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オーティス・レディング「ドック・オブ・ザ・ベイ」の和訳

 こんにちは。
 今回は好きな洋楽の歌詞の和訳。選んだのはオーティス・レディングの「ドック・オブ・ザ・ベイ」。

   この曲はオーティス・レディングと、そのプロデューサー的立ち位置にあったスティーヴ・クロッパーによって制作・録音された。彼はこの曲にかなりの自信があったそうで、周囲に「俺の初のビッグ・ヒットになるだろう」なる言葉をこぼしていたそうだ。
 しかし、この曲を録音した三日後、オーティスは飛行機事故に遭い、還らぬ人となってしまう。残ったスティーヴはこの曲を発表するように推し進める。
 そうして発売されたこの曲はオーティスの生前の言葉通り、全米1位の大ヒットとなった。彼の初の首位獲得は皮肉にも亡くなった後に実現されたのだった。

   Sittin' in the morning sun
   I'll be sittin' when the evening comes
   Watching the ships roll in
   Then I watch them roll away again, yeah

 朝陽の元 そこに座って
 日が暮れるまで 居座り続ける
 船が来ては去る そんな風景を
 僕はただ見ているだけ

   I'm sittin' on the dock of the bay
  Watchin' the tide roll away, ooh
  I'm just sittin' on the dock of the bay
  Wastin' time

 波止場に腰掛けて 潮が引くのを見てる
 波止場に腰掛けて 時間を潰すだけ

   I left my home in Georgia
   Headed for the Frisco Bay
   Cuz I've had nothing to live for
   And look like nothing's gonna come my way

 ジョージアの家を捨て
 サンフランシスコまで 出てみたんだ…①
 生きる意味を見いだせなかったから
 でも以前と 何も変わりそうもないんだ

   So,I'm sittin' on the dock of the bay
   Watchin' the tide roll away, ooh
   I'm just sittin' on the dock of the bay
   Wastin' time


    だから僕は波止場に座り 潮が引くのを見てる
 波止場に座り 時間を無駄にしていくだけ

   Looks like nothing's gonna change
   Everything still remains the same
   I can't do what ten people tell me to do
   So I guess I'll remain the same, listen

 何も変わらない 全部以前と同じままで
 みんなが当たり前にできることを
 僕は一つもこなすことができないから…②
 これからもずっとこのままなんだろうな

    Sittin' here resting my bones
    And this loneliness won't leave me alone, listen
    Two thousand miles I roam
    Just to make this dock my home, now

 骨の髄まで力を抜き ただ座ってる
 この孤独は僕を 独りぼっちにはしないだろう…③
 二千マイルもかけて旅をして 得たことは
 この波止場を自分の居場所とすることだった

 そう、僕は波止場に座る 潮が引いていく
 波止場に腰掛けて 時間を無駄にしていくのさ


①…原文を忠実に訳すなら、サンフランシスコではなく、フリスコ湾となる。ただ、フリスコはサンフランシスコの俗称ということなので、これでおっけーかなと。彼がこの曲を書いたのもサンフランシスコだった、という逸話もあったので。

②…個人的にこの曲で一番グッとくるポイント。曲調が変わるし、自分の日常生活があまりうまくいっていないときにこの部分を聴くと、思わず泣きそうになってくる。それと同時に「自分はみんなと同じことすらできないのか」と思ってしまう感覚がこんなに才能溢れる人にもあるんだな、と思い、なんだかホッとしてしまう。

③…原文がすごく素敵で言い回しが上手い。孤独を人のように捉えており、その孤独が自分を去るまでは自分は本当の意味での孤独にはならない、的な感じ。この歌詞を読むと、たとえ自分が孤独でも、それも一個のステータスと捉えることもできそうで励まされる。

 生前最後に手がけた曲がこのように達観している内容で、かつ他の彼の曲のような激しさがなく、落ち着いた曲調なのがこの曲をかなり特別なものにしている気がした。

またね


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