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市内RPG

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福井丘県子郡市。市役所発の魔王討伐に、高校生勇者がゆるーーく挑む。不定期連載中。
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#眠れない夜に

市内RPG ②仲間

二師鉄電車と二師鉄バスに乗って、明仙高校へ行く。夏休みなのに、補習があるなんて。進学校だからしかたないが、つまらない。 大穂駅からヤスが乗ってきた。 「おはよう」 「おぃーす」 ヤスのテンションは朝はこのくらい。いつものことだ。本人曰く、低血圧らしい。ひくいテンションのヤスとはなかなか盛り上がれない。無言で、電車に揺られている。ぼくらは電車の一番前に乗る。混まないし、乗客の先頭にいるということは何かうれしい。 次の足坂駅からはヒラが乗ってくる。いきなりヒラが尋ねてきた。

市内RPG ④魔王討伐説明会

「主な説明は私、尾林がいたします。企画の目的、活動、評価と報酬の順に説明します」尾林さんは話し始めた。 「まず、この企画の目的は、魔王を倒すことです。魔王は世界の破滅を目論んでいます。邪悪な魔物を従えて虎視眈々と世界を狙っているのです。しかも、魔王はどこにいるかわからない。丁寧な探索が必要です。魔王を見つけ、そして、魔王を倒すことがこの企画の目的なのです。」尾林さんは少し興奮気味に言った。 「次に、活動を説明します。先ほど述べた探索と戦闘と報告の3つがあります。探索は、魔

市内RPG ⑦火の呪文

「どーなの?魔法使える?」ぼくとヤスはヒラに尋ねた。ヒラは、魔法使いになったのだ。なったのかな、市役所に登録しただけで。 「いやー、やっぱり練習と登録がいるみたいでねー」ヒラが言った。 「どうゆうこと?」 「魔法はイメージと呪文と効果登録が必要らしいんだよ。ケータイがキー局になってる。例えば、火の魔法をイメージする。イメージはケータイを通して現実の効果がつくられる。つまり、目の前に火がつくられる。さらに、呪文によって発動する。火が魔物に向かって放たれるらしい。レベルアップの

市内RPG ⑧会心の攻撃

ぼくとヒラとヤスの3人は、同封されていた武器を持って集まった。 ぼくとヒラは木の棒。ヤスはプラスチック?なかなか硬そう。 この違いは何だろう。職業の違いか? ぼくは勇者。ヒラは魔法使い。ヤスは戦士。 ヒラは木の棒を振り回しながら言った。 「これはヒノキの棒だね。ヒノキボー。ほら、ホームページに書いてある」 そう言って、子郡市のホームページをケータイで見せてくれた。ホームページには、「ヒノキボー、初心者の武器」と書いていた。 「あった、ヤスのはバトルステッキ、これだ」

市内RPG ⑨スライム

戦士のヤスはバトルステッキを装備している。 魔法使いのヒラはアツッの魔法を身に付けている。 勇者のぼくはヒノキボー。勇者のはずなのに。何か頼りない。まあ、とりあえず、ケータイに登録して装備した。 ヤスが言った。 「装備したら、戦いたくなるな」 「スライムくらいなら、勝てるかも」 ヒラもやる気だ。 子郡駅前噴水広場にそいつはいた。 小犬くらいの大きさで、水色の半透明のボディは形を変えながら動いていた。目や口は見当たらない。ただ半透明のボディの奥に核と呼ばれるソフトボー

市内RPG ⑩勇者のレベル

コンビニの広い駐車場で、グリーンスライムを見つけた。白線の汚れをかじっているようだ。 戦士ヤスと魔法使いヒラがゆっくり近づく。 よく見ると、2匹。 「大丈夫かな」ぼくは言った。 「勇者のくせにチキンだな」ヤスが言った。 「アツッ」ヒラが突然、火の呪文を唱えた。 「オリャー」あわててぼくも飛び出した。スライムAをヒノキボーでぶっ叩く。 「オリャー」ヤスも攻撃する。スライムの核をバトルステッキで突き刺す。 スライムAの動きがみるみる鈍くなり、動かなくなった。 動かなくな

コラボ企画「市内RPG」10回記念

高校生がバイト感覚で魔王討伐を目指す。ゆる〜い冒険譚「市内RPG」。 第10回記念として、絵が大好きな方とのコラボ企画を行います。 連載中の「市内RPG」を読んでいただき、インスピレーションを受けたイラストやマンガを気軽に投稿していただけたら、うれしいです。 イラストのもとになった「市内RPG」を貼り付けて、コメコメントいただけると、マガジンにまとめて拡散させていただきます。 ⑥勇者誕生? ⑦火の呪文 ⑧会心の攻撃 ⑨スライム ⑩勇者のレベル  冒険は続く。

市内RPG 11装備と4人目

翌日、1時。また、子郡駅に集合した。 「やっぱり休息は大事だねー」と魔法使いヒラ。 「力がみなぎるねー」と戦士ヤス。 「みんなレベル2だからねー」と勇者のぼくは言った。 「ところで、持って来た?」ヒラが尋ねた。 「一応、持って来たけど」 昨日、家に帰ったところで、ヒラからラインが来た。防具になりそうなものを持ってこいというのだ。 剣道部のヤスは防具一式を担いで来ていた。 「身に付けて」 「ここで?」 「そう。早く」 ヤスは服の上から面と胴、そして小手を身に付けた。 「T

市内RPG 12強くなるパーティー

ぼくら勇者、戦士、魔法使い、僧侶のパーティーは、子郡駅から電車に乗って、1つ北の小保駅で降りて、アスファルトの道を歩いている。 「ちょっと遠くない?だから、明日にしようと言ったのに」 さっきパーティーに加わった僧侶のカナは、文句をたらたら言いっぱなしだ。 「明日、自転車でって言ったのに」 戦士ヤス、魔法使いヒラ、勇者のぼくはそれを聞き流しながら歩いた。 広い県道が真っ直ぐ伸びている。片側は住宅地、もう片側は田んぼが広がっている。風はあるのだけど、日差しが強い。目的地は運動

市内RPG 13カゲとの遭遇?

レベル5になったぼくらは、市役所での情報をもとに、子郡運動公園に向かっている。 レベル5の戦士、勇者、魔法使い、そして僧侶。 もうスライムやジャンボタニシは恐れない。 市役所の尾林さんは、子郡運動公園にいるカゲから情報を聞くようにと教えてくれた。無事にカゲに会えるのだろうか。 カゲ。市役所の探索部。一般市民を装って、勇者を支援する。 子郡運動公園にそのカゲがいて、魔王の情報をつかんでいるらしい。 子郡運動公園。市民の憩いの公園である。 プロ野球チームの福井丘ソフトバ

市内RPG 14蛙とコンビニ

ピンクの帽子を被ったおじさんランナーは足を止めない。 ぼくら、つまり、勇者と戦士、魔法使い、僧侶の4人は何とかおじさんに追いついた。 「おじさん、おじさん、止まってよ」 ぼくらは走りながら話しかけた。おじさんは止まらない。ただ何かつぶやいている。小さい声だ。 ぼくらは伴走しながら耳を澄ました。 「魔王は蛙神社。魔王は蛙神社。魔王は、、、」 蛙神社。 蛙がたくさんいる神社。ここからそう遠くはない。小高い丘の上にあり、敷地の真ん中には小さな池がある。たくさんの蛙の置物

市内RPG 16 蛙神社から出たカエル

ぼくら勇者、戦士、魔法使い、僧侶のパーティーは子郡市の蛙神社で、青いウシガエルと戦っている。 小さな青い蛙にたくさんの蛙がくっついて、牛くらいの大きさの青いウシガエルになったのだ。 前足を振り回す。 噛みつく。 舌を伸ばす。 跳ねる。 青いウシガエルの攻撃に苦戦している。 僧侶のカナは武器の木魚を青いウシガエル呑まれてしまった。 「このクソ蛙」カナは黙って木魚を持ち出していたようで、怒り心頭だ。 カナの方が蛙よりもコワイかも。蛙、蛙、、、コワイ、、、これならどうだ?

市内RPG 17レベル8

蛙神社で青いウシガエルを倒したぼくらのパーティーは全員レベル8になった。 戦士ヤスは相変わらず呪文を覚えない。 勇者のぼくは、火の呪文アツッと回復呪文ナムーを覚えていた。 しかし、今回のレベルアップでは何も覚えなかった。こんなこともあるのだ。 魔法使いヒラは呪文がそろってきた。 火の呪文アツッと強化呪文メチャアツッ。 水の呪文ツメタ。 雷の呪文ビリー。 どれも攻撃魔法だ。しかもビリーは金縛りの効果も期待できる。 僧侶カナも呪文が増えた。 回復呪文ナムーとその全体呪文ナ

RPG 18勇者、横熊山遺跡へ

蛙神社の青いウシガエルを倒したぼくら勇者パーティーは、次の目的地、横熊山遺跡を目指す。 レベル8になり、自信もちょっとついてきた。 「蛙こわかったー」 お寺の娘の僧侶カナは首をすくめて言った。 「木魚が戻ってきてよかったね」 そんなカナに魔法使いヒラが言った。 「う○こ花火買っててよかったな」 戦士ヤスは自分の手柄のように言った。  さて、目指す横熊山遺跡。 横熊山遺跡は光沢にある小さな遺跡だ。 住宅地の真ん中にある。 遺跡とは、わからないくらい。 二師鉄電車の