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大人は忘れてしまうから

メリー・ポピンズはありえないこともできる。
バンクス家の父は、昔自分もメリー・ポピンズに楽しい魔法を体験してた。
なのに、大人は忘れてしまった。
そんなことはできないと。
子どもたちもそれに染まり、上の子2人は魔法なんてありえないと思ってしまっている。
想像力を信じられなくなってしまった。


【1】

外で泥だらけになり、メリー・ポピンズにお風呂に入れられる。
そこで3人の子どもたちは不思議な体験をする。
お風呂に入った瞬間、別世界へ。
海の中にいて、イルカや魚たちと泳ぎ、バブルに包まれる。
冒険の世界へ。
信じられない魔法と想像力。


人生は楽しまないと、
重りをつけて沈んでしまう人もいる。
毎日の隙間を楽しまないと。


その体験を父に話しても、制されてしまう。
父はもう忘れてしまった。
昔の体験を、想像力を忘れて重りをつけて沈んでしまった。
子どもたちは大人しく引き下がる。


私は楽しめているんだろうか。
いまは凄く楽しい。
本を読んだり、ギターを弾いたり、ピアノを弾いたり、映画を観たり、絵を描いたり、散歩したり。
凄く楽しいよ。
これが自分は好きだったんだなって。
外に出て他人と関わるより好き。


【2】

父の借金を返す為に、母が大切にしていた器を売ろうとして、割ってしまう。
それを直す為にメリー・ポピンズとともに子どもたちは器の中に入る。
壊れた馬車を直し、ロイヤルドルトンミュージックホールへ。
その中でメリー・ポピンズが踊り出す。

こう歌い出す。

心が目に見えないように、
本も表紙の美しさに騙されちゃダメ。
中身読んだら、優しい王様、
詐欺師だとわかるかも。
中身こそが何より大切。

そして、子どもたちはなんやかんやで目が覚める。

またメリー・ポピンズは言う。

『なくならないものは、なくすことはない』

と。


ただこの言葉を並べられるより、例えや歌だとスッと入ってくる気がする。
中身は難しいよね、自分も他人も。


【3】

ロイヤルドルトンの器を直す為に、いとこのトプシーのところへ。
第二水曜日は、全部がひっくりカメになる日。
天井と床が逆さまになる日。
普段なら完璧に直せる、でも、第二水曜日に直すと、全てがおかしくなってしまう。
その為、トプシーは直すことを拒否する。
しかし、メリー・ポピンズは絶対に直させようとする。

拗ねたトプシーは歌い出し、逆さまの世界で逆立ちして見せる。
あまりにも哀れだろうと。
それに対し、メリー・ポピンズは

「哀れじゃない。
ラッキーよ。
あなたもひっくりカメになれたら、
違う景色が見えちゃうはず。」

全てがひっくり返ったなら、自分もひっくり返ればいい。

「別の場所に立てば、
別のものが見えるでしょ?」


世界は見方によって、悲劇にも喜劇にもなりうるんだ。
当たり前だけど、気付かない。
大切なことだよね。


【4】

最後の最後、家族全員で公園に行く。
風船売りのおばあちゃんが歌っている。

人生は風船だよ。中身次第だよ。
希望とか豊かな夢で満たせばすぐ風に乗れる。
歌声で満たされたら舞い上がるしかない。

風船を買う3人の子どもたち。

おばあちゃんは、

「気をつけて選んでね、いい子ちゃんたち。間違っちゃう人も多いんだから。自分にピッタリの風船を一つ見つけて。」

父は子どもに選ばせようとすると、

「まずお父さんからどうです?」

と訊ねる。

「風船なんて小さい時以来だ。」
「じゃあ、忘れちゃったでしょうね。」
「風船のこと?」

おばあちゃんは

「子どもの心よ。」

と。


子どもの心≒想像力なんだと思う。
そして、風船≒想像力なんだと思う。
利益ばかり追い求める人間が出てくるんだけど、その人の風船は浮かばないの。
舞い上がるしかないのに、浮かばないの。
そういう人間には足りないの。


そして、メリー・ポピンズはいなくなり、子どもたちも大人たちも全てを忘れてしまう。
あれは想像の世界の話だったんだと。



メリー・ポピンズのお話は、
世界観と音楽と胸踊る言葉たちで溢れていた。


服装、傘、小物。
優しくない優しさ。

メリー・ポピンズは子どもたちに距離を取って接しているけど、大切なことは確実に教えてくれる存在だと思った。


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お金よりもスキしてくれるとスキ