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裁判員裁判に行ってきた話①

書こうと思ったきっかけ

なかなか貴重な体験ではあったので、いずれ記事書こうと思っていた。
下書きでかなりの期間あたためてしまったのでそろそろ出すことにする。

ことの始まり

2021年11月。引っ越しのあとのドタバタも落ち着いて、新しい職に就いた頃のはなしだった。
唐突に、東京地裁から封筒が届いた。

「裁判員候補者名簿にオメーの名前載ったぞ」という通知だった。

えっ、そんなことある????
ガチャは爆死が当たり前、人生でガチャというものの引きが悪いと当時思いこんでいた私は「そんなところで当たらんでも」というのが一番最初の印象だった。なんか申し訳ないけどそういう感想だった。

そもそもなんで東京地裁から来たの?

ご存知の方もいるだろうが私は東京から地方へ引っ越している。
なんで東京地裁なんだ?とおもったら、候補者名簿に載せるぞというタイミングでまだ住民票が東京にあったのだ。なるほどそういうこともあるのか。
まぁでもこのときは「どうせ選ばれんやろ」と高を括っていた。ぶっちゃけガチャより確率低いやろと思っていた。

なお、候補者名簿に載ったぞという連絡がくると、辞退できる理由に該当するかの質問票に答えて返送する。詳細はあんまり覚えていないが、高齢だったり、あとは地方公共団体の議員などは参加できないらしい。
詳しく知りたい人は裁判員制度Q&Aを見るのが良いと思う。

裁判員制度Q&A:https://www.saibanin.courts.go.jp/qa/index.html

とはいえ、まだ裁判員候補者名簿に名前が載っただけで、すぐに来てくれとかそういう話ではない。よくよく見ると、「来年の裁判員裁判に呼ばれるかもしれないから覚悟しとけよ」ということらしい。

実際放置していたし、忘れていた。

忘れた頃にマジで呼ばれた

2022年、ゴールデンウィークも終わりかけのころに、封筒がきた。すごい分厚い。東京地裁とある。

そう、ついに呼ばれたのだ。

裁判員等選任手続期日のお知らせ

どの事件を担当するかが決まって、ついに呼ばれてしまった。正直忘れてた。「えっ、ほんとに来るんだ」って言っちゃった。そのくらい実感がなかった。

中身の封筒を見ると、もうなんかすごい具体的に書いてある。
この期間で裁判やるから、この日に来てね。
そういうことだ。呼出状だ。

だいたいこの通知が来るのが実際の裁判の1ヶ月くらい前だ。
わたしはそっと上司にお休みをもらう旨をお伝えしたところ、驚きつつもこころよく送り出してくれた。(一応名簿に載った時点で報告はしていた)
色々引き継ぎをして、諸先輩方にも色々とお願いをしていた。

会社勤めの場合お休みが取れるのか問題があるが、弊社はクライアントも含めて送り出してくれて、本当に有り難かった。

選任手続期日までのあれこれ

選任手続期日の通知が来ても再度辞退しようと思えばできる。(辞退が受け付けられるかどうかはまた別の話ではあるようだが)
が、私は結局辞退しなかった。遠方ではあるが東京まで行くのは意外と簡単だ。霞が関ならなんとなく地理的にも覚えがある。行こう、と決心してパートナーに不在にする旨や、会社での了承を得た。

その数日後、見知らぬ番号から電話がかかってきた。
日中帯で仕事をしていて気づかなかったため放置していたが、なんと地裁の刑事部からだった。どうやら遠方になるので、旅費・宿泊費などの説明にわざわざ電話をくれたようだ。案内をしてくださった職員の方はとても丁寧で、色々と答えてくれた。

どういう場所で何をどうするのか、具体的なことは案内状からはあまり読み取れなかったので、たとえば私物の持ち込みはどこまで許されているのか?私服でいいのか?など。想像できない部分がたくさんあって、いろいろなことを質問していた。パートナーは缶詰状態で軟禁されることを想像していたらしい。わたしもちょっとそういうのを想像していた。
全然そんなことはない。

選任期日に現地にいかないといけない理由

選任期日、当日現地で裁判官をやる人を決めるのだという。
当日にならないと決まらないので、仕事の予定とかもふわふわになるのだが、これにはちゃんとした理由がある。
裁判の前にくじで決めておけばいいじゃん。そういう意見もあるだろうし私も「何で選ばれるかわからんのに現地に行かなきゃいけないんだ?」と思っていた。

現地で、裁判の内容となる事件の詳細がやっと明かされるからだ。
事件の概要や、被告人(いわゆる容疑者、犯人といわれる人)の名前から年齢から住所から、個人情報満載の情報を見せられる。
その上で、「事件や被告人の関係者」は裁判員になることができないのだが、その情報を郵送するわけにもいかない。つまり、現地集合してからでないと決められないのだ。

そりゃーそうだ。これは運用上仕方のないことなのだ、と納得した。

選任手続期日、当日について

前日の夕方、仕事を少し早めに終わらせて東京へ向かった。ちょうどその前週も仕事で東京にいたので似たようなスケジュールとなったが、今回は選任されればさらに数日間の裁判への参加となる。選ばれなければさくっと帰宅するが、選ばれた場合は数日間、都内への滞在となる。
(重ね重ねになるが、通常は管轄の地方裁判所などへの招集となるので地方在住者が都内に呼ばれるわけではない)

当日は朝10時から選任手続きがあるが、9時半から受付をしているらしい。私は会社に寄ってから登庁した。登庁って響きに実はこっそりわくわくしていたのは内緒だ。

裁判員候補者待合室で受付を済ませると受付番号が発番され、ファイルを渡される。発番された番号の席に座ることになり、長テーブルにひとり座る。(コロナ対策でソーシャルディスタンスっていた)
なお、テーブルにはお茶と朱肉が置いてあった。

10時になって説明を受けた。担当する事件の概要や、担当の検事、弁護士や裁判官のひとたちが自己紹介していたがあまり記憶にない。漠然と、裁判長の穏やかそうな顔だけがその時は印象に残っていた。(正直もっとしかめっつらのお爺さんみたいな、厳しそうなひとをイメージしていた)

辞退や個別の相談に応じる旨の説明があったが、私は特に相談したいこともなかった。個別相談が終わるとそのまま選任に入るらしい。

なんとなく、裁判官が男女比や年齢やそういうものを見て適性審査的なものでもあるのかな、と思っていたがそんなことはなく、残った人数からくじで引くらしい。その時に私はまたしても「またガチャられるのか」と思った。

昨夜、行きの新幹線の中でアイドルが素敵な衣装で歌って踊るアレをシャンシャンやっていた私は、「星5の推し引くよりは確率高くなったな」と馬鹿なことを思っていた。

会場に来ていたの候補者は(正確な人数はわからないが)だいたい30人くらいで、その中から裁判員6名と補充裁判員2名を選ぶという。
「裁判員ならだいたい1/5……五等分の裁判員か」
などと訳の分からない約分をしながら、これで選ばれたら星5の推しがきてくれるんじゃないかとも妄想していた。どこまでも推しアイドルのことを考えていたのは、緊張もあったからだと思う。

くじの結果

くじが引き終わると、職員がホワイトボードに番号札をかけていく。
受付で発番された番号を呼ばれたら選任である。

最初に呼ばれた。
「えっ」と声が出た。
マジか。まじでか。ありとあらゆるくじで外れてきた。
FGOであまりにも星5のサーヴァントが出ず本気で嫌になった私が。
鍛刀キャンペーンで資材を溶かして年単位で本丸を放置した私が。
そんなことあるんだ・・・と謎の感動を覚えた。

なお「これ選ばれたんやから推し出るやろ」と意気込んで引いたガチャは安定の爆死だった。無駄な石を溶かした。

さて、選任された人だけが残されて、いろいろな説明を受ける。選任手続期日が金曜だったため、土日お休みして月曜からの裁判員裁判へ参加となる。
諸々の説明があり、集合時刻などを確認した。
割りと朝の集合時刻にばらつきがあり、この時点では理由がわからなかったが、日によって法廷に出ていたり、評議室にいたりするからだとあとから分かった。

あとは、宣誓書を書き、捺印をした。
あまり覚えていないが、公平忠実に職務を遂行することを誓います、というような内容だった気がする。
なるほど、確かにこれは大事だ。裁判員の意見次第で被告人のこれからが決まる。責任重大だ、と改めて思いながら宣誓書を読み上げた。

その日はいったんそれで終了となった。ちょうどお昼の12時くらいで、あまりの空腹に耐えかねた私は上司に連絡を取りつつ駅のドトールに入った。空腹にミラノサンドをブチ込みながらクソ甘い黒糖オレを流し込んだ。久しぶりの都内は暑かったせいか疲れていた。

とりあえず、記憶を掘り起こしつつ書いていきます。
つづきます。

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