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小説

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高校時代から今にいたるまで
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#記憶

桜の質量



大切な人の体が、病に侵された。
それは二十四歳になってすぐのことで、その病気の治療法なんて一つも見つからない。だって、特殊な病気すぎて前例が今までにないものだったのだから。私の恋人、楢橋朔也とはもう言葉では言い表せぬほどの縁で結ばれていた、ように感じる。朔也とは高校に入学してから出会った。四月九日。桜満開だけど少しだけまだ肌寒さが残る入学式。私は学校に行くまでに経由するとある公園の桜の木の下

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