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観劇レポート『ずっ止まってる』2021年6月11日

久々の観劇レポート。今日はroom42『ずっ止まってる』という作品のレビューです(ネタバレなし)。

相当な遅筆なうえに取り掛かるのがものすごく遅いため(執筆開始時7月1日)、タイムラグがすごいのですが、でもその分心に留めていた時間が長いということで(ごめんなさい)。

どうしても何か観たかった

この日、朝起きた時に「今日はどうしても何か観に行きたい!!!」と思ったんです。

それで、とりあえず下北沢に行けば何か観られるだろうと考えて、身支度をして電車に乗って行きました。

演劇を観るってことは、すごく能動的なことだと思っています。

場合によっては前もってチケットを買って、現場までの交通手段を考えて、時間を逆算して間に合うように行って、座席に座って、色々感じながら、思いを巡らせながら、舞台上の出来事を受け取る。

だから、演劇を「する」と言うと、舞台上に立つことと思われることが多いのですが、「観る」でも、「支援する」でも、「レビューを書く」でも、私は演劇にどんな形でも関わろうとしたならば、演劇を「する」ということだと自負していいと思います。

さて、話が逸れたので元に戻します。電車に乗ってとりあえず下北沢へ行ったわけなんですが、ノープランだったので、適当に劇場を回ってみて気になる公演はないか見てみようかとふらふら歩きだしました。

ひとまず駅前劇場とOFF・OFFシアターの前に到着。フライヤーを見ると、爽やかな写真に好印象。次にあらすじを読む。

一度もレギュラーになれなかった野球部員のボク達が数年ぶりに集まる事に。
今日は誰かの誕生日パーティーをやるらしい。それで誰かを待っているらしい。
説明は必要ですがもう文字数が足りません。
これは喋るだけ喋って、転換の時に、転換っ!、って言いたいコメディ(公式サイトより引用)

この文言だったか忘れてしまったんですが、公式サイトから引用したのでこんな感じだったかと思います…!

この日は、難しくなく観られて元気が出るような作品が観たいなとは漠然と考えていたので、早速「これいいかも…!」と思って開演時間を確認すると、なんと開演5分前。

ギリギリすぎるかなあ…、そもそも当日券はあるのか、とか考えて、二の足を踏み一度は他の公演探そっかな…とその場を離れかけました。

でもこの出会いを信じたい…!と、また戻って3階への階段を駆け上がる。急いで当日券を買って、劇場に入ったのが開演1分前。間に合って良かった。

所感

実は、お恥ずかしながら私はこの公演を観るまでroom42のことを存じ上げていなかったのですが、これからは注目していきたいなと思える作風でした。

様々な小ネタが散りばめられていて、軽快なテンポで進んでいくストーリー。時々滑るのもご愛嬌。設定はコロナで甲子園が開催されずに高3の夏が終わってしまったというところから、数年後コロナが収束した時代で再会するということになっていて、ダイレクトに時代を反映しています。

現実はまだ収束はしていませんが、事態が好転した未来が舞台というところにも希望を感じ、元気をもらえる物語でした。

演劇は現実を映す鏡。現実の社会の流れが作品を変えます。そしてその作品が人の心を動かし、その人たちが社会を作っていきます。こうして芸術と社会が循環していると考えると、芸術ってそんなに実生活から遠くないんですよね。

ストーリーは、ドタバタコメディな部分もありつつ、青春の少し苦くて爽やかな心の機微もあり、ハートフルな登場人物たちのやり取りに自然と笑顔になれる作品でした。

また、観客をもミスリードする展開で、最後の種明かしでは登場人物とともにサプライズされている気分になりました。

ただ、同時にちょっとまどろっこしいなとも思ってしまいました。ストーリーとしてのサプライズ(=観客の驚きとか感想)に重きを置いていて、自分が登場人物の一人だったらと考えるとそのサプライズの方法は非効率すぎて、もう少しシンプルなサプライズにするかな…と思ってしまいました。

つまり、ストーリーのためのストーリーになっている気がして、登場人物が魅力的だったからこそ、そこが少し残念だったかなと思いました。

でも、総じて言えば、「何かが観たい」「できれば元気が出るものを…!」という漠然とした欲求をどんぴしゃで叶えてくれた作品だったのでとっても満足です。

劇場にいる間中、ここだけが私が生きてる感覚でいられる場所だなあと思いました。

関係者のみなさま、素敵な時間をありがとうございます!

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