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映画銀魂が「鬼滅の刃」人気に便乗することへのマーケティング的考察

2021年1月8日公開の映画『銀魂 THE FINAL』より、銀さん達の最後の闘いを収めた最新予告が7日、公開された。さらに、第一週の入場者プレゼントが、空知英秋氏描きおろしの「炭治郎&柱イラストカード」であることも発表された。

公開第一週に配られるのはなんと、原作者・空知英秋描きおろしの<炭治郎&柱>イラストカード。詳細は後日発表予定であるという。

とのことですが、爆売れしている鬼滅の刃の人気に便乗しようとするあたり銀魂っぽくて面白いですよね。銀魂の作風をうまくつかった施策だと感じます。

この特典について、マーケティング施策としてどのような効果があるのかについて考察していきます。

確率思考の戦略論を読んでいて

昨日、Newspicks主催のイベントに森岡毅氏が登壇しており、オンラインで拝聴しました。今回はリーダーシップについての講演だったのですが相変わらず切れ味鋭く熱を帯びた言葉は心に刺さりました。稀代のマーケターだと改めて感じさせます。

そこで、バイブルである「確率思考の戦略論」を読み直しているのですが、USJ再建時のエピソードのページで今回の銀魂特典の施策とラップしました。かつて、USJのコンセプトはコアな映画ファンをターゲットとしていましたが、森岡氏が就任後、エンターテインメントのセレクトショップというコンセプトに変化させ、映画だけでなくワンピースや進撃の巨人など様々な人気コンテンツを導入しました。

個別ブランドのファンベースを積み上げる作戦

USJでワンピースや進撃の巨人などの人気コンテンツを導入するのはどのような効果があるのでしょうか。それはそれらコンテンツのファンを来場させる可能性を高めることができます。

そもそも映画ファンだけをターゲットにしているだけではカバーする領域が狭く浸透率を上げるには限度があります。そこで国民的コンテンツを導入することで浸透率を上げに行ったというのがUSJの作戦でした。※もちろん他の施策と組み合わせており、これだけけの施策で成功したわけではありません。

3)個別ブランド・ファンからの「M」の獲得:アニメのワンピースをはじめ、ゲームや漫画などの多くの強いブランドでのファンベースを獲得するだけで、多くの「M」を積み上げられることも勝算としてありました。これはそれら個別のブランドのファンベースのサイズと属性を調べることで容易に測定できます。テーマパークにとっては既存のファン層と重なりが少ないほど追加集客には都合が良いのです。そのためにUSJは多様なブランド群を内包できるように「世界最高のエンターテインメントを集めたセレクトショップ」へとブランド戦略を転換したのです。

ちなみにMというのは、詳しくは本を読んで頂ければと思いますが、NBDモデルという消費者の購買行動を予測するモデルの中にある変数の一つです。どういう変数かというと、あるブランドが選ばれる確率そのものです。数学的にMは、自社ブランドを全ての消費者が選択した延べ回数を、消費者の頭数で割ったものになります。

つまり、Mを増やすということは、消費者があるブランドを選ぶ確率を上げると同義ということです。

鬼滅の刃のファンベースを活用する

鬼滅の刃といえば、興行収入も歴代一位の千と千尋に肉薄しているお化けコンテンツです。そこまでいくと鬼滅の刃のファンベースは日本人の多くをカバーしていると読めます。

どこまで想定しているかは不明ですが、今回のパクリ特典は鬼滅の刃の巨大なMを映画銀魂に積み上げて集客を狙う作戦と捉えることができます。通常、他作品のキャラを特典として活用するなど以ての外ですが、銀魂の作風的にやらかしかねないという受容感がそれを可能にさせました。

また鬼滅の刃の作者のジャンプ巻末コメントを見ると、ジャンプに漫画を送るきっかけが銀魂だったとのこと(!)であり、これは吾峠氏も嬉しい流用なのではないでしょうか。

最後に

森岡氏によれば、消費者の頭の中にはサイコロがあり、その目によって確率的に行動を選択しているとされます。土日に暇だから映画を見に行こうという人は、映画の他にもカラオケやドライブ、家でダラダラなど数ある選択肢の中から、サイコロを振って何をするか決めているのです。

銀魂が鬼滅の刃を利用することは、この消費者の頭の中のサイコロの目にある映画の目を多くさせる作用があると考えます。銀魂でしかできないかつ、稀代のお化けコンテンツを活用できるという施策としては素晴らしいものであるため、思わず記事を書いてみました。

↑あと、森岡氏のこの書籍、マーケティング施策に関わる方なら必読です!ロジカルにマーケティング施策を打ちたいという方には激烈お勧めです!

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