に働きすぎている」と考えるべきなのです。そんな時に「しっかりやりなさい! どうしてできないの!」など叱ったり叱咤激励することが必ずしも正解にならないですし、時にはその働きをさらに強めてしまうかもしれません。「客観的に事象を見る」というような見方がとても重要なわけです。

⑥終わりに

 今回はポリヴェーガル理論から学級における心理的安全性を見ていきました。教室内における事例レベルで物事を見ていくことはもちろん大切ですが、子どもたちの心理はそんなに簡単ではありません。脳神経のような一見考えにくそうな面からのアプローチも必要になってくるのではないかと思います。何か参考になることがあれば幸いです。

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