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君が殺しに来るのを待ってる

お久しぶりです。ゆうきです。

物騒なタイトルです。

私には苦い思い出があります。学生時代、バイト先で一緒だった年下の娘のことです。彼女とはよくシフトが一緒になり、休憩時間にお喋りしたり、一緒に帰ったりしました。私にとっては友人でしたが、彼女は以前、友人に裏切られた経験があり、簡単に人を信用できないと言っていました。

自分を裏切るような人を「友人」と呼ぶ彼女は優しい人だと思います。私なら、私だけが友人だと思っていた人物を友人とは呼びません。実際に、愛嬌があって、可愛くて優しい娘でした。そんな彼女だからこそ、悩みがあったのだと思います。

詳しいことは省きますが、彼女は人間関係で次第に病んでいきました。何度も相談に乗り、その度に、私はその原因の人とはもう付き合わない方がいいんじゃないかと言いました。私なりに真摯に、話をしたつもりでした。結論から言うと、私は彼女の話を聞くことはできても、何かを変える術を持ちませんでした。彼女はついに身体を壊し、その後ずいぶん時間が経ってから電話が来ました。精神科の病院から退院した直後だったそうです。心身共にボロボロになった彼女は、入院中の話を語りました。どのような部屋だったか、そんな情報だけでした。

そして、ゆうきさん、生きていて何があるの、と言いました。

彼女はひたすらそれだけを繰り返し私に問いました。私は、彼女の生に責任を持てませんでした。これから先きっと、いいことがあるよ、私はあなたがいないと悲しい、そう言うのは簡単です。でも、私は彼女が納得できるような言葉を紡げませんでした。そして、彼女は繰り返し私に問うのです。怪我をして大学を留年し、卒業するのに手一杯で自分の生の意味もわからない、その問に対して一切の解答を持たない私に、生きていて何があるのと問うのです。

私は、10年生きてみて何もなければ、あなたを騙した私に復讐しに来なさい、私は電話もメールアドレスもずっと変えずにここに居るから、自分に殺意が向くことがあるなら、私を殺しに来なさいと言いました。彼女はうん、とも違う、それでも何か相槌のような発声をして電話を切りました。


数週間後、楽しそうにサークル仲間と過ごす写真が添付されたメールが届きました。ああ、何とか立ち直る方向に行くのだろうと思いました。私はその日とても疲れていて、翌日の夜になってから返信をしました。しかし、もうそのメールアドレスにメールは届かなくなっていました。彼女は私に裏切られたと思ったでしょうか。

今もずっとその娘のことが頭の片隅にあります。私に復讐しにくることなく過ごせていれば一番いいです。何なら私のことを忘れていてもそれが彼女にとっては良いことだと思います。

ただ、私は彼女のことを受け止めきれなかったことを悔やんでおり、彼女の方から連絡をくれないと、もう会うことができないのです。だからこれは私の願望です。

今なら、少しくらいは人生経験が増えました。今なら、もっとちゃんと話を聞いて、彼女の問いに応えることができると思います。私を殺しに来いなんて、そんなことを言わないで、然るべき行政機関や団体や、生きていく術を教えることができます。彼女より少し年上の女として。今ならできるんです。今なら言えるんです。あのときできなくてごめんなさい。




最近、彼女のことを思い出すことが多く、書かずにいられませんでした。

彼女が今、今もどこかで、10年生きてみて良かったなんて思う暇もないくらいに、充実した日々を過ごしていることを願います。


令和2年 7月20日

ゆうき けい














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