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過敏性腸症候群の私が見つけた出口

私がライターになったのは、過敏性腸症候群だったからです。

もちろん、それだけではありません。

・単純に書く作業が好きだった
・初心者でもライティングできるランサーズを見つけた
・子供が小さかったので、在宅の仕事を求めていた
・夫の借金が発覚し、働かなければならなかった

など、色々な理由も重なっていましたが、決定打はやはり過敏性腸症候群です。

「過敏性腸症候群だから外では働けない。特別な能力もない。でも働かなければならない」と思っていたところ、ランサーズで少しずつ評価を得ることで自信となり、「自分にはライターしかない」と思い込んでいったのです。

でも、出来るんです。過敏性腸症候群でも、外で働けるんです。

今まさに過敏性腸症候群と戦っている方や、外で働きたいけど働けないと悩んでいる方の力になれたらいいなと思い、過敏性腸症候群の私が外で働くまでの経緯をお話ししたいと思います。

過敏性腸症候群って?

ストレスなどにより自律神経のバランスが崩れ、腸の働きに異常をきたす病気です。

人によって症状が異なりますが、私の場合はこんな感じでした。

・人に会うとお腹が痛くなる
・お腹にガスが溜まって苦しくなる
・空腹ではないのに、ゴーゴーお腹が鳴る
・我慢してもガス漏れする
・1週間のうち3~4日は下痢をする
・トイレに行けないタイミングでトイレに行きたくなる

※トイレに行けないタイミングとは、食事が運ばれてきて「いただきます」をした直後、トイレから戻ってきた直後、友人が深刻な話を始めた直後、結婚式や葬式などが始まった直後などです。

このような症状により、人に会うのも怖くなりました。どんなに我慢してもガス漏れすることがあるので、常に自分の臭いが気になって仕方ないのです。座るときもわざと人と距離をとるようになったし、子どもの参観日などで隣の人との距離が近いと心臓がバクバクして血の気が引きました。誘いも色々な理由をつけて断ったし、自分から誘うこともなくなりました。

症状のことはずっと隠していたので、私の行動を不思議に思った方や、仲良くなりたくないんだなと勘違いした方もたくさんいたと思います。本当は仲良くなりたかったし、たくさん会いたかったし、近くでいっぱいおしゃべりしたかったんです。なのに、嫌われるのが怖くて遠ざけてしまいました。

同じ症状を持っている方はわかってくれると思いますが、体を取り換えることはできないだろうか、お腹だけ家に置いておくわけにいかないだろうか、と、本気で考えたものです。

発症から20年!過敏性腸症候群に終わりはない

発症したのは結婚する半年前でした。今年で結婚して19年になるので、過敏性腸症候群とは約20年の付き合いになります。

もちろん同じ症状がずっと続いているわけではありません。ガスだけになったり、下痢だけになったり、腹痛だけだったり、便秘&ガスだったり、頻尿になったり等、その時期や心の状態などによって変動し、悪化することもあれば落ち着くこともあります。

今はこの20年の間で1番落ち着いていて、症状はほとんど出ていません。でも、「この病気は症状が出ないから完治」ではないのです。「この症状を知った時点で完治はない」と思った方がいいのかもしれません。

症状が出ていなくても、「もしかしたら出るかもしれない」「昨日は大丈夫だったけど、今日はダメかもしれない」という恐怖心がいつまでも消えないからです。

どうしよう。どうしよう。お腹痛い。出ちゃうかも。でもトイレに行くわけにいかないタイミングだし。誰か助けて。お願い助けて。

と、誰にも気づかれないように平気なふりをしながら、心の中で叫んでいたあの恐怖は、一生忘れられません。その記憶が消えない限り、症状が出なくなったとしても、安心して外出なんてできないのです。

過敏性腸症候群の私が見つけた働き方

結婚後、派遣登録をして派遣社員としても働いてみましたが、やはりどうしても症状が出てしまって思うように働けませんでした。

トイレのことばかり考えてしまって、覚えなきゃならない仕事内容が全く頭に入ってきません。そして頻繁にトイレに立ってしまって、迷惑ばかりかけてしまうのです。

短時間のパートも試してみましたが、数か月で辞めてしまいました。

その後専業主婦を続けてきましたが、夫の借金が発覚し、働かなければならない状況になり、「1,000円でも2,000円でももらえればいい。0円よりまし」という気持ちでランサーズを開始したのです。

1文字書けばお金になることを知り、もう必死でした。まずは借金返済が第一目標だったので、書けるものは何でも書きました。休みも取らず、書いて書いて書きまくって、評価されると嬉しくて、もっと書いて書いて・・・そして気づけば今に至るという感じです。

ライターは仮の出口だったのか?

ライターは過敏性症候群の私にとって、やっと見つけた働き方でした。「私でも働ける」ということが自信になり、辛いトンネルからやっと抜け出せたような感じがしていたのです。

しかし突然の報酬激減。

さらに立ち止まってよく考えてみると、ライターの仕事があまり好きではないと気づいてしまいました。

書くのは好きだけれど、クライアントの要望通り、自分の感情や個性をかき消して、検索上位を目指して機械的に書く作業は好きではありません。

興味のないことも1から調べ上げて、その道の専門家であるかのように書き記す行為にも違和感を覚えていました。

ネット記事は読み漁り必要に応じて書籍も読み、電話取材などもしますが、どんなに調べても上っ面な記事の様に感じられるのです。本当に深く知り尽くして実際に体験もしている人が書く“本物の”記事には勝てません。

自信もない、書きたいとも思えない、でもライターしか自分にできる仕事がない。

だからライターにしがみつきながらも、目標が見えなくなって、どう進めばいいのか、どの方向に努力すればいいのかわからなくなっていたのだと思います。

ライターは過敏性腸症候群の自分にとっての出口だと思い込んでいましたが、もしかすると"仮"のものだったのかもしれません。

ライターではない自分に価値はあるのか?

ライターという職業にしがみついてみるけれど、書きたいと思えないし、新たな仕事を獲得するため応募したりクライアントへ自己アピールをしたりしなければと思うのに、「書きたくない」と言う本心があるからそれができません。

外で働くか?と考えるけれど、過敏性腸症候群の症状やあの時の恐怖心が襲ってきて「無理だ。できない」と思ってしまいます。

専業主婦になることも考えてみたけれど、これから必要となる3人の子供の大学費用を考えるとやはり絶対的に働かなければなりません。

自分は何もできない。こんな自分には何の価値もないと感じました。

苦しかったです。どこの道も塞がれている気がしました。


そんなときに、ある一言が私の背中を押してくれました。

「打たないシュート」は絶対に決まらない(新里哲也さんのnote記事より)


外れるかもしれない。決まらないかもしれない。それでも打てば可能性が出てくる。打たなければ絶対に決まらない。

もちろん打たなければ失敗もしないし、恥もかかないでしょう。迷惑もかけないし嫌われる心配もありません。

でも、そうやっておびえて逃げて、嫌われないように迷惑かけないようにとビクビクしながら家に閉じこもっていて、何が残るのでしょう?

このままで、明日死んでも後悔しないだろうか?と考えると、決まらなくてもいいからシュートを打ってみなければならないと感じました。


実は新里さんの記事を読む前に、無意識に開いた求人広告の中で、ある1つの求人に目を奪われていたのです。

「気になるけど、私にはできない」と諦めていたのですが、急に、応募しなければと思い立ちました。

心に正直になると、導かれるのかもしれない

すごく怖かったです。でもどうしてもその求人広告が気になって仕方なかったのです。

それは、ペットサロンの掃除&犬のお世話のお仕事でした。けがをしたワンちゃんのケアやトリミング、お泊りなどもできるサロンでのお仕事です。

犬も好きだし仕事内容にも興味があったのですが、それ以上に何かに導かれているような、引っ張られるような感覚があったのです。

1か月以上前から募集しているようだったので、まずはダメ元でハローワークへ連絡してみました。(この求人はハローワークの紹介状が必要だったのです)

「空きがない可能性が高い。空きがなければ縁がなかったこと」と考えると少し気持ちが楽になり電話をかけることができました。

すると、まだ空きがあるとのこと。

紹介状をもらうためにはハローワークへ行かなければならないけれど、ハローワークはここからバスと地下鉄を乗り継がなければならない不便な場所にあるから・・・と理由をつけて諦めようかと思った矢先。

ハローワーク担当者から、「ご自宅近くの区役所でも紹介状を発行できますよ」の言葉。

とりあえずバスの時間があれば紹介状だけもらいに行ってみようかと、電話を切ってバスの時刻表を見れば、ちょうどいい時間に区役所行きのバスがあるのです。

窓口が混んでいたら諦めようかと考えながらバスに乗って区役所に行けば、紹介状発行担当者が1人だけ空いていて、待たずに案内してもらえるという幸運。

「自宅に帰って面接に行くかどうか考えればいい」と思っていると、親切な担当の方はその場で直接店舗に電話をかけて面接日時まで決めてくれるのです。

面接日が決まったなら仕方ないと、翌日、意を決してサロンへ行くと、面接したその場ですぐに採用決定。


途中何度も逃げ道を探す自分がいましたが、なぜだか不思議なくらい、全てが導かれるかのようにスムーズに決まっていきました。

過敏性腸症候群でも働ける

働き始めて約1週間です。もちろん、まだまだ恐怖心は消えません。仕事に行く前はギリギリまでトイレにこもってしまうし、仕事に行ってからもドキドキです。

でもそんなとき、足元でワンちゃんがつぶらな瞳で見つめてくれるのです。ヘルニアの子、片目が見えなくなった子、太ってダイエットに励んでる子など、いろんなワンちゃんがやってくるのですが、みんなつぶらな瞳で寄り添ってくれます。

ワンちゃんをケアするサロンなのに、私がケアをされている気分です。

掃除も体力勝負なところがあって、毎回全身汗だくになりますが、私が雑用を行うことで、他のスタッフがトリミングやワンちゃんのケアに専念することができます。

人の為になっている。ワンちゃんのサポートをしている。私にもできることがあった。私のすることが役に立っている。

今は、それが嬉しくてたまらないのです。

久々にワクワクしています。

だからといって、「過敏性腸症候群でも働けるから頑張って」とは言えません。あの辛さは本当に耐えがたいものだし、私が今外で働けるのも、20年経って症状が落ち着いているからこそでしょう。もしかすると明日症状が出て仕事ができなくなるかもしれません。どうなるかはわかりません。

でも、今過敏性腸症候群と戦っている方に伝えたいです。

落ち着くまで時間がかかるし、完治は難しいし、恐怖心はいつまでも消えないけれど、でも諦めなくても大丈夫です。できることが限られてしまって狭い世界の中で苦しんでいるかもしれないけれど、必ず出口はあるはずです。もしかしたら、たった1歩踏み出すだけで世界は大きく変わるのかもしれません。

怖くて仕方ないときは休むべき時だと思うのですが、何かどうしても心に引っ掛かったり、気になるという感覚が持てたなら、少しだけ勇気を振り絞って1歩踏み出してみたら、自然と行くべきところへ導いてもらえるのかもしれないです。

私なりの過敏性腸症候群の出口とは

上限5万円までと言う条件付きですが、ライターとしての契約は切れていないので、ライターも細々と続けながら、ペットサロンのお仕事もしていくつもりです。

ライターについてはいろいろと考えさせられる部分があるのですが、まずはクライアントの要望通りやるべきことをしていこうと思います。

依頼してくれる会社にはとても感謝しているし、4年間もお世話になっているので恩返しがしたいとも思っています。

もしかするとこうして続けているうちに、「書きたい」と思えるようになるかもしれないし、また別の何かにつながって可能性が広がっていくかもしれません。

今は、ライターについては、「与えられたタイトルについて、真剣に考え、書くこと」に集中し、ペットサロンのお仕事については、「人や犬の役に立つこと」に喜びを感じながらワクワクを広げていきたいと思います。

この出口が仮のものなのか、本物なのかは、いつか振り返った時にわかるのでしょう。

今迷っている方の出口探しに、この記事が少しでも役立ちますように。

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