見出し画像

学ラン姿で迎えた新学期1日目

新学期。

学校へ到着した時、時刻は登校時間よりも50分も早かった。
元々早く行きたい派ではあったが、こんなに早く着くは久しぶりだった。

俺は昨日から学ラン登校を許可された。
男子として当然の権利を得ただけなので、俺自身は何も変わらない。だけどみんなは受け入れてくれるだろうか...

淡々と昇降口に入り、階段を登った。
「大丈夫、大丈夫。」
そう唱えて教室へ向かう。

俺がFtMであることは昨年度にクラスメイト全員にカミングアウト済みである。クラスは3年間変わらないので特に心配はない。

クラスの横を通り、いつも通りドアを開けた。

初めに聞こえたのはクラスメイトの女子の声。

「え、ユウちゃん!?」

そして、ありすの声、

「おぉー!」

初めに声をあげたクラスメイトの女子は

「すごぉーい!かっこいい!!」

と言ってくれた。素直に嬉しかった。

ありすも嬉しそうに駆け寄ってくれた。久しぶりに会う相棒は...髪がものすごく伸びていたw

教室にいた残り数人もいつもと変わらず接してくれた。
朝早いのであまり教室に人はいない。

時間が経ち、続々とクラスメイトが入ってくる。

その中の一人(男友達)が

「その学ラン誰の?」

と聞いてきた。

「いや、自分のだよ。」

と答えると

「え、許可もらったん?いいね!」

といつも通り。あんまり話したことない子だったけど"いいね!"と言ってくれたことが嬉しい。

その後、普通にHRが行われ、掃除時間になった。
移動中、仲のいい友達2人に絡まれた。

「おおん?なんだその格好は?」
「ユウくんどうしたの?」

2人に軽くグリグリされながら俺は答えた。

「俺の制服!2年かけてやっと許可もらった!」

すると

「パッと見気付かんぜ!そんなに違和感ないもん」
「確かに。でも気づいた時は誰かのを着てるかと思ったよ。」

まだ学ランの許可が降りていない頃も俺は友達の学ランを(こっそり)着ていた。それを見ていた2人からしたら違和感ないのは当たり前である。

だけど他クラスの連中は......

やっぱり少し視線が気になる。でも正直、昨日職員室へ入った時の視線の方が痛かった気がする。2日目の余裕もあるかもしれないが。

掃除場所へ移動途中、昨年度赴任された保健室の若い先生とすれ違った。すれ違いざまに

「あれ?前は何着てたっけ?」

と聞かれたので

「女子のブレザーですよ。」

と答えた。すると

「そうだったね。制服、良かったね。」

そう言われて安堵した。職員室へ入った時は冷たい視線が痛かった。だけどこの先生はクラスメイトのように素直に褒めてくれた。それだけで救われたような気がする。

時は流れて放課後。

俺は売店に用があったので走って向かった。

俺の学校の男子は制服に校章を付けなければならない。それを買うために。

売店のおばちゃんに

「校章ありますか?」

と聞いた。

「あるよ〜。○○○円ね。かっこよくなったね〜、制服。」

...優しい。本当の意味で何も知らない売店のおばちゃんに、そんな風に思ってもらえるなんて...

すると横から吹奏楽部のクラスメイトが来た。

「ユウくんかっこよくなったねー、いいなぁ。」
「それ自分で買ったの?やばwすごw」

と褒めてくれた。昨日は視線が痛くてかなり不安だったけどこういう風に言って貰えて本当に嬉しかった。安心した。

この後部活のミーティングがあったので、走って向かった。

全員の集合を待っている間、昨年度、現国を担当されていた先生にガシッと腕を掴まれた。

え?と思い、先生の方を見ると

「あなたかっこよくなったわねぇ〜〜!」

あまりにも突然でびっくりした俺は

「え、あ、ありがとうございます!」

少々慌てながらお礼を言った。

職員室の、ましてや前から関わりのあった先生にそんな風に言われるなんて思ってもみなかった。

その後、部員、顧問共に集合し、ミーティング。部員は事前に俺が今日から学ランを着ると知っていたから特に反応はなかった。

その時、顧問に聞かれたのは

「ユウくん?さん?」

あー...。

「どちらでもいいですよ。」

俺はそう答えた。(結局呼び捨てで呼ばれましたw)

最初にも書いたが、俺自身は変わってない。
着る服が変わっても中身は変わってない。

だから呼び名を変えづらかったらそのままでもいいし、"くん"付けで呼んでくださるならそれでいいや、と俺は思う。

俺の学校は男子は"くん"、女子は"さん"付けで呼ばれる。

まぁ、俺は男子なので"くん"で呼ばれるのが理想なんだけどね。クラスメイトにも好きなように呼んでもらってるから、特に気にしてない。

昨日は、新学期が不安で仕方なかったけど
クラスメイトみんな暖かくてすごく嬉しかった。いつも通りで安心した。

他クラスは(;-ω-)ウーンって感じだったけど大丈夫。何とかなりそうな気がする。

そして、もうすぐ委員会決めがある。
担任に聞いたら、一応まだ"女子"として委員をしなきゃいけないみたい。

俺は2年間保健委員してた(先生が勝手に決めた)けどかなりきついものがあったから今年度はしたくないな...

学級委員に興味あったけど、他女子に迷惑かけそうでどうしようか...

なんて考えて、男子学級委員になりたいと言う、クラスメイトに相談した。すると返ってきた答えは驚くべきことだった。

「俺は委員を男女分けなくてもいいと思う。男×男でも全然いいと思う。だからユウさんが学級委員やってくれるなら大歓迎!俺の抜けてるとこをサポートして欲しい。なんなら俺が担任に言っておいてやるぜ?」

...びっくりした。ほんとに俺を男として、いや俺自身を見てくれてるんだなって思った。

そんな彼は発達障害を持っている。
同じ少数派と呼ばれる存在だからこそ通じ合えることもあって、よく学校の制度や人権について話す。

彼の言葉のおかげで
「やろうかな」が「やってみたい」
に変わった。

今後の学校の生活が楽しみです^^

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?