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【小説】イエスマン

就活に力を入れるが中々実を結ばず平行してコンペに応募しまくっていた。
最高気温が更新される程の今年の夏にもかかわらず腐らなかったのは、僕が真面目だったからだろう。
どんなに応募しても佳作にも引っかかることはない、クリエイター職を志望してした私は、このままでは、”何者”にもなることが出来ないのだと自身に発破をかけまたパソコンの前に座り作品作りに没頭した。


新卒採用をしている会社のエントリーフォームに記入した内容に不備がないか部屋で一人指差し確認をした上で最後に履歴書とポートフォリオを添付し送信ボタンを押した。
ひと段落したこともあり、ゲームや電話をする友人が入っているディスコードを覗いた。通話中の参加者には一人しかおらず私は「寝落ちかな」とスマホを机に置きそのまま、エアコンを止め扇風機を点け窓を全開した。
窓から見えるコンビニの駐車場には自転車やバイクを横にたむろする中高生の姿があったが普段は疎ましく思うがその日は、少し羨ましく感じた。
彼らを眺め夏の夜空に目が慣れたころ、スマホの通知音で我に返りPCの前に戻った。
連絡してきたのは、一人通話に参加していた彼からであった。

「起きてる?」

その一言だった。私は、彼からのメッセージに返信をせず
通話に参加した。


「寝落ちかとおもったよ」

「待ってれば誰か来るかなって思ったんだけど、誰も来ないんだわ」

昼に寝たから今日はまだしばらく起きているつもりだと言う彼に
私は、ゲームをしたい気分でもなく夜に身を任せ、すこし悩みを彼に話し始めた。
ひとしきり話し終えると彼から、1つの映画を勧められた。

今の話を聞いて、お前に見てほしい映画を思い付いた
と彼が呟くように言い、立て続けに話し始めた。

「イエスマンって映画があるんだ、何を言われてもイエスと答えて
金を貸せって言われてもイエス、絶対要らないだろって思う資格を一緒に勉強しよう!と言われてもイエス」

「いいか、お前は平成のイエスマンになるべきだ何故なら、俺は既にイエスマンでお前の悩みで悩んだことがないからだ!」

詭弁ともいえる彼の話術に私は魅了され
イエスマンになると彼と約束をした。

「それじゃあ、俺とゲームやろうな。早く起動してくんね?」

急に言われ、今日はゲームするつもりで来たわけではないと戸惑う私に
彼は
「返事は?」

「イエス!!」






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