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なぜ問題作が評価される?【蒲団・一兵卒】岩波文庫チャレンジ55/100冊目

教科書で見た覚えのある田山花袋「蒲団」。チャレンジ55冊目に読んでみれば、何コレと思ったのが率直な感想。


・文壇に衝撃を与えた!
・自然主義の代表作品!
・エポックメーキング!    ということになっている。

作品でなく、評価する人

女性目線と男性目線で見る所が違うのかもしれないが、自分としては受け入れがたい心情や行動が綴られており、あるがままは醜いのだと言われても、理性でコントロールできない欲を白い目で見るのみ。

当時においても非難・嘲笑はあったよう。文壇が二分された事がエポックメーキングなのだとか。作者においては非難は織り込み済みで、次のような説明をしているらしい(解説より)。

私の「蒲団」は作者には何の考えもない。懺悔でもないし、わざと醜事実を選んで書いたわけでもない。ただ、自己が人生の中から発見したある事実、それを読者の眼の前に広げて見せただけのことである。読者が読んで嫌な気がしようが、不愉快な感を得ようが、またはあの中から尊い作者の心を探そうが、教訓を得ようが、そんな事は作者にはどうでも良いのである。

周りなんてどこ吹く風、としているのは気持ちが良い事だが・・
一歩引いて、作者・作品としてこれはこれなんだと思う。

よく分からないのは評価した側の人の気持ち。全く分からない

赤裸々告白、嫌なのは仮面

簡単に内容を紹介してしまえば、妻子ある男が今の生活にマンネリ、若い女に惚れ込む話。しかも惚れた子に虫がつかないよう、自宅に住まわせ、彼氏ができたと分かれば嫉妬に狂って酒を飲んで悪態をつく。

2人の恋の温かさを見る度に、胸を燃して、罪もない細君に当たり散らして酒を飲んだ。夕飯の菜が気に入らぬと言って、御膳を蹴飛ばした。

こういう場面が度々出てくるが、何が嫌かと言えば、これは作者自身の話、現実にあった話だからだ。良い評価としては、リアリティが凄いとか、現実に忠実とか、普通なら隠そうとする心の汚さを赤裸々に告白した作品とか言われている。

自分が1番嫌悪したのは、本心は嫉妬からなのに、学業が疎かになる事を盾に、彼女の両親へチクる。若い恋人たちの仲を割こうとする。

彼女が心配だからと紳士然で語る。人の良い仮面を被っているだけにタチが悪い。その実は腹黒いのに、彼女からも両親からも感謝・尊敬される気持ち悪さ

最後は、彼女が実家に戻る事になり、彼女の夜着の匂いを嗅いで、それまで彼女が起居していた蒲団に入って泣く所で終わる。こんな心動かない涙があったか。

始終嫌な気持ちになる小説だが、女性が自分というものを持ち、自立しようする姿は少し好きだった。

当世の女学生気質のいかに自分らの恋した時代の処女気質と違っているかを思った。昔のような教育を受けては、到底今の明治の男子の妻としては立っていかれぬ。女子も立たねばならぬ。意思の力を十分に養わねばならぬ。

頭があるだけに、それが悪い方へ働くと狡猾になる

ちなみにこの彼女なる人物、「蒲団」発表後はその渦中に巻き込まれ、その名も知られている・・(リンクはWikiに飛びます)。

なぜ教科書に?

こういう内容だと分かれば、なぜこれが教科書に・・という疑問が沸く。少し調べた程度ではよく分からない・・何を学生に教えたいのか、なぜ教科書に載せているのか詳しく知っている方がみえたら教えて欲しい。

時代の勉強ですか?
女性目線の男性の勉強ですか?男性目線の反面教師としてですか?

先にも触れたように、作者としてはありのままを提示しただけで、読者がどんな感想を持とうが気にしないという。であれば、ああだのこうだの議論することにも果たして意味があるのかもよく分からない。

自分には、この作品の文学的価値は分からなかった・・(ので評価★1です)

ちなみに収録されている他作「一兵卒」も自身の体験、従軍経験から日露戦争、遼陽会戦での一幕を描いたもの。同じ体験談とはいえ、これは違う種類。戦争を体験した人の実際の言葉だから・・何とも言う事ができず・・ただ辛い

最後に、
日露戦争の激戦地に由来する髪型「203高地巻き」について。こちらのサイトに詳しく掲載されていますので、気になる方は覗いてみてください。

ふぅーーーーーー、疲れた。

何はともあれ“「金色夜叉」などを読んではならんとの規定も出ていた“の一文で次の作品は決定☺️

岩波文庫100冊チャレンジ、残り45冊🌟

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