愛想のないラーメン屋の店主のことをマジメに考えてみる。
よく、ラーメン屋に行きます。
ときどき、まったく愛想のない店主がやっている店がありますね。
私は、料理は舌だけで味わうものではないと思う方なので、居心地が悪かったりすると、それ以降、足が遠のくことが多いです。
もちろん、何に重きを置くかは、人それぞれ。
愛想が悪くても、味が良ければそれで良い、という人もいる。
私のように、そうではない人も、いる。
ここで少し、店主の立場から、これを考えてみようと思います。
ラーメン屋の店主は、ほとんどの場合、ラーメン屋の収益で生計を立てています。起業の際、借金している場合もあるでしょうし、テナント代を毎月支払っている場合もあるでしょう。収益がないと、続けられない。
つまり、ラーメン屋が傾くと、生活が傾く。
さらに言い換えれば、客足が減ると、生活が傾く。
つまり、ラーメン屋に人生を賭けている、ということです。
だから、味にこだわる。
スープの研究や開発に心血を注ぐ。
これに合う麺や具材を探すことに情熱を傾ける。
そうして、スープ、麺、具材の最高の組み合わせを見つけ出す。
一杯のラーメンが美味しいかどうかで、人生が変わる。
そういう世界で生きているわけです。
ただ前述のように、味が良いだけではいけない、と考えるお客も一定数います。
お店の雰囲気や、過ごしやすさも、大切、と。
その点を考え合わせてみると…
お店を綺麗に掃除しておく。
お店の雰囲気にあったBGMを流す。
わかりやすいメニュー表を用意する。
こういうことをするかしないかも、同様に店主の人生に大きく影響してしまうわけです。
この観点で「接客」という点に注目してみましょう。
たとえば、仏頂面で対応する。
たとえば、なかなかお水が出てこない。
たとえば、どんぶりをドン、と置く。
これらの行為は、私たちお客にとっては「その店にいる瞬間だけ」影響する事柄です。
でも、店主にとっては、「今後の人生」に大きく影響している。
だって、「もう来ない」と思う人がいるわけですから。
そう考えると、色々と見えてくるものがあります。
ラーメンの味に注力する。
ラーメンの見栄えにこだわる。
店を綺麗にしておく。
接客を丁寧にする。
ラーメン屋運営において「何をどうするか」。
そのすべてが、人生を賭けて行なっている。
そこには、まぎれもない「覚悟」がある、と思うのです。
人間誰しも、すべての行動に全力を注ぐことはできません。
Aに力を注ぐということは、Bを少しだけ緩めることかもしれません。
そういう、微妙な振り分けの中で、出来上がっている、「ラーメン屋」という作品。人生を賭けて店主が苦心し、設計したバランス。
人生を賭けているからには、全力をそそいでいることは、間違いない。
ただ、その振り分けは、店主の方針によって大きく異なる。
結局のところ、「好きな店」になるかどうかは、その「全力の振り分け方針」が好みかどうか、ということに尽きるのでしょう。
私は、ラーメンをすすりつつ、そんなことを考える。
そして、店主の人生や決断に思いを馳せずにはいられないのです。
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