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きみのかほり

数ある洗剤の中で一社だけどうしても苦手な匂いがある。洗剤の匂いに違いなんてないと思っていた。しかし、とある職場でその洗剤を使っていたときに違和感を感じた。主に掃除用の雑巾やタオルなどを洗うことがメインだったので、それも関係あるのかなぁと思っていたのだが、スタッフの一人がこの洗剤の匂い大好きなんですと言ったもんだから、何が良い匂いなんだ?!となったのだ。2年経とうが良い匂いと感じたことなどなかった。

それから数年、実家の洗剤が突如として、そのメーカーの物になったのだ。買い間違えなのか、気の迷いなのか分からないが、2本のボトルが陣取っていた。数年の間に洗剤も色々進化したものも増え、実家にあったのは進化版だった。フタの色も違うし、匂いも違うかもしれない。と、どこか緊張しながら、洗剤をフタに注いだらば、

あの匂いではないか!

残念ながらあの頃の職場の匂いだった。職場での仕方ない感がなくなった自分のお気に入りが寝食される絶望感。乾いた洗濯物の匂いもその洗剤なのだ。何日も何日もその匂いで洗濯することがこんなにも苦痛だとは。

というのも、私は気持ちが悪くなったり、気分を変えたいとき、口元をハンドタオルで拭いた際などに自分の持ち物の匂いを嗅ぐ習性がある。主にハンドタオルが多い。そのハンドタオルが気休めにならないことが本当に辛かった。本当に気持ち悪くなりかねなかった。
そんな匂いにも慣れるから、人間の慣れって恐ろしい。

とはいえ、数日の付き合いでこの洗剤ともお別れし、元の洗剤での日々に戻るった。安堵しかなかった。ちなみに、このメーカー以外の2社は似たような匂いだから愛用のものだからというわけでもないようだ。

そんな平和な洗濯ライフを取り戻したある日。肌寒いからと出した服から、あの匂いが!!!!
苦痛の時期は、季節の変わり目の頃だったので、最後にあれで洗ったまま仕舞っていたものがいくつか出てきた。どれも一発であれで洗った物だと分かるほど。慣れても嗅ぎ分ける力は恐ろしいほど健在だった。

人間の嗅覚は思い出と密接になりやすいというが、この洗剤に恨みも何もない。むしろ使っていた職場でしか嗅いだことがない。それでも苦手なものにはこうも反応する人間の嗅覚って改めてすごいなと実感したのだった。
これ嗅覚話が昔の恋人ネタで書ければ良かったのに、洗剤て。。。

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