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シャトルラン

202008131054

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「シャトルラン」って覚えてますか。私の人生はここまでずっとずっとシャトルランです。先へ先へ記録の先へとひたすら似たようなところをぐるぐるしている。ずっとずっと走り続けているのに、いや走り続けているから、どんどんどんどん音が速くなって私を置いていく。どこへ行ける訳でもないけど記録用紙の評価が上の方になって気分がいい。

私体育は苦手でね、でもシャトルランだけはいっつも評価が良かったんです。負けん気が強いから。私よりずっと足が速くて体育の時不満げな顔を向けてくるスクールカーストのずっと上の人がだらしなく淘汰されていって、すっごくすごく気分が良かった。

だけど、次第に走っている人が減って、「応援席」が出来て、私に向かってくる声は皆無で、それだけなら耐えられるけれど、興味なさげに遊び始めた変にスカした奴が、「あれ、私さん残ってんの?」とか要らん事に気付いて、注目が向くと、もうダメ。

何となく底辺同士でツルんでいる冴えないクラスメートが、変なやる気を出して「私ちゃん、がんばれーっ!」なんて言った日にはもうダメ。それにつられてバラバラと2、3続く声なんか聞いたら本当にダメになってしまう。

途端に私の身体はへにゃ、っとなって、なるべく自然に2、3回粘ってみせて、ス、と抜けて、ススス、っと端っこの方から応援席のツレに合流して、「ダメだったよお」なんて下手に笑って、「もう黙れ」を押し殺すんだ。そうするしかないんだ。

私の人生はもうずっとずっとそんな感じ。終わんないシャトルランを繰り返して、繰り返して、記録用紙の評価だけちょこっと上の方になるけど、それ以外は全部ダメ。いつも置いてかれてまだぐるぐるしてる。シャトルラン、螺旋構造だったら良いのに。もういっそ下でも良いから、本当は上が良いけど、ぐるぐるしてるだけで別の景色を見たい。そんな都合のいい事、有りませんか。

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