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【年齢のうた】からあげ弁当●ずっとそのままでいて!「22」

こないだ、営業トークみたいなのを30分ぐらい聞いたんですけど……あ、音楽とか自分の仕事とは関係ないジャンルのものでね。「これのいいところはこんなんです」みたいなの。
その話の最中に、しょっちゅう「●●させていただいております」「●●させていただきまして」という言い方が出てくるんです。たぶん1分間に2、3回ぐらいのペースで。
これは、現代の営業マンは「させていただきます」という言葉がないと仕事にならんだろうなと思うくらいでした。

青木はなるべく使わないようにしています。まったく使わせていただかないこともないですけども。

ところで。僕がGLAYのTAKUROにインタビューした記事が公開されています。短時間の取材だったわりに内容は濃いはず。終盤のHISASHIの話からの流れはもっと突っ込みたい気持ちもあったけど、現時点ではこのぐらいでとどめておいて良かったとも思っています。
ぜひご一読を。

この回で書いたことと関係する話もしています。

一方、先週からの自分はライヴ観覧が続いてました。

まずはbar italiaというロンドンのバンド。超クール!

続いて、古市コータロー。還暦おめでとうございます。

スコットランド出身のザ・スナッツは、昨年のサマソニ以来。この名曲がラストナンバーだった。

それからSAKANAMON。アク強し。

そして、きいやま商店も。実は10年以上前にインタビューしたことあります。


5日連続のライヴ通いなんて何年ぶりだったかな。まあ今回の中には、家族で観たのもあるけど。

で、この5日連チャンのちょっと前に、日本の若いバンドのライヴも観ていました。
それが今回取り上げる、からあげ弁当です。

バンド名=からあげ弁当


「からあげ弁当」とはバンドのことである。こんな名前のバンドがいることを去年知った僕は、心底驚いて、心底笑った。
か……からあげ弁当!? バンドの楽屋弁当のメニューじゃなくて? メンバーが好きな食べ物がバンド名と間違えられたんじゃなくて?
そんなんでいいのか!? おそらくは君たちが青春を懸け、人生を注ぎ込んで音を鳴らしているはずのバンドの名前が、日本のどこの街にもあるお弁当と同じでいいのか!? あ、珍しい弁当の名前ならいいというわけでもないが。

それが、いいみたいなのである。

しかもヴォーカル&ギターの男の子の名前は「焼きそば」という徹底ぶり?に、さらに驚いた。ちなみにベースは春貴、ドラムスはこーたろーの、3人バンド。ただしこの編成は6月7日の大阪・心斎橋JANUSでのライヴが最後で、それ以降はRyu-no.という新ギタリストが加わった4人バンドになることが発表されている。

さて、からあげ弁当は、3人とも専門学校の生徒同士で、結成してまだ2年半ちょっとの若いバンド。というわけで、現時点で出ている彼らへのインタビュー記事はことごとくバンド名(とメンバー名)の話になっている。ムリもないだろう。

「かっこよさゼロにして、愛着が湧くようにしようと名付けたんですが、メンバーも気に入ってくれましたね。まぁ、他の子らのバンド名は何て読むんやみたいな名前ばっかりでしたし」

春貴:ほんまになんでもよくて。覚えてるかわからんけど、LINEを遡ると候補が2つ送られて来てて……。

焼きそば:「雨天決行」ちゃん?

春貴:違います! 最初、出してきた提案が「からあげ弁当」と「日替わり弁当」で弁当は絶対ゆずらんくて。そしたら僕とギターが「日替わり弁当派」で、ゆーへーだけ「からあげ弁当」だったんですよ。だから「もう、日替わりでいいんじゃない?」て言ったら、こいつが「絶対にからあげ弁当がいい!」って。

こーたろー:この人、自分で一回決めると譲らないんです(笑)。

「からあげ弁当は最初から決まってたバンド名で、焼きそばは途中からですね。名前は別に何でもよくて、最初はアーティストネームとかもなかったんですけど。でもUKプロジェクトと組むことが決まって、あらためて『名前どうするの?』ってなった時に、からあげ弁当、みたいなノリで、つい焼きそばって言っちゃったんですね」

ーーみんな好きですよね、焼きそばもからあげ弁当も。それくらい愛されるものになりたいという気持ちがあった?

「……あー、もちろんありますけど、だからその名前を付けたわけじゃなくて。後々になって考えたら、みんなに愛されてる食べ物やなぁ、俺もそうなろうかなぁ、くらいの感じ」

なるほど、「日替わり弁当」案もあったのか。
いずれにせよ、ノリというか勢いというか、はずみで名付けたようである。何でも良かったとか言ってるし。
とはいえ、おそらくだが、これは「適当に付けた」という意味ではない。むしろ「適切な名前にした」ということでもあると思う。深読みしすぎか? いや、そんなニュアンスがあるように思うのだ。

と、今ではそんなことまで考えているが、最初はもっと違うことを思った。
まあエレファントカシマシも、出てきた時は「ずいぶん変わったバンド名だなぁ」と感じたことを、まず。

それに70年代後半のパンク~ニューウェイヴ以降の時代は、もっとトンガったバンド名がたくさんあったものだ。暗黒大陸じゃがたら。スターリン。赤痢。ガーゼ。非常階段。ハナタラシ。
などなど、多数。偏っていて申し訳ない。


さらに前の時代の村八分なんて、放送禁止の言葉である。でもバンド名だから仕方ないという。


この流れで、外道も。


しかし今の時代に「からあげ弁当」とは、かなり意表を突かれた。ちなみに関西のバンドなので、こうした思い切ったこと、周りと違うことをズバッとやってしまう伝統は受け継がれているとも思える。
今や世界的に活躍する、おとぼけビ~バ~も関西のバンドだ。


ただ、僕はからあげ弁当を、バンド名で惹かれたから取り上げるのではない。楽曲も、それにパフォーマンスも優れているからだ。

先日初めて観たライヴがそうだったが、このバンドのストレートな楽曲と、それに共演バンドの傾向もあって、会場にはちょっと青春パンクっぽいムードもあった。からあげ弁当にはそういう類の曲もあるのだ。
ただ、決してパンク・バンドの範疇にとどまる音楽性ではなく、そのはしばしにはヘヴィ/ラウド・ロックやミクスチャーの要素も感じられる。焼きそばのヴォーカルには力強い上に優しさも人の好さも漂っているし、リズム隊はかなりの実力者だ。サウンドチェックの時には軽~くレッチリをやってたくらいである。

それに初期(と言っても一昨年)の曲も演奏していたが、フォーク的な味わいが強く、曲も声もかわいさがある。これはこれでいい感じだ。

というわけで、知らない人がほとんどだろうということと、バンド名の件もあって、基本的なところを押さえておいた。

で、彼らをこの【年齢のうた】で取り上げるのは、期待の新鋭バンドだからという以前に、年齢ソングがあるからだ。
「22」という曲である。

いつまでも僕らは22


からあげ弁当の「22」は、この春にリリースされたEP『最高更新』に収録されている。

これは焼きそば自身のことを唄っている曲のようである。22才という自分のこと、その若さの中であれこれと思っている心の内側について。
それがみずみずしいバンド・サウンドとともに、そのまま表現されている。

──"OH MY GOD"の〈自惚れた才能は君を乗せてどこまでも進む〉という歌詞は若者の特権とも捉えられますし、今作は"22"や"ティーンエイジャー"など年齢がキーワードの曲もありますが、焼きそばさんのなかで「年齢」はどういう解釈なのでしょうか?

焼きそば:俺も完成してみて「年齢にまつわるもの多いな」って思ったっすね(笑)。それは俺が今年23になる歳やからかな。周りに新卒社会人1年目の友達がたくさんいるんです。この春から地元を離れて就職する友達に対しての感情が"22"ですね。ほんまにアホみたいなやつばっかなんで(笑)、ずっとそのままでいてくれよ、俺もずっとそのままでいるよって。だから人生の大きな節目みたいなタイミングが、年齢系の曲を多くさせたのかも。普段はそんな年齢のこととか気にせんかな。年上とか年下とか関係ないというか。だからビバラでめっちゃELLEGARDENの細美さん(細美武士)に話しかけて。

──そうですね。社会人もそうだろうなと。

焼きそば:でも人を傷つけるようなことではなくて、なおかつ自分でケツ拭けるぐらいのことやったら、ちょっと道踏み外してもええかなと思ってます(笑)。そういうことをこれからもどんどんやっていって、怒られていこうかなと(笑)。実際"ティーンエイジャー"も完成したのはレコーディングの2日前とかで。ギリギリすぎて「どうしよう、なに書こう」と悩んだ結果、いつも通り自分の送ってきた人生を書きました。やっぱ馴染みのあることは書きやすいですよね。子どもの頃はめっちゃ楽しかったし、戻れない寂しさもあるっちゃあるっすけど、いまをどう楽しく生きられるかが大事やと思ってますね。何歳になっても心さえ若かったら人生おもろいと思うんです。


同じ22才の友達たちに、ずっとそのままでいてくれよ、俺もずっとそのままでいるよ、という歌詞。こんな話を聞くと、ちょっとグッと来てしまう。
そう思ってしまう理由としては、ずっとそのままでいることなんて難しいだろうという気持ちが見え隠れしているからだ。


MVは当て振りなのでこーたろー(Dr)と春貴(Ba)はいつも以上にすごいパワフルなパフォーマンスだった。
地元の人たちに贈ったみたいな曲で、就職して23歳の年になるけどいい意味でいつまでも若いままでいようみたいな。みんな聴いてくれていて、ちゃんと届いているのが嬉しい。


先ほどのインタビューにもあったが、このバンドには年齢のことを唄ったほかにも歌がある。僕はまだ焼きそばと話したことはないが、おそらく彼は、人が歳を重ね、成長もしていく中で、変わっていくこと、変わっていってしまうこと、変わらないといけないこと、への気持ちが強い人ではないかと思う。

だから「22」は、疾走するビートが振りまく痛快さや爽やかさが広がる空間の中に、ほんのりとしたホロ苦さ、せつなさが舞っているように感じる。
もはや大人の年齢になってしまった者としては、そのビターな感じもまた、まぶしく思えてしまうのだ。

からあげ弁当! これからどんどん突っ走っていってほしい。


つばめグリル池袋ルミネ店で
豚ロースステーキを食べました。
ここのは黒コショウが効いているんだよね

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