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UIデザイナーとアジャイル開発

アジャイル開発は、経験がないUIデザイナーも多い

前職が受託開発/受託デザインだったり、大規模な会社で日々のタスクの順序に悩むことがなかったデザイナーが、ベンチャー企業のアジャイル開発(スクラムなど)に入ると、日々やらなければいけないことが多すぎて何から手をつけてよいかわからなくなって、混乱してしまうことがあります。
私も何社か転職をして、たくさんのプロダクト開発をするまでいまいちリズムが掴めなかった、という実感があります。

わたしなりの結論

この問題を解決していくにはどうしたらよいのか。先に結論から述べてしまうと、下記のような順序で持っているタスクに順序をつけると良いと思います。

  1. プロダクトバックログや、ロードマップで計画されている開発

    1. 複数ある場合、リリース期日が早い順

  2. 自分が、他のメンバーのブロッカーになっているもの

  3. ①②以外のタスク

担当している開発チームで、障害対応などをロードマップ開発より優先している場合は、それがもっとも優先度が高くなるのですが、バグ対応や障害対応の範囲でUIデザイナーがやるべきタスクはあまり無いことが多いので、あえて順序に書きませんでした。

なぜUIデザイナーはタスクの順序に悩んでしまうのか

UIデザイナーがタスクの優先度に悩んでしまうのを見ていると、様々な理由があるように感じます。

1点目として、アジャイル開発に関して色々な書籍や有用な記事がありますが、主としては、あくまでエンジニア観点であり、UIデザイナーの視点/働き方を記載したものは非常に少ないです。
また、「機能開発をしているエンジニア10人あたりUIデザイナー1人」などと書籍に記載されることも多いですが(これは最低限の人数ですね)、10人より少ないスクラムチームも多いです。そのため、UIデザイナー1人あたり2つ以上の開発チームを担当することも多く、これも混乱する要因のひとつになります。

また一連の開発フローのなかでUIデザイナーが担当するタスクの幅も広く、「役員など意思決定者と来期必要な機能の打ち合わせ」と「エンジニアが実装してくれた機能のデザインチェック」など、機能開発の様々な局面のタスクを同じ日に行わないといけないこともままあり、これも混乱する要因となります。

それでも、事業が安定した大きな組織ならともかく、ベンチャー企業の場合、程度の差はあれどまだ新しい事業/プロダクトを人数が少ない組織で運営しなければなりません。日々状況が変わっていく中で、ある程度メンバーそれぞれでタスクの優先度を判断していかなければなりません。

フロー効率とリソース効率

メンバーそれぞれでタスクの優先度を判断するにあたり、ひとつ知っておいたほうがよいと思う考え方があります。それが「フロー効率」と「リソース効率」です。これについてはすでにすごく良い記事があるので、こちらを一読されることをオススメします!

上記の記事がとても分かりやすい例えをしていて好きなのですが、私の理解で簡単に説明すると下記のようになります。

  • 開発組織から新規プロダクト/新規価値が素早く提供される効率 = フロー効率が高い

  • 組織内のAさんもBさんもCさんも、もれなく100%の力で仕事をしている状態 = リソース効率が高い

この記事で伝えたい大事な点は、このフロー効率とリソース効率の観点でベンチャー企業を見た場合、「高めるべきはフロー効率」ということです。これは、まだ新しいことに挑んでいるベンチャー企業では「頑張ってたくさん仕事をした」ということよりも「世の中にどういう価値を生み出したか」という観点が重要である、ということを意味しています。

また、優先度が高いプロジェクト/機能から早くリリースしてユーザーに価値を提供することにより、そのフィードバックを受けて組織全体が「学ぶ機会」を早く得ることができます。これについては、下記の記事が大変詳しくオススメです。

1. プロダクトバックログや、ロードマップ上、リリース優先度がもっとも早い開発

ここまで読んでいただければ、この「1. プロダクトバックログや、ロードマップで計画されている開発」をもっとも優先すべき理由がわかっていただけるのではないでしょうか。プロダクトバックログや、ロードマップ上もっとも優先度が高い開発については、これまでの議論のなかで「これをリリースすれば、組織がもっとも世の中に価値を提供できるはず」という合意が、組織の中に存在する開発事項です。

ですので、どんなタスクよりも優先してとりかかるべきです。例えば「社長から依頼されている、次の年度に開発を検討している機能のワイヤーフレーム」など、普通の大企業であれば依頼人の役職から考えて優先したくなるようなタスクも、ベンチャー企業の働き方としては後回しにすべきです。
また、「もっとも優先度が高い機能A」をエンジニアが実装中で、UIデザイナーが他のタスクBをやっていたとして、Aに関連するタスクが割り込んできたら、集中していたタスクBをすっぱり忘れてAにとりかかるべきです。そのくらい組織全体のフロー効率が重要ということが言えます。機能開発完了後、それを待っている営業サイド、カスタマーサポートチーム、ユーザーのことを考えれば、UIデザイナー個人の負担/オーバーヘッドは仕方ないことです。

2. 自分が、他のメンバーのブロッカーになっているもの

これも「組織全体のフロー効率」を考えた結果なのですが、その次には「誰かが自分のタスクを待っている状態」を解消することを優先すると良いと思います。
例えば「次の期に開発予定の機能のワイヤーフレーム」だったり、「別プロジェクトで利用予定のデザインシステムのコンポーネント作成」など、UIデザイナー個人が「他の誰か」の作業をブロックしているタスクをやっていくと良いと思います。

最後に

いかがでしたでしょうか。私個人はUIデザイナーとしてこれくらいの粒度で自分のタスクを整理しているのですが、もし他にも「こういう基準で、こういう優先度をつけられるよ」という仕事のやり方をお持ちの方がいたら、ぜひ教えてください。
また、UIデザイナー以外の方には、UIデザイナーの仕事の幅によってUIデザイナーがちょっと混乱したり悩んでいることが伝わるといいなと思っています。ぜひそれぞれの観点で自組織のデザイナーが悩んでいないか気にかけてあげてください!

記事中で、下記のフリーイラストを使わせていただきました。ありがとうございました。
image: Freepik.com

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