脳梗塞による失語症とは

失語症とは脳梗塞や脳出血などの疾患によって大脳半球の特定部位が損傷し、元々正常な言語機能を獲得していたにも関わらず、言語の理解や表出に障害を来した状態と定義されています。

小難しい表現ですが、要は「聴く」「話す」「読む」「書く」などの
行為全般に異常を来してしまう状態
を指します。

例えば他人に自分の名前を聞かれ、答えようとしたとします。
耳が聞こえない人であればそもそも質問が聞こえませんが、
「聴く」能力がないだけで失語症ではありません。

脳梗塞の後遺症である構音障害では、舌や口腔内の筋肉が
上手く動かなくなることで上手に話せなくなりますが、
この場合も「話す」能力がないだけで失語症ではありません。

記憶障害であれば自分の名前を思い出せませんが、
これも失語症とは異なります。

それに対し、失語症の方は言いたい言葉を言葉にできず、
うまく言語を表出できないため、「聴く」ことはできても、「話す」
「読む」「書く」などの能力が失われているため、
名前を相手に伝えることができない状態
です。

失語症の症状は脳の損傷部位に応じて異なり、
「聴く」「話す」「読む」「書く」の能力次第でいくつかに分類されます。

失語症の分類

そもそも言語を「聴く」「話す」「読む」「書く」能力は、
右利きの人であれば全員左脳に、
左利きの人でも2/3は左脳によってコントロールされています。

残りの、左利きの人の1/3だけは右脳でコントロールしているため、
ほとんどの場合左脳が障害されなければ失語症のリスクは低いと言えます。

その中でも、側頭葉後上部(ウェルニッケ野という)では言語の理解を、
前頭葉後下部の運動皮質のすぐ前方(ブローカ野という)では
言語の表出を主に担当しています。

これらを踏まえてざっくりと3つに分類されます。

感覚性失語

ウェルニッケ野が障害されると、
自分は発する会話自体は流暢に話せても言語の意味を
理解できなくなるため、復唱したり読み書きもできなくなり
ます。

わかりやすく言えば、会話できたとしても内容が噛み合わなくなります。
これを感覚性失語(ウェルニッケ失語)と言います。

運動性失語

それに対し、ブローカ野が障害されると、
言われたり書かれた言葉の意味はある程度理解できても、
言語の表出ができなくなるため、
会話も非流暢で復唱や読み書きもできなくなり
ます。

わかりやすく言えば、会話内容は理解できても言葉が出てこないため、
コミュニケーションに大きな支障を来します

これを運動性失語(ブローカ失語)と言います。

それ以外の失語

脳の損傷部位に応じて、感覚性失語と運動性失語が
はっきりと判別されずに症状が混ざってしまうこともあり、
下記のように多数の失語症が存在します。

  • 全失語→言語の意味が理解できなくな理、かつ会話も非流暢(ウェルニッケ失語+ブローカ失語)

  • 超皮質性運動失語→言語の意味は少し理解できて復唱は可能だが、会話は非流暢

  • 超皮質性感覚失語→会話は流暢でも、言語の意味は理解できず、復唱だけ可能

脳の機能は非常に緻密であり、実際には全ての失語症の患者を綺麗に
上記のように分類できるわけではなく、
非典型的な症状を示す方も少なくありません。

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