【詩】 鈴虫と金木犀

眠れぬ夜は
今日
ではなく昨日の僕を
布団の中で追いかける

過去は
僕ではない人の言葉で語られる
屈折した光の向こう
拾い損ねたものを探す

景色は浅いまま
自室と社会を行き来する
答え合わせをするように
白と黒を繋ぐ

新鮮な空気の端と端に絡まった口唇に
なにか暴力的なものを感じて
頭を掻きむしった。
窓を抜けると鈴虫が
影を何重にも重ねたような暗がりを引き連れて
夜を下ってゆくところであった。


不安定がふさわしい午前3時
身体を起こして
今日の分の米を研ぐ。
少し肌寒い日が続いているから
エアコンのリモコンから電池を抜く。
部屋着の甚平に
袖を通す。

もう少し起きてようか。
鈴虫と金木犀
置き忘れた接続詞
それが今日の僕であった。




今が一番好きな季節です。
嫌なことは尽きませんが。

僕の夜は
後悔と、反省と、臆病な悪態で構成されています。
そこに鈴虫の鳴き声や金木犀の香りがしたら、もう少し穏やかになれる気がします。

以上。

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