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バックパッカー旅 トルコ編 vol.4

その日の夜はぐっすりと眠れた。7時あたりに起き、宿の朝食を食べる。4人がけのテーブルに1人で食べていると、1人の男性が相席してきた。この宿では宿泊している人数の割にテーブルの数が少ないので、誰かと相席することはよくあることだ。
見た目は40代で、アジア系の顔立ちをしている。もしかすると日本人かもしれない。「Where are you from?」と聞かれたので「I'm from Japan」と返すと、「私も日本人です」と言ってくれた。
彼は物井(ものい)さんという珍しい苗字の人だった。20代の頃にバックパッカーをしていて、さまざまな国へ行っていた。それでももう一度バックパッカーをしたかったらしく、50代になってもう一度旅を再開したとのことだ。

昼食後にばったり物井さんと会ったので、僕らは再び会話をした。散歩から帰ってきたところらしく、持っていたビール1缶を僕と一緒に飲むことになった。
どの場所でも10kmほどは歩き回るようにしているらしい。ギョレメは思ったよりも観光地化されていたことに驚いていた。
単身で旅をされている日本人に会ったのは初めてであり、僕も同じ部類なので興味をそそられた。しかし同じことをしていても、その根本となる動機は異なることにすぐにわかった。
彼はグランドキャニオンやヨセミテ国立公園などのいわゆる観光地そのものや、そこから見える景色に対して興味があり、未だ訪れたい場所が数多にも及ぶとのことだ。
そのことを聞きながら、僕の旅のベクトルはそれとは全く異なる「偶然」を求めていることに気がついた。それは物井さんを含めた人との出会いや、訪れる予定のなかった場所で景色をみること、鉄道の乗り方を誤解して罰金を支払うことだったりする。
そのことを話すと「旅にルールはないからねぇ、どこかに行くのも旅。何もしないのも旅。何をしても良いんだよねぇ」と言っていた。

その日、僕は宿を出る予定だったので、その時間まで物井さんと会話をして、夕方ごろに宿を出た。
数分ほど歩きバスターミナルに着くと、バスの時間まで特にやることがない。バックパックを背負いながら待っているのがつらかったのでベンチに座る。しばらくするとヨーロッパ系の顔立ちをした青年が隣に座り出した。大きなカバンを持ち、服が白い砂で汚れている。おそらく日中にギョレメの街を散策したのだろう。
彼が座るや否や「Where are you from?」と僕に語りかけてきた。これもまた偶然、と思いながら「I'm from Japan」と返す。

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